二次創作小説(紙ほか)

Re: 怪盗レッド〜幼き頃の私達〜 ( No.357 )
日時: 2014/12/11 18:39
名前: 瑠璃 (ID: KBFVK1Mo)

第五話 >> 04

〜ケイside〜

「あ、お父さん!」

アスカがぱっと踵を返して、おじさんの元へ行く。

「もう! 遅いって! 飲みすぎないでって言ったでしょー!」
「悪い悪い」

アスカは怒ってるけど、おじさんは気に留めた様子もない。
そういえば、結構経ってたな……
時間をここまで気にしなかったの久しぶりじゃないだろうか。

「ちょっと僕の話を聞いてもらってたんだ。遅くなって悪かったね。アスカちゃん……ケイ」

少し離れている僕に目をやる。

「別に……」

返事が返ってくるとは思ってなかったのだろう。
父さんが驚いた顔をする。
自分でも驚いてるのだから、仕方がない。
どうして、返事なんてしたんだろう。
それは……

「おじさんは良いの! お父さんが愚痴ってばっかなんだから! たまには!」

文法もめちゃくちゃに叫んでいるアスカのせい、なんて。
考え過ぎだよな。

「そろそろ、お開きにするか。もう遅いしな」
「誰のせいよ!」
「だから僕の……」
「おじさんは良いんだって!」

しばらくぎゃあぎゃあと騒いでいたが、さすがに遅いし、ツリーを見る人の迷惑になると、考えたのか、やっとアスカも落ち着いたのか、父さんが近付いて来た。

「じゃあ、帰ろうか」

特に言葉は返さずに頷くだけに留めておく。

「じゃあね、兄さん。アスカちゃん」
「ああ。そっちも帰り、気をつけろ。ケイ君もな」

一通りの挨拶。
僕等は違う方向に歩き始める。
少しだけ、後悔……というほど重くないけど、心残りがあった。
何か言うことがあったんじゃないだろうか。
……アスカに。

その時、ふと振り返ったのは、偶然か。
小さな奇跡かー
なんて、僕らしくない考えさえ浮かんだ。
何故なら、同じ時に同じ瞬間に、きっと同じ想いで、振り返ってくれたから。
一瞬、驚いた顔をして、
次の瞬間には、花の咲いたような笑顔で、

「ケイ!」

父さんもおじさんも驚いてたみたいだけど、
僕は……僕等は気にも留めなかった。

「またね!」

その言葉はとても重くて、大切なものだった。
僕は、うんと頷くことしかできなかったけど、
アスカには伝わっててくれたら良いなって思った。
そして、アスカの言う“また”が、少しでも近かったら良いのに、と。
その時には、今伝えれなかった事が少しでも言えたら良いな、とも。

アスカの言う“また”で、アスカが笑っていますように。