二次創作小説(紙ほか)
- 第四十四話:交戦・虫の兵隊 ( No.120 )
- 日時: 2014/10/04 09:41
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
***
セルリアンが繰り出したのは黄色い六角柱の底辺に顔があり、それが三つくっ付いて一対の翅が生えているポケモン、ミツハニーだった。
ミツハニーは性別によって少し容姿が違うと聞いた事がある。
この場合、真ん中の顔に紅いマークが無いため、オスと判断するべきであろう。
「丁度もう一人いらっしゃるみたいですし、そちらの方もお相手させて上げなくてはね!」
そういうと、ボールを投げる。中からは、ビオラとの戦いでも見た事のあるポケモンだった。
まさしく、ビビヨンだった。
しかし、色が違う。ビオラが所持していた固体は紅い鮮やかな模様だったが、こちらは和を連想させる雅な模様だった。
ビビヨンというポケモンは地方によって羽の模様と色が違うのである。
さて、問題はフリルのポケモンだった。
さっきモノズが倒してしまったため、もう彼女のポケモンは居ない。
別に、カルムがもっとポケモンを出してもいいのだが、逆に総力戦でぶつかり合って勝てる相手ではないことは分かっているのである。
だから、不測の事態が起こりやすい上に経験が少ない多対多先頭は避けたい。
「フリル、コレを使って」
そういって、回復道具を投げた。元気の欠片だった。
元気の欠片はトレーナーの道具である。瀕死のポケモンに元気を与える効果を持つ。
「僕が用意できるのはここまでだ」
「うん」
頷くと、フリルはこつんと黄色い欠片をボールに当てる。光とともに欠片は消失した。
「たのんだよっ、ヌメラ!」
さっきのヌメラを繰り出して、応戦に向かうフリル。
善悪の判断こそ、まだ付いていないらしいが、結果的に仲間に着いていく性分らしい。
そのため、共闘することになった。
(純粋な奴ほど、仲間になったときに頼もしい。ここでフリルを味方に……いや、仮に敵に回ったとしても脅威ほどではねぇな)
「余所見が多いことッ」
ミツハニーは、羽根を勢い良く羽ばたかせて大きな音を立て始めた。
うるさい。耳が壊れそうに成るくらい。
「これはッ、ポケモンの技!?」
「虫のさざめきですわ」
ゲコガシラさえも頭を抱えている。
ヌメラはどうともないようだったが。
(そりゃそうだよな、軟体生物に音技は効かないよな)
もっとも、ハイパーボイスなどの衝撃波レベルになってくると話は別であるが。
空気が震えて波が出来る。
音とは空気が震えることで起こるのだと、今しばしば改めて噛み締めたカルム君であった。
「やられてばっかじゃ、トレーナーの名がすたるってもんだ!! ゲコガシラ、電光石火!」
地面を蹴り、突っ込んでいくゲコガシラ。
しかし、次の瞬間だった。
「ビビヨン、メロメロですわ!」
ハートが現れてゲコガシラの回りを囲む。そして、ハートが回りまくる。
しばらくした後、ゲコガシラは---------
「ゲ〜ロ、ゲロォ〜」
見る影もなくなっていた。
酔っ払ったおじさんの如く、ふららふらと目をハートにして。
完全に、スイッチが入ってしまったようである。
「へー、異性のポケモンを誘惑して惹き付ける技かー。 なんて特殊な技なんだー。うわー、すげー」
「いや、それにかかった貴方のポケモンは、単なる特殊バカですことよ? ていうか、全然すごいって思ってませんわよね? 棒読みたらたら状態ですことよ? ビビヨン、ドレインキッス!」
ふわふわと飛んでいくビビヨン。そして、ゲコガシラの頬に甘い口付け。
そして、唇を離すビビヨン。精気が抜けていくかのようにゲコガシラは倒れた。
「おいおい、何が起こったんだ?! 前にも同じような光景をどっかで見たような……」
「唯のデジャブでは? それより、貴方のポケモンはもうだめですすわね」
悔しそうに唇を噛み、カルムはゲコガシラをボールに戻す。
相手は異性のポケモンを手駒に操る強敵。
-------あ、同性ならよくね?
安易だが、その通りだった。
この場合、ビビヨンはオスのゲコガシラをメロメロにしたため、性別はメス。
ならば、答えは一つ。
「プラスル、行って来い!」
「貴方は少々、フレア団七炎魔将を舐めているのでは? オペラが以前、このようなことを申しておりましたわ」
『この前のカルムって餓鬼、少し手を抜いたら調子に乗って私にダイレクトアタックを仕掛けてきたんですよ。まさに、プギャーって感じですよ。クッソワロタ』
ネットスラングと呼ばれる言語が混じっていたが、あからさまに馬鹿にされたことだけは分かった。
「オペラがネットスラングをつけて話すときは、必ず余裕があるとき。つまり、以前貴方が戦ったオペラは完全に手を抜いていたということですことよ? 上級は、相当な実力を持ったトレーナー、つまりこの地方の四天王ですら互角に戦える。中級は、そこまでは及びませんが、少なくとも-----------」
「ごちゃごちゃ煩いよ」
鶴の一声。
カルムが完全にぶち切れた顔で自分を睨みつけていることを、セルリアンは一瞬で理解して見せた。
「俺が知りてえのは、おめーらがドンだけ強いとか……」
爆音。
ヌメラの竜の息吹が、ミツハニーを打ち落としたのだ。
「俺らが勝てないとかそーゆー結論じゃねえよ」
唯一つ。
「何故、おめーらがどうして逐一俺を不愉快にさせるかってことだけだ!!」
電撃が、プラスルの小さな体から放たれた。
避けようとするビビヨンだが、蝶は基本飛ぶのが遅い生き物。
避けられるわけが無い。
まして、光と互角の速さを持つ”電気”に対しては。
「プラスル、10万ボルトッ!!」
紫電の束がビビヨンに降りかかった。
不覚を突かれた。
しかし、まだまだ慌てるレベルではない---------!!
「いーや、まだ終わりじゃねえぜ」
「!?」
「電気っつーのは操りようによっちゃぁ、どんなことも出来るらしいぜ。熱を作ることも、音を作ることも出来るし、場合によっちゃ」
---------光の槍だって、自由自在さ。
「プラスル! 奴を逃がすな、電気を右手に集めろ!」
プラスルの拳に電気が集結してバチバチ鳴った。
「そのまま、放てェー!!」
投げるように放った電気は、槍の如く鋭く鋭利に尖り、空気を貫いて飛んでいく。
そして、ビビヨンの体さえも貫通した。
弾けたように、ビビヨンの体は爆発し、そのまま黒焦げになって地面に落ちた。
10万ボルトは以前、テイルと戦った後に見よう見真似でプラスルが覚えたらしかった。
見よう見まねで技って覚えられるんだ、と軽く感動したカルムだったが、さらなるアレンジを特訓で加えさせていたのである。
「10万ボルト・改。唯放つだけじゃ、無駄が多いけど電気の触れる面積を少なくすれば、その分一気に電気は一箇所から流れ込む! 圧力の法則と同じようなものだ」
「う、くっ! 覚えてなさい!」
倒れた二匹をボールに戻した後、セルリアンは噛み付くような目でカルムを睨んだ。
「くっ、プラズマ団という組織がイッシュ地方で暴れ、勢力争いの最中だというのに……!」
「セルリアン、時間」
不気味な声が聞こえた。
また、あの少女である。
フードを被った、炎魔・クロームだった。
「”ボルテック・サンダー”は大人しく私の援護をしていなさい!」
「見くびるな。私も忙しい」
そんなやりとりが交わされた後、2人はテレポートしたのか、蒸発するように消えてしまったのであった。