二次創作小説(紙ほか)
- 第四十話:新たなる道へ ( No.113 )
- 日時: 2014/01/26 15:10
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
次の日の朝。
「・・・・・・旨いか?」
「キュィー」と少し弱い鳴き声が返ってきた。少しずつ、だけど確実に。心を開いてきたと感じるカルム。
-----------だけど、こいつの心の傷は深い。
さっき、「俺のところに来ないか?」と聞いた際、モノズは初めて自分のほうを向いた。
だけど、駆け寄ってくるようなことはしなかった。やはり、深いのだ。
彼の心の傷は。
ナイフで刺されるよりも深い傷は、外傷以上に酷かったのだ。その傷は、生涯治らないだろう。決して。
「今の僕のメンバーには、お前のその馬鹿みてぇな火力が必要なんだよ。」
微笑んで、言ってみせた。偽善使いの笑みだとしても。モノズはこっちに顔を向けた。
洞窟での戦い。あの竜の怒りによる火力は、進化前にも拘らず、強大なものだった。
それでも、尚。
とまどってる。信用してもいいのか、分からないという表情が読んで取れた。
「その代わり、約束してやる。」
例え偽善使いでも、これだけは言えた話だ。大したことはできない。すぐに眠くなる上にバトルも言われるほどは強くない。大して女の子にもてるわけでもない。
目立った長所なんか、1つもない。
「僕がお前を、絶対に守ってやる。お前を二度と、こんな目には合わせない。」
それでも、これだけはできた。こんなダメ人間にも、これだけはできた。
”信頼し、護る事”
「まぁ、別に僕じゃなくても気に入ったトレーナーに着いて行けば良いんだけどね。」
ちょっと意地悪だったと思う。だけど、自分についていくかどうかは、モノズの渠知るわけだし。だが、最後に「でも、僕はお前が放っておけない。だって-----------------------お前は昔の僕に似ているから。」と言って、さっき預けたポケモンたちの様子を見に行くことにした。
が-------------------
「ぐえっふ!!」
あごに強烈なスカイアッパーが炸裂。蹲って思わず顎を抑える。見れば、セレナの姿が。
「ちょっと。あれだけ臭い台詞を吐いておいて、まさかモノズを仲間にしないつもりなの?」
「いや、だってさ。助けたのに付け込んで無理やり仲間にするわけにはいかないわけじゃんか、顎痛ッ!!」
うずくまったまま、そう答えた。
「貴方そういうのばっかりよねぇ〜。どっちかというと、お情けで着いてきてもらってるようなものじゃない。例えばプラスルとか。」
「お情けとは何だ!!これでも一応、此処にくるまでに何匹か捕まえてきたんだぞ!?ズバットにフシデにタブンネ、カクレオン、バルビートにロゼリア、グレッグルにキバゴ・・・・・・。」
「分かった、分かったわよ!悪かったわよ。」
謝るセレナ。顎の痛みがようやく引いてきて、頭を上げる。が、カルムは自分が今、セレナの正面に座っていたことに気付く。
-------------中が丸見えだった。
「・・・・・・水色?」
「こんのど変体がァー!!!」
即座にセレナに蹴っ飛ばされるカルム。彼女が視界から消え、ドシャッという音と同時に、自分が床に衝突したことに気付いた。
このままでは、ポケモンが回復したのに、自分は瀕死という醜態を醸す事になりそうだった。
「君が悪いんだろ、痛い・・・・・・。」
「ほんっとにデリカシーの欠片も無いのね!」
「そういう君は、おしとやかさの欠片も無いのね!痛ッ!!顎が割れたァー!!」
そんなやり取りを繰り返すうちに、そろそろ出発の準備をせねば、と感づいたカルムだったが、まずはひりひりする体を冷やしてからになりそうだったのであった。
「すっげーッ!!広い海だなァー!!」
「そうね!」
リビエールラインの海岸側は、昨日バトルでも訪れたばかりだったが、改めてみてみると、海の壮大さが身にしみてくる。
セレナと並んで、しばらく広大な水平線を眺めて居た。
「しっかし、さっきから鞄が重い・・・・・・。」
「気のせいじゃないの?」
「いや、今日はまだ缶コーヒーを10本しか買っていないはずなのに・・・・・・。」
「多ッ!?」
思わず、鞄を下ろした。
確か、鞄の行方の経緯はこうだった。
あの後、部屋で少し休んだ。そして、鞄をモノズのケージのあった場所に置いてきたことに気付く。そのとき、モノズはケージの中にいなかった。
そして、セレナが「結局、モノズったらどっか行って貴方の仲間にはならなかったわね。」と零した。
そして、鞄の中身は朝整理していたため、大して中身も確認せずにポケモンセンターを出たのだった。
「・・・・・・。」
鞄の中身を開けてみた。そこには、見覚えのありまくる黒い小竜が居た。というか、頭を突っ込んで、後ろ足だけバタバタさせている。見た目は、全身毛に包まれた、見るからに温かそうな・・・・・・。
「モノズゥゥゥゥゥゥゥ!?」
「鞄に入って着いてきていたのね。」
鞄に頭を突っ込んだまま、出られなくなっている光景は微笑ましかった。仕方なく、鞄をひっくり返して出してやった。
どうやらカルムに着いていくつもりらしい。
「かわい〜!改めて見てみると、結構愛着沸くわね!」
「あ、まぁ・・・・・・な・・・・・・。」
腕にモノズを抱きかかえるカルム。ほんのり温かかった。
「なぁ、僕達と一緒に行くか?」
疑問形になったが、あくまでもこれは------------確認の問いかけだった。
モノズは一度大きく鳴くと、頭を差し出した。
頷いて、カルムはモンスターボールをこつんと額に当ててやる。
赤い光が収束して、モノズを包み込むと、ボールの中へ入った。
「よし、これからは僕が守ってやるからな。一杯、楽しいこととか教えてやるからな。」
画して、新たなる仲間を手に入れたカルム。セレナと共に、次の町、ショウヨウシティへ向かうのであった。
「フフッ・・・・・・カロス地方かぁ〜。」
少女は、果てしなく広がる水平線を見据えると、そういった。
そして、1枚の写真を手に取る。
そこには、黒い髪に赤い帽子をかぶった少年と、自分自身の姿。
「やっと会えるんだぁ〜、楽しみだなぁー。」
微笑む少女の背景には、荒廃し、枯れ果てた大地が広がっていたのだった。
後書き:今回、ようやくコウジンタウン編完結です。さて、次回からはショウヨウシティ編突入です。今回も至って平常運転でしたね、はい。最後に出てきた少女の正体も結構先になるとは思いますが、いずれ明かすつもりです。それでは、また。