二次創作小説(紙ほか)

第四十七話:VSショウヨウシティジム パート2 ( No.125 )
日時: 2014/04/29 23:37
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「それでは、私の最後の手持ちです。行きなさい、チゴラス!」

 ザクロが最後に繰り出したのは、幼君ポケモンの名を冠すチゴラスと呼ばれるポケモンだった。
 アマルスとチゴラスには、共通した特徴がある。
 それは、古代を生きていたポケモンだということ。今の技術で、化石から細胞を再び蘇らせることに成功し、この世でまた生きることになったのである。
 その中でも、チゴラスの系統は王者として恐れられたポケモン。
 伝わってくる。体こそまだ小さいが、君主としての覇気が。

「ニャスパー、ここが正念場だ! 行くぞ!」

 まず、手始めにヤツの動きを止める、基本である。
 カルムは早速、速攻でケリをつけにかかった。

「ニャスパー、サイケ光線!」

 ニャスパーの眼が白く光る。腕を振り上げると、紫色の渦を巻いた光線が一直線にチゴラスへ。サイケ光線は喰らえば確率ではあるが、相手を混乱させる効果がある。ここで打ったのは正解だ。
 しかし、ザクロとてジムリーダーだ。
 ここで簡単に負けるわけにはいかないのである。

「チゴラス、岩石封じ!」

 光線が届く寸前、3秒、2秒、1秒、そこで岩が一気に降ってきた。
 チゴラスへ到達するための回路はそこで断たれることになった。

「岩を弾除けに!?」
「しただけなら、良いんですけどね?」

 上空を見れば、ニャスパーの真上にも岩が迫る。それも、何十個もの数が。
 岩を降らして、相手の動きを封じる技、それが岩石封じである。
 しかし、今のは明らかにニャスパーを狙っている。

「避けろ!」

 指示が通り、咄嗟の条件反射で一気にかわすニャスパー。しかし、ニャスパーの周りを円を作るようにして一気に岩が降り注ぐ。
 ------------しまった、ブラフか!

「フィニッシュ!!」

 真上から特別大きな岩石が轟々言いながら降ってきた。
 避けられない。
 しかし、止めることならば出来る。

「念力だ、ニャスパー!」

 岩が寸前で止まり、破裂した。
 念力によって、岩を破壊したのである。さらに、同時に全ての岩を吹っ飛ばす。これで、自由にはなれた。

(つっても、このままじゃ一方的な防御ゲーだ……どうするよ、俺)

「まだです、今度は噛み付く!」
 
 やべっ!
 と回避の指示を出す。
 が、間に合わずにチゴラスの大顎がニャスパーに襲い掛かった。
 大顎は、がぶり、とニャスパーの胴へ-------------------。

「ニャ、ニャスパァー!!」

 呼びかけるカルム。
 しかし、当のニャスパーは苦悶の表情を浮かべ、膝を付く。

「くそっ、どうすれば--------------」


 --------------主人、早く指示を---------------!

 頭の中に声が響いた。
 声の主は、最初は分からなかった。
 しかし、直感した。

 正しく、目の前に居るニャスパーが俺に呼びかけているるか、とようやく理解した。

 心を落ち着ける。
 今、ここでどうすれば良いのか。
 弱点技を喰らって、いまにも限界のニャスパー。
 このまま闘わせるならば、どうするべきか。

 -----------俺が今、此処で慌ててどうすんだよ!

 そうだ、今ならば、ここで至近距離でぶつけることができるはずだ。
 一か八か、賭けるしかない!

「オーケー、ニャスパー。サイコショックだ!!」

 応えかたの様に頷いたニャスパーは、眼を白く光らせると、そのまま大量の念じ球をチゴラスにぶつけた。
 驚いて、顎を離すチゴラス。
 
「まだだ!! そのまま、連続で放て放て放て!!」

 どらららら、と念じ球が爆ぜては現れ、爆ぜては現れる。

「この程度じゃ、落とせませんよ! チゴラス、岩石封じ!」

 再び降りかかる岩石の影。

「くそっ、またか!!」

 しかも、今度はさっきの倍ほどの岩石が降りかかってくる。今度は、小細工抜きで一気に倒すつもりらしい。
 岩石がニャスパーを埋め尽くした。
 しかし、カルムは見逃さなかった。
 ニャスパーの体が一瞬光ったところを。

 -------------ご主人、僕を信じて!

 ああ、分かってる。
 お前のことは誰よりも知ってるつもりだ。
 だからよ、驚かせてくれよ!!
 今度も、俺を!

「勝負ありましたね」
「決め付けんなよ、勝手にさ! 案外、人生もバトルもどっちに転ぶか、分かんないもんだぜ!!」

 次の瞬間、光が岩から差し込んでくる。
 一筋、また一筋、と光は増えていく。


 そして------------岩とともに、光が一気に広がった。

 ばちん、という音とともに、そこにいたのはニャスパーではない。
 既に、姿を変えた相棒の姿。
 青い体毛に、くるりと巻いた尻尾。そして折りたたまれた耳。
 抑制ポケモン、ニャオニクス。
 ニャスパーの進化後のポケモンだ。

「こ、これは------------!? まさか、このタイミングで進化するなんて!」

 驚きと同様が隠せないザクロだったが、同時に笑みを浮かべて見せた。

「ですが、尚面白い!! 私達も全力で相手しましょう!! チゴラス、噛みつきなさい」

 ガアアッ、と咆哮したチゴラスが再び迫る。
 しかし、それはカルムの一言でかき消された。


「カッ飛ばせ」


 ざっくりとした言葉だった。
 しかし、一瞬で勝負はついた。
 無数の念じ球がチゴラスへ襲い掛かる。
 全て、高速ならぬ光速で。
 残像が紫色のラインを引っ張っていく。

 勝敗など、わざわざジャッジが確認するまでも無い。


 ***

「私の負けです。まさか、あの状況で進化するとは」
「いや、逆に言えばあの状況で進化していなければ、僕は負けていました」
 
 ザクロの長い手が伸びる。手のひらの上には、茶色に輝くバッジが。

「ウォールバッジです。貴方は久々に、私を熱くさせてくれた。いえ、前置きなんていりませんね。リーグ公認のこのバッジを渡します」
「確かに、受け取りました」

 バッジを指で掴む。

「ありがとうございます!」

 礼を言うと、カルムは足取り早くポケモンセンターへ向かうのだった。

 ***

「何故だ? 何故この時代にこんなものが---------------」

 少年は、呟いた。ルカリオとフライゴンを連れたトレーナーだ。廃工場を見て回ったものの、他にめぼしいものは見つけられなかったのか、後にする。
 唯一つを除いては。

「石-----------か」

 少年は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「考えていても仕方がねえ」

 そう言うと、フライゴンに跨る。

「俺は未来を変える。そのために、此処に来たんだ」

 少年の姿は空へ消えた。
 その後姿は、何故かさびしかった。