二次創作小説(紙ほか)

第五十二話:コルニ ( No.132 )
日時: 2014/08/10 11:23
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 目の前に現われた少女---------コルニは、何とジムリーダーだという。
 そういえば、ミアレにも”若き天才”がジムリーダーだと聞いた。
 まず、一行は軽く自己紹介をし合って互いの身分を明かした。

「コルニでいーよ。ジムリーダーにしたって、おじいちゃんが現役引退したから、なっただけだしさ」
「ガウ」

 同調するように、ルカリオが鳴いた。
 凛々しい碧眼に、白い肌、美少女とまではいかなくとも、普通に好感を得られる容姿だった。スポーティーな容姿と合わさって、軽快な感じはカルムにとっては、少なくとも良いと思えたのだった。

「セレナ。彼女の年は僕等と同じくらいじゃないか? さん付けはよそうぜ」
「そ、そうね」
「ピンポーン! ほんと大変だよ? 13でジムリーダー任されるのも」

 「って、そうじゃなくて!」とコルニは話の流れを変えた。
 よくよく考えてみれば、そのジムリーダーがジムを放っぽりだして、一体こんなところまでやってくるとは、何事か。

「あたし今、メガストーンの回収を急げっておじいちゃんに言われてるんだ」
「メガストーン? メガシンカに必要な石だったよな」

 そういえば、テイルも似たような事をやっていた気がする。

「君たちにも協力してもらいたいんだ。シャラシティには、マスタータワーっていう塔があるの」
「マスタータワー?」

 記憶に無い。まあ、当然か。カルムはカロスに来たばかりなのだから。といっても、既に1ヶ月は過ぎているが。

「メガシンカの力を継承する神聖な場所----------なんだけど、そこが”赤いスーツの一団”に襲われたの」
「ガウ」
「”赤いスーツの一団”!?」

 思わず、カルムとセレナの声が裏返った。

「知ってるの?」
「知ってるも何も、さっきそこで出くわした-----------いやいや、何回か戦ったっていうか」

 さっきそこで出くわした件に付いては、余計話がややこしくなるので、割愛しておいた。
 それを聞いた、コルニの眼が丸くなった。
 顔を接近させ、カルムにさらに追い込みを掛ける。
 近い。はっきり言って近い。
 とくん、と胸が跳ねる感覚に陥る。

「戦ったの!? あの連中と!?」
「ま、まあ、僕がちゃちゃっとやっつけっちゃったけどな。つーか近い、近いよ」

 手で彼女の顔面をぎゅっと押し戻したので良かったが、セレナが冷ややかな目で彼を見た。

「お隣さん……嘘言わないの」
「女性の前では見栄を張るのがカロス男児ってもんだろ」
「カロス出身じゃないでしょ、あんた」

 的確な突っ込み。う、と言葉を詰まらせる。

「頼もしいな! それで続きなんだけど、マスタータワーに置いていた”キーストーン”が奪われてしまって……」

 だが、コルニはこちらのやりとりをすっ飛ばす。思い込んだら突っ走るタイプのようだった。悪く言えば、脳筋か。
 どうやら、彼女の中では、カルム達は完全にフレア団をやっつけた英雄みたいになっているようだった。

「ん? 待てよ、キーストーンってメガシンカに必要なアイテムで、トレーナーが身につけるんだよな」
「そうだよ。だから、あいつらがメガストーンを探し当てないうちに、各地にあるメガストーンを回収しようってこと」

 キーストーンだけではメガシンカが起こらない様に、メガストーンだけではメガシンカは起こらない。

「あー、でもさぁ僕らが出会ったフレア団の幹部----------七炎魔の面々は皆エースのポケモンをメガシンカさせていたけど」
「……」

 彼女は呆然とした。
 一足遅かったということか。
 カルムが思うに、恐らく、プラターヌ研究所の際に、必要なものの殆どは掻っ攫われていたのだろう。
 また、カロス地方の道中にあると思われていたメガストーンも、どこまでフレア団の手にかかっているか分からない。

「いや、まだ分からないよ! じいちゃんが言ってた! このカロス地方には、まだ未知のメガストーンがあるって!」
「って言われてもな」
「ううん、実はもう見当はついているんだ。このセキタイタウンには、”バシャーモナイト”って呼ばれるメガストーンがあるって!」

 セキタイタウンにバシャーモナイトと呼ばれるメガストーンがある?
 -----------つーか、バシャーモって何よ?
 -----------珍種のポケモンだろ。
 という小声の会話が筒抜けだったのか、コルニは頬を膨らませて少し憤慨したような顔で言った。

「違うよっ! バシャーモっていうのは、ホウエンのポケモンで、そうそうそこのワカシャモの進化系! それで、バシャーモのメガシンカに必要なバシャーモナイトはこんな感じの石なんだけど」

 写真を見せられた。マークが中央にある綺麗な丸い宝石だが、見覚えがあった。
 しかも思い出した。以前、このバシャーモナイトを初めとしたメガストーンを巡る戦いがあったことを。

「え? それって……」
「バーミリオンに奪われたヤツじゃなかったっけ……」

 つまり、大分前にセキタイタウンで既に博士に回収された後、さらにフレア団に盗られた後だったのだ。
 彼女には申し訳ないが、無駄足他ならない。

「えええー!? もう盗られた後なのー!?」

 まずい、何か今日は目の前の初対面の少女をがっかりさせてばかりだ。
 何かフォローを何かフォローをって、フォローを受けたいのはこっち側なのに!

「それなら仕方ないかっ! 取り返せばいいだけだもん!」
「え?」
「あたしね、この地方のメガストーンの場所、結構教えてもらったんだ! でもあたしだけじゃ、あのフレア団に太刀打ちできなかった……」

 だから、とコルニはカルムの手を掴んで言う。


「貴方たちの力が必要なのっ! お願い!」


 思えば同年代の少女に、ここまで積極的に接されたのは初めてだった。
 というか、何か知らないが後ろのセレナが怖い。

「というわけで、まずバトルをしてほしいんだ。あたしのルカリオと……貴方たちの実力を見てみたいし!」
「僕のワカシャモを、か?」
「お隣さんだけずるい……」
「何なら、タッグバトルにする? あたしもう1匹ポケモンを連れてるんだ。出てきてルチャブル!」

 コルニが軽く放ったボールからは鳥人のような容姿の覆面レスラー---------みたいなレスリングポケモンのルチャブルだった。
 体格は小柄で、彩り鮮やかな羽根が特徴的だ。

「頑張れるか? ワカシャモ」
「アブソルは休んでて。頼むわ、ハリボーグ!」

 セレナはハリボーグをボールから出す。
 このとき、2対2の構図が3人の中で完成した。

「じゃあ行くよ!」

 コルニの掛け声で、バトルが幕を開ける-----------------------