二次創作小説(紙ほか)

第三十九話:能力者 ( No.112 )
日時: 2014/01/26 11:15
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「・・・・・・すみませんでした。」

 ぶっきらぼうにカルムの口から飛び出たのは、謝罪の言葉だった。

「い、いや良いんだよ、俺も悪かったな!!ハハッ・・・・・・。」

 ただ、お前の能力の秘密が知りたかっただけだ、などとは口が裂けてもいえなかった。
 それでも、一応それなりのフォローはしておき、テイルは一旦、カセキ研究所へ帰った。




「お隣さん?」

 自動ドアの音がして、カルムの影を認めると、セレナはタタッと自分のお気に入りの帽子を落とさないように掴んで駆けていく。
 
「どうだった?バトル。」
「負けちゃったよ。」

 残念そうな笑みで、彼は返した。

「えっ・・・・・・。」

 セレナは声色を落とした。

「でも大丈夫、ちゃんと仲直りしたから。」
「よ、良かった。」

 「ねぇ、お隣さん?」と、セレナは続けた。意を決して、あのことを聞いてみようか。

「私たちに隠してること、無いよね?」
「・・・・・・は?」

 カルムは怪訝そうな顔をして返した。

「無いよ、そんなの。」
「貴方の能力のこと!!」

 じれったくなって、とうとうストレートに切り出してしまった。カルムの顔色が一気に変わる。
 そして、目つきを変えると、セレナに迫った。
 今にも噛み付かんとの勢いで。


「それに二度と触れるな・・・・・・!!」

 
 怖い。
 初めて、そう感じる。

「ご・・・・・・ごめん。」

 涙目で、謝るセレナ。その声で、我に返ったのか、カルムも沈んだ声で返した。

「ああ・・・・・・僕も悪かった。」

 よどんだ空気が、ただただ支配していた。
 何とか、話題を変えようとカルムは模索する。
 思い出した。あのモノズは大丈夫だろうか?

「そうだ!!あのモノズは?」
「えっ、だいぶ良くなったみたいで、ご飯を自分から食べるようにはなったみたいだけど?」
「・・・・・・僕、あいつが放っておけないんだ。」

 何かを見据えるように言った。

「もう一回、あいつと顔合わせてくるわ。」

 そういうと、カルムは去っていった。
 すれ違い様に、互いの温度差を感じる。

(やっぱり・・・・・・私じゃ何も出来ない?そんなに私は足手まとい?)




「彼の能力は異端そのものだ。」

 -----------は?

 その夜、プラターヌ博士からテレビ電話ごしに告げられた事実は、テイルにとってとても興味をそそるものだった。
 能力者とは、結構この世に存在していたりする。
 特に、ポケモンの能力を著しく開花させる類は。
 事実、テイルが以前旅をしていた北の地方にもちらほら居たような気がする。
 が、博士は全くの別物と言った。
 自分が今まで見てきたものとは。

「カロス地方を構成する2つのエネルギー・・・・・・知っているよね?」

 ----------知っていますよ?

 素っ気無く返した。
 前から懇々と説かれていたことだ。そして、そのエネルギーのバランスが崩壊しつつあることも。
 テイルは肩をすくめた。

 ----------一体全体、何の関係があるっていうんですか?

 と、言ったときだった。頭の中が再生される。
 洞窟でのオペラとの戦いの際、カルムが怒ったのと同時に、ゲコガシラの生命エネルギーが活性化した、とマロンは言っていた。

 ”生命エネルギー”?

 テイルは思わず口ずさんだ。

「そうだ。それこそが最大のポイントだ。」

 ---------マジですか・・・・・・まさか・・・・・・”X”と関係があるっていうんですか。バカ言わないでくださいよ?俺はこの年になって、後輩のバカの正体がポケモンでしたバカなんてバカバカしいエンディングを迎えるつもりなんて無いっすよ?

「何回バカ言うんだね?」

 --------サーセン。冗談ですよ。

「相も変わらず口が悪いね君は。」

 --------昔からなんで・・・・・・すんません、以後気をつけます。

 平謝り。
 「さて----------」と博士は続ける。

「彼の能力を調べてほしいんだがね。ただ以前、彼の経歴を調べたところ、”酷い過去”が浮き彫りになったんだよ。」

 ----------------酷い過去?まぁいいや。その話なら長くなりそうなんで、また今度で。

「いや、ちゃんと話を聞いてよ。」

 ----------------もう夜中の3時っすよ!?唯でさえバトルで疲れてるのに、もう俺寝るんで。

「いや、とても重要なんだ。」

 根負けして、仕方なく聞くことにした。パソコンをいじってしょぼついた目を擦りながら。
 しかし、その過去は、あまりにも聞くには耐え難かった。

 ---------------マジかよ・・・・・・。

「マジだ。」

 いつになく真面目な顔で博士は言った。
 
 ---------------くそっ、そんなことも知らずに俺は、あいつの能力を無理やり引き出そうとしちまった!!

「何、仕方が無いことだ。自分を責めなくていいんだよ。」

 しばらく沈黙が続く。博士は思わず、この沈んだ雰囲気を元に戻そうと切り出した。

「あ、マロン君と何か進展はあったかい?」

 にやにやしながら、博士は痛いところを突く。

 ----------------べっ、別に・・・・・・俺はアイツとは何にも無いんで!!

 顔を耳まで真っ赤にして、沸騰しそうな勢いでテイルは受話器を叩き付けた。
 胸の鼓動が高速でビートを刻んでいくのが分かる。

 ----------------分かってんだよ、畜生。お前の気持ちも。なのに・・・・・・。

 素直になれない自分が、そこにはいた。
 嘘を吐き続ける自分が、そこにはいた。

 そして---------------それらに容赦なく刃を突き立て、咎める自分が居た。


後書き:今回、かなり短いです。2200文字台。今回は、色々とキャラの心理を描くのにやはり楽しいのも同時に大変でした。
次回、そろそろショウヨウシティに行きたいところです。まぁ、もう一話はさむとは思います。
それでは、また。