二次創作小説(紙ほか)
- 第三十八話:ビリビリ・バトル ( No.111 )
- 日時: 2014/01/25 22:39
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
テイルが繰り出したプラズマポケモン、ロトム。電化製品に入って悪戯をするゴーストタイプのポケモン・・・・・と聞いていた。が、
”何か、違った。”
「あれ?図鑑とは姿がぜんぜん違う・・・・・・。」
「とーぜんだな。」
テイルはケラケラ笑うと言った。
まるで、彼を小馬鹿にしたかのような笑みで。
「ロトムは、フォルムチェンジの出来る数少ないポケモン。それも、”電化製品”に取り付くことによって、だな。」
ロトムの姿は、芝刈り機のようで、鋭い歯が立ち並んでいた。
まるで、草は愚かこちらまで刈り尽くしてしまわんとばかりの形相で。
無邪気に邪気あり、とはこのことか。
テイルは続けた。
「んでもって、だ。こいつの今の形態は”カットロトム”。通常とはタイプが異なっている。電気・草といったところだ。」
「バラして良かったんですか?」
「構わねぇさ。どうせ俺が勝つ。」
自信満々の笑みが鼻に付いた。
イラッと来たのが分かるくらい、カルムの額に青筋が浮かんだ。
いや、イラッでは済まされないだろうだろう。
「言ったな!?言ったな?!んじゃぁ後悔しても遅いですよ------------------」
「ああ、遅ェ。」
うんざり気味に言ったその口は、不愉快そうに歪んでいた。
次の瞬間、電気が地面を迸った。
まるで、短距離走者(スプリンター)が駆け抜けるかのように、颯爽と。すっきりするぐらい。
速いと感じる前に、それはゲコガシラの指に到達し、電気という名のバトンを渡す。
しかし、ゲコガシラはバトンを持ったまま走ることは出来なかった。 そのまま、電気は火花を散らしながらゲコガシラの体を走り回る。
と、思えば、ゲコガシラはビクビクと痙攣してその場に跪いて前のめりに倒れた。
「お、おいっ嘘だろ!?」
「ハッ、だから言ったんだ。”遅い”。”遅すぎる”。」
テイルの黄色い瞳が光ったように見えた。
次の獲物が何なのかを楽しみにしている、というよりは次の獲物がどう倒れるかが楽しみにしているのか。
獰猛な獣。それがお似合いだった。
「電気-----------つまり光はな、この世の何よりも速い。故に、どんな手を行使したとして、光を止めることは不可能!!」
「ニュートリノの速度が光の速度を超えたって話は聞いたことがありますが?」
「・・・・・・。」
黙りこくるテイル。
が、次の瞬間口を開いた。
「知らね。」
「・・・・・・。」
「知らね。」
「二回も言った!!」
ちょっと待て、この人無かったことにしてるよ、と叫ぼうとした瞬間、再びテイルが口を開く。
「てゆーかぁ、今バトルの途中なんですけどォー?無理やり横道逸らすつもりですかコノヤロー。」
目線を逸らして、気だる気味に言った。
が、これでは理不尽である。
「横道逸らしたのは間違いなくアンタだろうが!!」
「いーや、こういう場合”先輩敬いやがれコノヤロー条例”に則って、お前が悪い。」
「んな条例聞いたことねーんすけど!?」
「だって今俺が作ったから。」
「いや、そうだろうと思ったよ!!」
突っ込みとボケの連鎖が続く。
が、このままやっていては埒が明かないので割愛。
「ぜぇ・・・・・・ぜぇ・・・・・・。」
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」
へたり込む2人。
互いににらみ合う。
「このままじゃ、埒が明かねぇ・・・・・・。」
今頃気付いたか。
一方のカルムも、怒鳴り疲れて方で息をしている。
アホだアホ。
「もういい!!とっとと三匹目出しやがれっつってんだろが!!」
「分かりましたよ、分かりましたよ。」
そういうと、カルムは気だるそうにボールを握った。
次の瞬間、空を切ってボールが手から離れる。
光が放たれてボールが弾けた。中から”何か”が飛び出す。
「頼んだぜ、目には目を、歯には歯を。電気には、電気を!ゴー、プラスル!」
カルムが最後に繰り出したのは、プラスルだった。
電気タイプとまともに戦えるのは、プラスルのみ。だから、今まで温存していたのである。
「電気タイプ。それもプラスルか。」
------------はっ、笑わせんな。
幾ら電気タイプといえども、電撃を食らえば少しはダメージを受ける。
まして、カットロトムは特殊攻撃力が高い。
が、それ以前にカットロトムは草タイプを複合している。たとえ、電気技が効かなくとも--------------
「草タイプの技で、対抗できるんだよ!!カットロトム、リーフストーム!!」
刹那。
カルムは聞き慣れない、妙な音を聴いた。
空気と空気が渦を巻き------------------互いに切り裂きあう音。
-------------竜巻だ!!
リーフストームは、葉を竜巻によって巻き上げて、相手へ一気にぶつける技。
その威力は破滅的で、草タイプの技の中では最強クラス。
しかし、その代償として特殊攻撃力を大幅に下げてしまうという欠点がある。
だが、その代償を差し引いてもこの技は一撃必殺にもってこいだったのである。
「生ける刃のッ、糧になれェ-------------------------!!」
生ける刃。すなわち、この技によって巻き上げられた葉のことだろう。
草タイプの技は、普段は大人しい自然のあらぶる本性を引き出す技。
背を向ければ、木々は、自然は、大地が容赦なく牙をむくように。
無論、リーフストームも例外ではない。
しかし、所詮は”空気の渦”だ。
「飛び上がれ、プラスル!!」
地面を蹴って高く跳ね、竜巻を避けるプラスル。
しかし、これではカットロトムの格好の餌食。
味を占めたのか、テイルはいつも不敵な笑みを浮かべると、カットロトムに命じた。
「カットロトム、一撃で決めろ。雷!!」
黒い雲はいまだに宙に浮かんで雫を降らせていた。
今こそ、チャンスだ。
雷は、天候が雨の場合、100%の確立で成功する。
さらに、相手が宙に浮いていれば、威力は倍。
いくら特殊攻撃力が下げられているとは言え、これを食らえば一たまりも無いはずだ。
ただし、「食らえば」の話だが。
天・罰。
暗雲から、それを揶揄すように聖なる光が一直線に落ちた。
耳を割らんとの勢いで轟く轟音。
思わず耳をふさぐ。
だが、カルムは知っていた。
この一撃では勝負が付かないことを。
確かに、雷光はプラスルへ一直線に落ちた。
同時に、プラスルも渦の中央へ落ちる。
だが、様子がおかしい。何故、瀕死のダメージを貰って都合よく渦の中央へ落ちたのか。
そして、渦の中央へ落ちることで何が起こるのか。
その可能性をテイルは片っ端から脳内で挙げてみる。
が、その前に結果は導き出された。現実に。
大量の紫電が放出される。
竜巻が裂けて、空気の渦は、葉は散り散りになって燃えた。
そして、大胆不敵に夷敵は目の前に立っていたのである。
「ば、馬鹿な!?」
テイルは大声を上げた。
何故、何故立っていられるのか。
「空気の渦・・・・・・台風なんかは”目”の部分は全く風が来ないらしいですよ。」
「違う!!それより何故、俺のカットロトムの渾身の雷を食らって立っていられる!?」
竜巻の目に入れば、リーフストームのダメージが0になるのは分かりきった話である。
だが、それでは雷のダメージは?
タイプ一致1.5倍、空中補正2倍のダメージはどこへ消えたのか。
「種明かししましょうか。こいつの・・・・・・プラスルの特性は避雷針。電気技を引き寄せ、無効化する優れモンですよ。」
テイルはポケモンの特性に詳しいわけではなかった。
というのも、正確に言えば、それは研究中の未知の領域。
前に居た地方でもプラスルは見かけた。
だが、特性はプラス。それだけだ。隠れ特性・・・・・・通常ではありえない特性を持つ個体は居なかった。
しかし、このカロスには確かに存在する。
”隠れ特性”を持つプラスルが。
が、そんなことはどうでも良かった。
「あー、そーかよ・・・・・・だけど・・・・・・でっけぇ口はコイツを倒してからにしろ!!」
カルムの最大の失敗は、”その後どうすればいいのか”考えてなかったことであった。
有効打は考えられない。
ていうかこれは・・・・・・。
「せめて、手厚く葬れ!!カットロトム、シャドーボール!!」
一直線に影の玉が飛んでいく。そして、プラスルに直撃。
煙が上がる。
リーフストームをどうにかしたところで、他に色々技があるかもしれないのに。
その対処法は考えなかったし、むしろ攻撃方法も考えてなかった。
というか、プラスルのウェポンは不利。
カルムは、つくづく感じた。
爆音を耳に捕らえながら。
(やば、負けたわコレ。)
と。
横たわるプラスルを垣間見た後、己の敗北を直感するのであった。
後書き:はい、今回再び敗北を喫するカルム。やっぱりテイルは強かったということで。
長々とバトルを続けるのもあれだったのもありますが。さて次回は、そろそろショウヨウシティに向けて出発です。というか、結局テイルはもう一度カルムの能力を目にすることは出来ませんでしたね。
それでは、また。