二次創作小説(紙ほか)
- 第四十九話:ちゃもちゃもぱにっく ( No.126 )
- 日時: 2014/05/04 14:55
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
***
「お、生まれてくるぞ!」
ジム戦を白星で終えて、ポケモンセンターの宿泊用個室に帰った後、カルムは1つのことに気付いた。タマゴが光っている。もうすぐ、新しい命が生まれてくるのである。
というわけで、さっきからずっと
「なぁ、見てくれよニャオニクス。もうすぐタマゴから僕達の新しい仲間が生まれてくる!」
「ニャオ!」
嬉しそうな笑みでタマゴを抱えるニャオニクス。
「おいおい、落とすなよ、ハハハ」
タマゴの光がいよいよ強くなった。
「お、生まれてくるぞ!」
一気に光が差し掛かったとき、ピシッとヒビが割れる。
------------来た来たァー!
ニャスパーが生まれてきたときのことを思い出した。
あの時も同じような感じだったな。
タマゴの殻が割れて、出てきたのはヒヨコのようなポケモンで、オレンジ色の体毛、そして黄色い毛が3本ほど頭からはねており、黒々とした愛くるしい眼をしていた。
が、この時のカルムは-----------。
「かーわーいいい!!」
すぐさま、生まれたばかりのポケモンを抱き上げた。それは不思議そうに首を傾げる。その仕草でも既にカルムはノックアウト。
完全に、そのキュートな容姿にハートを射抜かれてしまったらしい。
「何だこいつ、すげえ可愛い、やべぇ、僕もう鼻血が出そうなんだけど!? しかもすっげーモフモフしてるし、あったかい! もふもふもふ」
こりゃダメだ、と言わんばかりにニャオニクスの冷たい視線。しかし、それを気に留めることもなく、そのポケモンを愛でていたカルムだった。
***
『そのポケモンは、アチャモって言うんだ』
「へーえ、そうなんですか」
プラターヌ博士にテレビ電話で聞いたところ、この地方のポケモンではないらしかった。分類はひよこポケモンで、ホウエンに生息するらしかった。
『しっかし、あのタマゴからこんな珍しいポケモンが生まれるとは僕も予想しえてなかった』
「はい! 大切に育てます!」
大切に育てるに決まってんだろ、と。
通話を切り、ふと辺りを見渡す。
さて、先ほどまでアチャモを外に出していたが、どこに行ったか……あれ?
”外に出していた”?
「しまったぁー!! ボールに戻すの忘れてたぁー!!」
いない。何処を見ても居ない。
まずいことになった。万が一、街の外に出て野性ポケモンにでも襲われたら、まだ上手く戦えないはずのアチャモがどうなるかは、ご想像がつくだろう。
「ちくしょぉ、僕の馬鹿馬鹿、馬鹿ぁ!! どうすりゃ良いんだ!?」
***
「ちゃもちゃもちゃも〜♪」
陽気にトコトコ街を歩くアチャモ。さて、しばらく歩いただろうか。広場のような場所に着いた。見れば、ピンク色の大きな穴が目の前に広がっている。
「ちゃも?」
首をかしげてみる。だが、好奇心が抑えられず、中へ--------------。
「待てぇぇぇ、アチャモォー!! それはマルノームの口だあああ! 中に入ったら食われるぞぉー!」
毒袋ポケモン、マルノーム。その大きな口で何でも丸呑みにしてしまう、軟体類のようなポケモン。近くにトレーナーらしき人物が、友人らしき人物と会話しているところを見ると、恐らく、そのトレーナーが連れ歩いていたものと考えて良いだろう。
主人の叫び声が聞こえたので、振り向くアチャモ。
だが、マルノームの上あごが迫る。
間一髪。アチャモはマルノームに飲まれずに済んだ。何故ならば、直前でヘッドスライディングしたカルムがアチャモを腕へ抱き寄せたからである。
が、
(我が人生に一辺の悔い無し)
カルムの頭は身代わりに飲まれたのだった。
***
「ったく、勝手に出歩くなよ……」
何とか、マルノームのトレーナーのおかげで助かったカルム。しゅん、と項垂れるアチャモ。
「ああ、でも悪かったよ! ボールに戻してなかった僕もさ」
「ちゃも……」
ベンチでふぅーと息をつく。そして、いつもの如く缶コーヒーを一気飲み。
「ふぅ〜、落ち着いた……」
***
シャラシティ。この街の名物は、半島に聳え立つ”マスタータワー”だ。しかし、今は外壁が崩れ、多くの作業員が修理を行っていた。
「やはり、襲撃があったのは本当だったらしいな」
テイルは目の前の、今にも崩れかかりそうな塔を見上げて言った。
フレア団の襲撃。それにより、多くのキーストーン、つまりメガシンカの際に必要となる石が奪われたのだった。
「畜生、襲撃があったのは俺達がコウジンタウンに行っていたときか」
「ですです。ているせんぱいっ、とにかくフレア団の行方をおわないと」
「たりめーだ、連中ブチのめさないと、俺の腹の虫は納まらない!」
***
「どうだ? ここ、カロス地方に来た感想は」
「まあまあって感じかな」
「ああ、そうか。ならば良かった。我輩も年だ、もう足腰が持たんでな。近々、我輩の権限もお前に託そうと思っている」
「もー、弱気なんだから。で、あの子の所在は掴めたの?」
「今は旅をしているらしい」
「そう。なら良いわ」
「さて、この地方に伝わる伝説のポケモンだがな、ようやく復活させることにしたらしい。やはり、アレは伝説のポケモン無しでは動かないらしいからな」
「へーえ、それにしても良いところよ? ここはさ」
----------------”壊す”のが惜しいくらい、ね。
後書き:さて今回、ようやくというべきですか、ショウヨウシティ編がようやく終わりました。アニメでも丁度、ショウヨウシティが終わったところだったので。
次回予告ですが、今回のラストに登場した男女は、後々現れる予定です。いよいよシャラシティ編ですが、もうカルムの手持ちが5体という……。