二次創作小説(紙ほか)

第五十話:衰弱の変 ( No.127 )
日時: 2014/05/05 13:47
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 10番道路、メンヒルロード。見たところ、普通の草原地帯である。そう、所々に石版が連なっている、ということを除けば。
 次の都市、シャラシティを目指してセキタイタウンへと向かうカルム。この草原地帯さえ抜ければ、直ぐに着く、のだが……。
 大昔の遺跡かと思った。
 にしても、妙である。
 と、そこに影。野生ポケモンかと思って、身構える。見れば、ダークポケモンのデルビルだった。しかし、様子がおかしい。
 足腰がふらふらしており、立っているだけでも精一杯のようだった。
 これは、捕獲する分には問題なかった。
 すぐさま、ボールを投げると、すんなりと中へ。あっけなかったほどだ。
 ポケモンを出すまでも無かった。
 辺りを良く見渡してみれば、衰弱して動けないポケモン達が沢山いた。ブルーにシンボラー、ゴビットにヤンヤンマ……。
 妙だ。一体何が起こっているのか、全くわからない。
 ただ、捕獲する分には全く問題なかったが。
 というわけで、ちゃっかりこの辺りのポケモンは、殆ど種類を揃えたカルムであった。

 道をどんどん進む。その時だった。
 カルムは草原の奥に、赤い色を見つける。
 直感した。
 フレア団の下っ端だ。奴らが何かを知っているのかもしれない、とすぐさま走る。が、止めた。
 ここでバトルを挑んでも良い。だが、もっと良い方法がある。
 奴らのあとを付けてさえしまえば、こっちのものだ。
 地面に這い蹲って、相手を見据えて匍匐前進-----------------。

「何やってんのお隣さん」
「ひ!?」

 思わず振り向くカルム。
 セレナだ。
 そして、その声に気付いたのか、下っ端達はこちらを振り向いた。

「誰かいるのかぁー」
「出てきなさい! 早く出てきたほうが、身のためよ!」

 大人の男女の声が聞こえてきた。
 やばい、感づかれたか!

「あー、もうっ!! セレナの所為で全部台無しじゃないか!」
「台無しって、何が!!」
「見たら分かるだろう? あいつらを追ってたんだよ!」
「それで、あんな変なポーズをしてたのね」
「ポーズっつーか、匍匐前進っ!」

 そうこうしている間に、フレア団の下っ端は近づいてきた。

「おうおうおう、お前知ってるぜ? 身の程知らずのガキんちょか」
「大人の世界に首突っ込むと、痛い目見るわよ? 覚悟なさい」

 赤いスーツに、赤いサングラス。
 手にはしっかりと、ボールが握られている。

「突撃! コロモリ!」
「行け、ズバット!」

 蝙蝠のような姿をしたポケモンが2体。だが、余り大したことはなさそうである。

「覚悟すんのは、アンタらだっての!」

 ここに来るまで、メンバーは全員鍛えておいた。
 無論、こいつも例外ではない。

「行け、アチャモ!」

 カルムが繰り出したのは、アチャモだった。この辺の野生ポケモンを倒せるだけの力量は身に付けさせたつもりだ。
 セレナも続けてボールを放った。

「頼んだわよ、アブソル!」

 セレナが繰り出したのは、災いポケモンのアブソルだった。白い体毛に彎曲した角が特徴的である。赤い瞳は、美しくもあり、同時に妖しささえも感じさせた。

「ガキの育てたポケモンに負けるわけがないだろうが! ズバット、エアカッターで連続攻撃だ!」

 ズバットの翼から、真空の刃が放たれた。空を裂き、ぎゅん! という音諸共迫ってくる。

「アチャモ、回避! そのまま動き続けて、狙いを定めさせるな!」
「おほほほほ、そんな戦法通じるとでも思ってたの? コロモリ、念力よ!」

 コロモリの意識が、アチャモへと向かった。アチャモの体が浮かび上がって、叩きつけられる。即座に「大丈夫か!」と声を掛けるカルム。
 しかし、それは一迅の風にさえぎられる。

「あーあー、あんたらがアチャモに狙いを定めてくれたおかげで、こっちはやりやすかったわ。無視してくれたお返し、きっちりと付けてあげるから!」

 セレナの凛とした声が聞こえる。
 気付けば、アブソルの周りを空気の渦が巻いている。そして、アブソルが角を振るうと同時に、エアカッターとは比べ物にならない、空気の渦がコロモリとズバットに襲い掛かる。

 轟! と一瞬、何かが裂けるような音がしたかと思えば、そこにもうズバットとコロモリの姿はない。草むらで隠れて見えないが、今のダメージを食らって、タダで済んだとは思えない。
 現に今、ボールにポケモンを戻していた。


「騒がしいね? 僕を差し置いて楽しそうなことやってるけど」


 人影が近づいてくる。白く染まった髪、黒いサングラスで眼を覆い、そして真っ黒なスーツ。それに、稲光が走ったような黄色の模様が入っている。体型からは、少年のものだと思われた。
 しかし、何者かはすぐに分かった。フレア団の紋様が入ったバッヂを胸に着けている。

「お前も、フレア団だな!!」
「ああ、そうさ。別に名乗って困ることもないし、名乗っておくとするか」

 少年は間を置くと、指を鳴らす。すぐさま、影がカルムとセレナへ飛び込んでいく。
 暗闇ポケモン、ヤミラミだ。それが、自分の喉下につめを宛がっている。もう一匹は抜け殻ポケモンのヌケニンだった。
 両方共、”シャドークロー”の構えをしている。

「少し、大人しくしてもらおうかな。僕の名はネープル。異名は、『炎魔導士(アストー・ウィザード)』だ。覚えててもらおうかな」
「で? これは何のマネよ」
「だから言っただろ? 僕らは自分達の所在を掴まれるのが嫌なんでね。もし、君らが飛行系のポケモンを持っていて、空から追跡されたら元も子もないからね。もしも妙な動きをしたら----------------その時点で喉に風穴開いた変死体が2つ、転がることになるよ? 良かったねー、大ニュースになると思うよ」
「あー、やっぱりバレてた?」
「ああ。匍匐前進しながら、僕らを追おうとしていた君の姿は、お笑いだったぜ」

 ネープルは、皮肉気に笑った。

「まあ、やっぱり気が変わった。お前ら今のうちに潰しておくわ」

 残酷な笑みを浮かべる。絶体絶命。カルムとセレナに、凶刃が迫る----------!


後書き:どうも、最近更新が再び戻ってきたタクです。もう、お察しの方もいるかとは思いますが、当初前作(幻のクロスワード)との関連を入れなかったつもりが、大分入れることになりました。路線変更ってやつですね。
ただ、前作とXYの時系列に注目してみてください。そうすれば、また新たな謎が浮いてくるはずです。
近々、前作を今の文力でリメイクにしようかという考えもあるので、(気が変わるかもしれませんけど)まあ期待しない程度にお楽しみに。
さて、2人はこれからどうなるのか。かなり、他の炎魔の中では残虐な性格のネープルですが、彼……いや彼女の名前の由来はネープルイエローから取ってるんですね。
上級→赤系の色
中級→青系の色
下級→黄系の色
といったようにですね。
そして、階級ごとにも階位があるのですが、あれは炎魔だけではなく、他の中級、上級、に属する下っ端達も入れた階位です。後々、直属部下も募集するかもしれないので。
今回はかなり長くなってしまいましたね。それでは、また。