二次創作小説(紙ほか)

第四十二話:フリル ( No.115 )
日時: 2014/02/06 04:12
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「あんにゃろォ、どこ行ったんだ?」

 ジムに行くといっておきながら、どこかへ蒸発してしまったセレナ。

「ま、アイツのことだ。大方、手持ちのポケモンの調整だろうなー」

 そういいながら、肩に乗ったニャスパーを見てくしゃりと撫でてやる。
 それよりもうすぐ、タマゴが孵りそうだった。
 見れば、もう光りだしている。
 あと、1時間ちょっと? ぐらいか。
 さてと。ここまで来れば分かるように、カルムは今ジム戦に挑戦しようと決意を固めていた。
 決意を固めていた。
 固めていた。

「……」

 緊張、乙。
 いざ入ろうと思ったら、足が動かない。
 あれ?ジムってどうやって入るんだっけ状態である。
 次の瞬間だった。

「うっ、うっ、またまけちゃった……」

 声が聞こえると同時に、自動ドアが開く。
 思わず、カルムは引き下がった。
 少女。いや、幼女? ランドセルにソプラノリコーダーが似合うこげ茶色の髪を持った少女が、セーラー服を着てポケモンが入っていると思われるモンスターボールを握って自動ドアを潜ってきた。

「……えーっと、君?」

 思わず声をかけた。
 別にナンパとかそういうのではなく。


「君、何歳?」


 明らかに地雷を踏んだ台詞を思わず放ってしまったのであった。

「……よ」
「は?」
「わ、わたしもう13だよっ、ポケモンだって持てるよっ」

 少女は、そういった。
 確かに、そういった。
 たぶん、耳の穴を開拓しても同じだと思うが。
 
 確かに、そういった。

「……あ、そ」

 -----13じゃねえだろおおおお!!
 どっからどうみても、百歩譲っても8、9だよ!?

 と、心の中で突っ込みを入れるカルム。
 ひくひくつり上がる口角。

「うん、何か悪かった……」

 そういうと、身を翻してカルムはポケモンセンターの方向へ。

「……」

 視線を感じた。
 何か、ここから離れてはいけないような気がする。

「ねー、ねー?」
「何?」

 カルムは振り向いて答えた。

「きみって、バトルつよい?」
「あー」

 答えるべきか。
 まあ、もうなるようになれ。

「強いって言ったら、強いけど?」
「ふーん、それじゃあさ」

 彼女は続けた。

「わたしとバトルしよ?」

 ------ですよねェー!!
 強いか聞かれた時点でフラグ立ってたよ!?
 何でだ? 何故だ?
 
 僕はジムリーダーに挑みに来たんだぞ!?

 と、ややヒステリック君になりながら、頭を抱えるカルム。

「目と目が合ったら、ポケモンバトル、だよね?」
「な、何も町の中でやることは……」
「それじゃあ」


 ***

 -------リビエールライン海岸側
 
 波の音が耳を打つ。清清しい潮風が心地よい。砂浜を踏みしめて、カルムは開口一口突っ込んだ。

「場所変えただけじゃねえかァー!!」

 いや、確かに町の中じゃアレとは言ったけども。

「わたし、強くなりたいの」
「強くだあ?」

 見たところ、さっきジムリーダーにボロ負けしてきたみたいだった。
 強くなりたいと思って、自分に勝負を挑んだのか。
 仕方が無い。肩慣らしと思ってやろう、と何だかんだつけてバトルしようと思うカルムだった。

「わたしはフリル。よろしくね」
「ああ、僕はカルムだ。それよりさ、お前見たところさっき負けてきたみたいだけど、戦えるポケモンいるの?」
「いるよ? 二対二だったけど、わたし三匹持ってるから」

 それなら良かった。
 ならば、新しく手に入れた手持ちを存分に活躍させるまで。

「んじゃあ、バトルは一対一のシングルだ。いいな?」
「おーけーだよ? じゃ、いっくよ!」

 そういうと、ボールを握るフリル。
 相手の外見が幼いとはいえ、油断は禁物。どんな化け物を隠し持っているか、分からない。

「でてきて、ヌメラ!」
「……ゴー、モノズ」

 思わず、ボールを放ってしまった。
 フリルが繰り出したポケモンからは、全くと言って覇気が感じられない。
 図鑑を見れば、軟体ポケモンと見たが、これはなんだい状態である。
 あ、ギャグになっていない?

 いや、待て。これは結構、実は化けてました的な?
 実は滅茶苦茶強い的な?

 だが、図鑑にはしっかり”ドラゴンタイプ最弱”と書かれていた。

「しゃーねぇ、モノズ行くぞ!」

 モノズは、高らかに声を上げると相手を見据えた。
 小さい。手のひらサイズといったところか。

「一気に蹴りつけるぞ! モノズ、噛み砕く!!」

 直後、モノズは地面を蹴ってヌメラへ飛び掛った。鋭い牙をむき出しにして。
 
 ずるっ

 歯は突き刺さらなかった。ぬめりと滑って、モノズは地面へ転ぶ。
 ぬめぬめとヌメラが分泌した粘液が纏わり付いて、動けなくなった。

「は、はは」

 笑えない。舐めてかかった結果がこれだ。

「手はぬいてないよね!」
「へっ、バカ言ってんじゃない」

 帽子を被りなおすと叫んだ。

「ここからに決まってるじゃないか! モノズ、竜の怒り!」
「ヌメラ、纏わり付く!」

 速い。
 流の怒りを即座に避け、そしてモノズの背後へ回り込んだ。
 ぬめぬめが邪魔をして、良く動けない。
 ヌメラはそのままじゃれ付くようにして、モノズに纏わり付いた。

「竜の息吹!!」

 コンボが炸裂した。
 ぬめぬめで動けなくなったところを、纏わり付くで接近し、至近距離での竜の息吹は痛かった。
 煙が上がる。
 効果は抜群だ。

 
 ***

 所代わり、ここはある地方の廃工場。1人の少年が立っていた。

「……リオ、来いッ!」

 少年が一声上げると、青い獣人のようなポケモン、ルカリオは少年の足元に跪いた。

「これも、連中の仕業だって言うならば……」

 廃工場は、昨日まではきちんと稼動していたはずだった。
 にも拘らず、今日は最早ただの廃墟と化していた。
 人が働いていた面影は無い。

「力を持て余した奴らが、ここを爆撃したか。”能力”で」

 そういうと、一つのモンスターボールを投げた。

「出て来い、ナック。そこにいる奴をッ、炙り出せ!!」

 出てきたのは精霊ポケモン、フライゴン。”ナック”はニックネームと思われる。

「大文字!!」

 次の瞬間、大文字の炎が一気に放たれた。直後、大文字は爆発する。
 パラパラと、コンクリートの壁が崩れ落ちた。
 
 直後、真っ黒焦げになった鳥ポケモン、ヤミカラスが目を回して落ちてくる。

「心配するな、威力は弱めた。命まで奪おうとは思わねえよ」
 
 そういうと、ヤミカラスの足にくくりつけてあったカメラ(の残骸)を目に留めた。

「やっぱりな……」

 少年は、確信したように呟き、廃工場を後にした。