二次創作小説(紙ほか)

第四十一話:探偵 ( No.114 )
日時: 2014/02/06 00:51
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「ショウヨウシティ……2つ目のジムまで長かった、うっうっ」
「いや、泣くほどの事でも無いでしょ」

 目頭を押さえるカルム。確かに、ハクダンからここまで、相当長かった気がする。長いようで短いような……という懐古をやってるうちに、セレナは先に進みだしてしまうのであった。

「ちょっと待て! 置いてくのか!? 人がせっかく感動に」
「浸るくらいなら、とっととジム戦したほうがいいわよお隣さん」

 そういうと、とっとと彼女はジムへすっ飛んでしまうのだった。
 が、一番は彼と一緒に居たくなかった。というより、居られなかったのだった。


 ***

 セレナはジムには居なかった。
 彼女は、ポケモンセンターで1人、コーヒーのブラックを飲んでいた。

「苦ッ……」

 慣れない味で、少し嫌な顔をした。カルムは、平気な顔していつも飲んでいたが、彼女は苦手だった。
 特にブラックコーヒーのような苦い飲み物は。
 
『それに二度と触れるな……!』

 ぞくり

 怖かった。
 でも、カルムはカルムだ。嫌いになれるわけなかった。

 大事な、友達だから。

 自分が足手まといだろうとセレナは感じてしまっていた。
 彼が困っているなら、自分が助けてあげたかった。
 だけど、それはなかなか叶わなかった。

「……私、もしかして……」

 思わず頬がほんのり紅く染まっていくのが分かった。
 知らないうちに意識していた線はある。
 だけど、まだ会ってほとんど経っていない。
 と、言っている間に、既に色々あって1ヶ月経ってしまったのだけれど。
 色んなカルムを見てきた。

『ポケモンバトルの極意って……分かるか?』

 強さを求めている彼も。

『これは俺の戦いだ!! 野郎をぶっ潰さない限り、俺は何回でも立ち上がってやる!!』

 絶対に諦めない彼も。

『……僕、あいつが放っておけないんだ』

 優しい彼も。

「ほんと、どれが本当のカルムなんだろ」

 素がなかなかわからない、それがカルムという人物の魅力でもあった。
 だけど、知りたかった。

 本当の彼が。

「あいつって、本当にブラックコーヒーみたいよね」

 苦い部分も、黒いところも。だけど、優しい香りがするところも。全部ひっくるめて見守っていたくなる。
 失敗しても、助けてやりたくなる。

 ああ、そうだ。

 どれが本当なんて関係ない。
 能力なんて関係ない。


「何が何でも、カルムはカルムじゃない……」


「大方、君は友人の彼の力になってあげたいと思っている」

 声が聞こえた。それも、低調な男の良く響く声だった。

「な、何ですかいきなり!」
「だが、友人の彼は冷たくてなかなか取り合ってくれない。それでも尚、君が彼に執着しているのは」
「カルムは冷たい奴なんかじゃない!」

 男の姿は、季節外れな茶色いコートに同色の帽子、口にはパイプを咥えており、左手には文庫本を携えている、というものだった。
 思わず、その格好を見て呟いた。
 
「探偵?」
「きどりの男と言ってほしい。確かに僕は探偵だ。だが、公式に事務所を構えているわけじゃないから、傍から見れば探偵きどりの嫌な趣味の男ということになる。僕は唯、物事を推理するのが好きなだけなんだけどね」

「さて------」と名探偵は話し始めるときに切り出すという約束がある。今回、男も同様だった。

「さっきの話に戻るが、何故君がそこまで彼に執着するのか」
「な、何が言いたいんですか!」

「そんなの簡単だろう」と男は答えた。表情一つ変えた様子も見せずに。


「それは君が彼のことが好きだから、では不十分かな?」


 図星だった。
 が、即座に口では否定する。

「ちょ、何言ってるんですか! ていうか、会っていきなり……」
「おっとすまない。僕の悪い癖が出てしまった。この地方は平和で、最近事件も無いものだから、推理する機会がなくなってしまったのでね。もっとも、趣味の悪い”赤スーツの一味”がこの地方で暗躍しているのは知っているがね」
「あ、赤スーツ……まさか、フレア団!?」

 男は、驚いたようなそぶりをはじめて見せた。

「ほーう。知っているんだね?」
「は、はい。た、戦ったこともあります」
「ビンゴ。それなら、尚更だ」

 男は、パイプに火をつけて続けた。

「そうだ。さっきのお詫びに、僕の知っていることを教えてあげよう。だが、その前にどこまで知っているか、教えてもらおうか」


 どうやら、男はフレア段のことを調べているようだった。
 そのため、セレナからも情報を聞き出したいようだった。
 その代わり、こちらからも情報を提供するということ。

 つまりは、情報交換ということだ。

 セレナも、フレア団のことが気にならないわけではなかった。むしろ、その逆だ。
 連中を放っておけば、何をしでかすか分かったものではない。
 一度戦いを交えた以上、尚更である。

 彼女の正義感が、奴等の悪事を許すわけが無かった。

 だが、何よりここで聞いたことをカルムに教えて、彼の力になりたかった。

「分かりました。ただ、その前に名前も知らない相手に教えるわけにはいきませんから」
「分かっている。名乗っておこう。僕の名前は、クリスティだ。よろしく」
「私はセレナ。ポケモントレーナーです」

 始めてあった相手のはずなのに、何故か信用が出来てしまう。クリスティという男は、そういう目をしていた。
 まず、手始めにセレナは七炎魔将について話した。そして、奴らが上級、中級、下級の序列に分かれていることも。
 そして、今までに会ったオペラ、バーミリオン、クロームのことも話した。

「……成るほど。僕が思っていた以上に、事は大きいらしい。ならば、こちらからも話しておかなければな。七炎魔将は知らなかった。だが、その代わりに”それらよりも格上”の幹部のことも話しておかなくてはなるまい」
「七炎魔将がフレア団の最高幹部じゃないんですか!?」
「嗚呼。奴らの中でも最上位に位置する幹部。【絶望の使徒(ハッピーエンド・チルドレン)】。」
「は、【絶望の使徒(ハッピーエンド・チルドレン)】!?」

 つまり、彼の言うところはそうだった。彼曰く、それらは四人で構成されている”破壊部隊”であり、カロス以外の地方を襲撃するのが目的だということ。
 それも、警察などの治安部隊だけを攻撃し、反抗を防いでいるということだ。
 カロスでそれを行わない理由は、まだ分かっていないが、本拠地をカロスのどこかに構えていることを悟られるのを防いでいるからだという。
 つまり、カロスではまだ、コボクタウンでしか表立った動きはしていないのである。
 そして驚いたのは、【絶望の使徒(ハッピーエンド・チルドレン)】が名前からも察すことができたものの、全員子供で構成されていることだった。

「ただの子供と侮ってはいけない。奴らは全員、【子供の皮を被った化け物(ミュータント)】と忌み嫌われた。1人だけ、経歴が分からない奴がいるがな。それは置いておいて、全員が迫害によって故郷を追われている」
「ま、まさか異形の能力を持っていたからとか?」
「そうだ。全員が、超能力を持っている。能力というのは、ある北の地方では割とポピュラーだが、そんなものではない。ある者は、気候を操ることが出来、ある者はポケモンと直接ココロを通わせ、ある者は直接命を奪うことも出来るのだからな」

 クリスティはそういうと、もう一度パイプに火をつけた。

後書き:今回、新キャラがまたしても登場しました。自称探偵、クリスティですね。この男がバトルをするかどうかは置いておいて、今作で重要なキャラであることは述べておきましょう。
そして今回、結構重要な単語が色々出てきています。これ、テストに出るぞー(嘘)
それでは、次回更新もお楽しみに。