二次創作小説(紙ほか)

第五十一話:メガヤミラミ ( No.131 )
日時: 2014/06/13 16:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「さーて、死刑執行といくか」

 ネープルは冷酷な笑みを浮かべると、即座に指示を出そうとするが、もったいぶってなかなか指示を出さない。
 やばい。これはまずい。喉元に宛がわれた影の爪---------シャドークロー----------がつぅーっと喉に切り傷をつけて、ぷちっという音が鳴ったかと思うと、血がたらたら流れる。
 死ぬくね? 俺ら死ぬくね? つーか死ぬくね? 
 第三章ここで、完! とか全然シャレに成んないからね?

「あ、あのさぁ、僕らまだ若いから死にたくないんだけど」
「そ、そうよ! 慈愛の心は世界を救うのよ!」

 だが、2人の説得虚しく。

「じゃあ、あの方の慈愛の心は世界を救ったのか?」

 ネープルの語気が一段と強くなった。
 サングラスごしにこちらを見る目が一層冷たくなる。

「いや、こんなことを今君たちの前で言っても仕方が無いや。後悔に包まれながら、死ね--------------」

 そういって、腕を振り上げた。”殺れ”の合図だ。
 と、そのとき。
 ネープルは失念していたことがあった。
 1つ目は、この辺りが背の高い草原地帯だということ。
 2つ目は、”伏兵”の存在のこと-------------
 つまり、何が起こるのか。主の危機を感じて、伏兵が奇襲を仕掛けたのである。
 刹那、炎がヤミラミとヌケニンを背を焼いた。
 耐久が紙以下のヌケニンはその場に倒れ、ヤミラミは背中をやけどしたようだった。
 何が起こったのか、さっぱりわからない。
 だが、1つだけ言えるのは自分が予期していない事が起こったということだった。

「アチャモ! 助けてくれたんだな!」
「やるじゃない! お隣さんの、ポケモン! やっぱり、あのタマゴが孵ったのね!」
「まーな! アチャモっていうポケモンなんだ。これでも結構鍛えたんだぜ!」

 形勢逆転。
 そして、セレナもようやく反撃に転じられる。

「アブソル、追い討ち!!」

 鋭い眼光を放って、アブソルは一直線にヤミラミへ向かった。
 が、そのときだった。


「七炎魔将を、舐めるなよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 
 ネープルが自身を振る立たせるように絶叫した。
 奇襲するのは大好きだが、奇襲されるのは大嫌いだ。
 まして、先ほどまでの舐めた行動。態度。
 すべてがイカレテル。

「メガシンカだ! ヤミラミ、行くぞ!!」

 メガリングだ。腕に装着したそれを掲げる。見れば、ヤミラミの首には、綺麗な石---------メガストーンが埋め込まれていた。
 2つの石が反応して、凄まじいエネルギーを生み出すことはカルム達はもう知っていた。
 タマゴの様な殻に包まれたヤミラミは、膨れ上がる。
 そして、殻が爆ぜると同時に、そこには目の宝石が紅く輝き、真紅の水晶を盾のように構えたヤミラミ---------否、メガヤミラミの姿があった。

「メガ……シンカ!?」
「そうだともさっ!! さあ、ヤミラミ、影撃ちだ!!」

 ヤミラミの体の影がすぅっと伸びて、アチャモとアブソルへ襲い掛かった。
 しかし、影に足を捕まれてその場を逃げることさえ出来なくなっていた。

「さあ、これで御終いにしてあげよう。ヤミラミ、シャドーボール!」

 影が全て結集し、塊となった。そして、一直線にカルム達の方へ向かっていく。
 だが、その時だった。火の玉が突如、別の方向から飛んできたのだった。
 ヤミラミの身体は突如として燃え上がった。

「何だ、一体何が!?」

 振り向くネープル。そこには、フライゴンの姿が。

「オペラ様!! 何故、止めるのです!!」

 だが、絶句した。そのフライゴンの上に乗っているのはオペラではない。しかし、そのフライゴンの覇気が何故か、オペラの所持しているものと似ている気がしたのだ。
 だが、全く同じではない。

「オペラぁ? そいつは虫唾の走る名前を挙げてくれたな」

 フライゴンの身体には、若干衰えを感じた。
 しかし、それでも健気に振舞っていたのだった。

「オペラじゃない? 誰だあの人は!」
「君たち! 悪いが引っ込んでてくれ!」

 フライゴンの上に乗っている何者かが叫んだ。
 仕方なく、カルムとセレナは言われるがままに、その場を走って切り抜けたのだった。

「貴様……よくも邪魔したな!」
「”ナック”、流星郡だ!!」

 刹那-----------大空から大量の隕石が落下した。そして、一気にそれがヤミラミへ降り注ぐ。
 そして、ドドドン!! と爆発音が響いたかと思えば、もうそこにはヤミラミは立っていなかった。
 メガシンカする前の状態に戻っており、倒れていたのだ。

「あ、あ……!! くそっ、くそっ!! 逃げるぞ、ヌケニン!」

 元気の欠片を投げると、さっきまで倒れていたヌケニンは復活。そのまま、ヤミラミをボールに戻すと、影に包まれて、地面へと沈んでいった。

「ゴーストダイブを使ったな。ちっ、奴らの居場所を掴もうと思ったのに」

 フライゴンに乗った少年は溜息をつくと、そのまま指示を出してその場を去っていった。

 ***

「終わった……のか?」

 さっきの場所に戻ったものの、もう誰もいなかった。

「僕達、何にも出来なかったな」
「そうね……」

 改めて知るフレア団の恐ろしさ。奴らの中には、こんな恐ろしい人間も混ざっていたとは知らなかった。
 今も、喉に宛がわれたシャドークローの感触が残っている。
 と、その時だった。
 連れ歩いていたアチャモが光り輝きだしたのだ。

「おっ、来たか!」
「え? これって------------」

 進化だ。アチャモの身体はどんどん大きくなり、人に近いような形を成していく。きっと、先ほどのバトルで経験が溜まったのだろう。
 そして、光が消えたかと思うと、そこには鋭い鍵爪を携えた若鶏ポケモン、ワカシャモの姿があった。

「お、おおおおお!! ようやく進化したか!」
(あんまり可愛くないって、口が裂けても言えない……)

 しかし、セレナを横目にカルムはワカシャモに抱きつく。

「うん! 進化してもモフモフは健在だな!」
「ちょっとは時と場合を弁えなさいよ」

 と、その時だった。シャーッ、とローラースケートの音がする。そして、こちらの近くに来たと思ったら、止まっていた。
 見れば、それは少女だった。美しい金髪のトリプルテールにヘルメット、ローラースケートにスパッツとスポーティーな容姿が特徴の彼女は立ち止まって、今しがた進化したばかりのワカシャモを見て、叫んだ。


「あーっ! それワカシャモ! 格闘タイプのポケモンだよね!」


 見れば、青い獣人の姿をした波動ポケモンのルカリオを連れている。
 フレア団の一件があったばかりなので、つい警戒してしまったが、何者だろうか。
 ----------誰? あんた。
 
「って、貴方はシャラシティジムリーダーのコルニさん!?」

 とセレナのシャウトをカルムはしかと受け止めた。
 ---------ジムリーダー!? この少女が!?