二次創作小説(紙ほか)
- 第四十六話:VSショウヨウシティジム パート1 ( No.124 )
- 日時: 2014/10/04 09:42
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
「行きなさい、アマルス!」
ボールが空を切って、スイカ状に割れた。中からは、小さな首長竜のようなポケモン、アマルスが現れる。
寒色の肌に、長い眉毛が特徴的だが、愛らしい瞳もなかなか良い。
「形式は、2対2のシングルバトル。交代はチャレンジャーにのみ認められます」
「この間と同じか。よし」
ボールを握り締めて放る。空を切ったボールは、ビーム状の光線を吐き出す。それは、だんだん形を持った質量と化し、ゲコガシラを象った。
「氷タイプの技は、水タイプにはあまり効かない。そしてこっちには速さがある。トロい岩タイプはついてこられない!」
有利だ、という自信がカルムの中に出てくる。
しかし、カルムは気付かなかった。
自信と過信は紙一重だということに。
「いっくぜ、ゲコガシラ! 電光石火!」
先制攻撃。
目にも留まらない速さで迫っていくゲコガシラ。その姿は、忍そのもの。
「アマルス。電磁波」
ザクロが指を指して叫んだ。
アマルスの体が少しだけ光る。
ビリッ、という音が走った。そして、ゲコガシラの体の中を一気にオーバーラップ。ゲコガシラは、アマルスに突撃する直前に体制を崩して腕を着いた。
電磁波。
今までに何度も見たことがある技だが、まさか此処で目にするとは思わなかった。どう見ても、岩タイプのアマルスとは無縁だと考えていたからだ。
「ちょっ、ま、えぇっ?!」
「電磁波という技は、電気タイプ以外にも多くの種類のポケモンが覚えることが出来る技です。空気中に常に漂っている微弱な電気-----------つまり、電磁波と呼ばれるものをコントロールするだけの精神力さえあればね」
もっとも、電気タイプならそんな苦労は必要としませんが、とザクロは続けたのだった。
まずい。今ので、ゲコガシラの長所といえる素早さは少し消えた。
「そして-------------フリーズドライ!!」
次の瞬間、乾燥した空気が辺りに漂った。感覚で分かる。肌がカサ付いていく独特の感覚----------何より、唇が乾いていくのが証拠。
そして、一気にゲコガシラの周りに冷気が纏わりつき、氷塊となる。
さらに本来ならば、そこまでダメージは大きくないはずなのに、ゲコガシラが既にボロボロだということが驚きだった。
「フリーズドライは、水タイプのポケモンに対して効果抜群になる特殊な技です。岩タイプを舐めてもらっては困りますね」
「はっは……失敗、失敗、さあどうするかな……」
ゲコガシラは既に満身創痍と言った状態だ。
しかし、カルムとしてはこんなところで、まだ落ちて欲しくはない。
「待て、そうだ! ゲコガシラ、飛び跳ねる!」
「逃がしませんよ、アマルスの攻撃は飛び攻撃が多いんですからね! オーロラビーム!」
直線状に飛んでいく、虹色の光線。
だが。カルムには考えがあった。
「そっから、紐なしバンジーだ! 急降下、アクアジェットだ!!」
直線状の光線を横切り、一気にアマルスの背中へ降下するゲコガシラ。
だが、この程度ならばダメージは少ない。
そう、この程度ならば。
「連結、グロウパンチ!!」
連結技。連続で隙のない攻撃を放つ、テイルが使っていた戦法。これならば、かわす暇などない。麻痺しているとは言え、素早さは伊達ではないのだ。
そして、グロウパンチという格闘タイプの技は、氷・岩タイプのアマルスに対して効果抜群の技だったのだ。サナのテールナーを見て、是非覚えさせようと思い、覚えさせたのだった。
事実、空を切ったゲコガシラの拳は、アマルスに直線的に到達した。一気に、力が伝わっていく。
そのまま、弾き飛ばされたかのようにアマルスは倒れた。だが、まだ起き上がって闘志を見せる。
「良いですね……カルム君。その意気です。そのまま、目の前に聳え立つ壁を越えてみなさい!!」
「言われなくても、分かってますよ! ゲコガシラ、煙幕だ!」
突如、煙幕で体を覆うゲコガシラ。
しかし、何処にいるかは分かってしまう。
「フリーズドライです、アマルス!」
「ざーんねーんでしたッ!」
冷気は一気に襲い掛かった。カルムも感じるほどに。
しかし煙幕が晴れると、そこには何も無い。
気付けば、上空にはゲコガシラが。
「くっ、再び飛び上がっていたわけですか! 本当に忍者のようなポケモンですね、ゲコガシラは……ですが、そろそろアレが発動してもおかしくはない」
不敵な笑みを浮かべるザクロ。
急降下するゲコガシラ。
その時だった。
ゲコガシラの体の筋肉が引きつった。そして、何も出来ないまま、落ちていく。
痺れる体でゲコガシラは虚空を睨む。
まさか、麻痺の効果がここで現れるとは。
「くそっ、何でだよ! だけど、ここで押し切れば!」
「いえ、これで終わりです。アマルス、フリーズドライ!!」
再び、冷気とともに、ゲコガシラの体が乾燥していく。水タイプは、乾燥が一番嫌いなのだ。
そして----------------ゲコガシラは倒れた。
「効果抜群の技を一度喰らっても倒れなかった根性と素早さは認めます。が、まだまだ詰めが甘いですね」
「つ、つえぇ……さすがジムリーダー。そのアマルス、まだ闘れるみたいですね」
さて、どうしたものかとボールを握りなおすカルム。
少し考えて、ボールを投げた。
「ゴー、ニャスパー!」
結局、以前のジム戦と面子は同じになったが、まあ良いだろう。と、思いつつ闘うことにする。
「行くぜニャスパー! 僕達のバトルはこっからだ!」
ニャー、と答えるかのように鳴き、ニャスパーは目の前の相手を見据えた。
さてどうするか。
まず、電磁波で動きを封じられるのは確実。
ならば、封じられないようにはしたいが-----------------。
「なら、出鼻を挫く! ニャスパー、行け!」
たっ、と勢い良く駆け出すニャスパー。また、先制技だろうか。しかし、動きがおかしい。
直後、パンッとニャスパーはアマルスの眼前で手を叩く。
驚いて目を閉じるアマルス。
次の瞬間には、ニャスパーの姿は無い。
直後、ザクロは気付いた。ニャスパーがアマルスの下------------つまり、四足歩行ポケモンの弱点ともいえる部分に滑り込んだことに。
「猫だまし……ですか!」
ダメだ、対応しきれない。
「ニャスパー、サイケ光線だっ!」
超念力の光線が、アマルスを直撃した。
その後、アマルスはふらふらとよろめいた後、地面にへたり込んで動かなくなった。
戦闘不能だ。
「良くがんばりましたねアマルス。よく休んでください」
ザクロはアマルスをボールに戻すと、カルムを見据えた。
「どうやら、思い上がっていたのは私のようです。改めて、お詫びをしたい。ですが、最後の砦はそう容易く落とさせません」
「ええ、僕だって!」
ここで、最後のバトルが始まる。互いのエース同士のバトルが。
後書き:はい。実に2ヶ月ぶりの更新ですが、待っていただいた読者の皆様、申し訳ございませんでした。デュエマの方に集中していた所為で……。しばらくは、こっちも更新しようとは思うので、何卒応援よろしくお願いします。
それでは、次回はショウヨウジム戦ラストです。お楽しみに。