二次創作小説(紙ほか)

第五十三話:目的 ( No.133 )
日時: 2014/07/02 23:20
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「ルカリオ、ルチャブル、グロウパンチ!!」
 
 先手はコルニが打った。
 2匹とも、全く同じ技で一糸乱れぬ動きを見せる。
 グロウパンチ。意味は正しく成長する拳。打てば打つほど拳は硬さを増し、威力を上げていく。
 つまり、殴るたびに攻撃力が上がる技なのである。
 早速、ハリボーグは強固な守りでそれを受け止め、ワカシャモは強靭な足で返すも-----------弾かれた。

「ワカシャモ、ルカリオに二度蹴り!」
「ハリボーグ、ルチャブルにニードルアーム!」

 ワカシャモの足が唸りを上げてルカリオの鋼の体へ吸い込まれるように放たれた。同時に、棘に包まれた腕がルチャブルに襲い掛かる。
 さらにワカシャモは、追い討ちを掛けるようにもう片方の足で蹴りを喰らわせる。
 しかし、条件反射かルカリオはその足を掴んで空中へぶん投げた。また、ルチャブルもひょい、と腕を避けたかと思うと、そのままハリボーグの腹へ突っ込んだ。苦悶の顔を見せたハリボーグに、お返しとばかりのパンチを食らわせ、巨体を吹っ飛ばす。
 完全に、パワーは向こうが上回っているか。

「くっ、パワーじゃ押し負けるかっ!」
「お隣さん、タッグプレーよ! そのワカシャモ、炎の誓いは覚えてる!?」
「そうか、合体技か!」

 ワカシャモは運よく、炎の誓いを覚えている。炎の誓いと草の誓いが合わされば、あたり一面は焼け野原と化すのだ。
 その威力の高さは以前、セレナとサナを相手にしたときに身をもって確認済みだ。
 ここでぶつければ、あわよくば一撃必殺----------!!

「ルチャブル、ツバメ返し!」

 一瞬、何かが横切った。
 こちらが指示を出す前に、向こうが仕掛けてきたのだ。
 鋭く、冷たい風が辺りを包み込む。
 目を開ければ、既にハリボーグはダウン。
 余りにも、あっけなさ過ぎる決着だ。

「セレナっ!?」
「ご、ごめんカルム……!!」
「やったやったぁー!! 流石、ルチャブル! 今度はルカリオ、ボーンラッシュ!!」

 焦燥感に包まれる2人を横目に、コルニは続けてルカリオへ指示を出した。
 ルカリオの手に青いエネルギーが棒状に固まる。
 そして、一気に野球の要領でワカシャモの身体をバットで打つように振り切る。

「止めのグロウパンチ!!」

 空中へ跳ね飛ばされて、反撃不能のワカシャモへルカリオは地面を蹴り、そのまま-----------グロウパンチを打った。
 ぐりっ、と胴に硬い拳がめり込む。
 悶絶の表情を浮かべてから間もなく、轟! と音を立てて地面に激突したワカシャモは、そのまま動かなくなった。
 決着を見た。
 誰がどう見ても、カルムとセレナの完敗だった。


 ***

 ポケモンセンターにて。ポケモンを回復させた2人は、コルニと向き合う。
 あまりにも速い決着、そして余りにも大きすぎる実力差だった。
 カルムの場合、弱点タイプのニャオニクスをぶつければ、また話は違ったかもしれないが、直感で分かった。
 ニャオニクスでもあの打撃を受けきることはできないと。

「つ、つええ……流石ジムリーダー」
「へへーん、だってあたしの格闘ポケモン達は最強だもん!」

 そう言った後、彼女は地図を投げて渡した。

「この地図に、メガストーンが埋まっていると思われる場所が記されてあるんだ」

 カロス地方全域の地図。そこには所々に×マークが施されている。恐らく、その地点にメガストーンが埋まっているものと見て間違いないだろう。
 唯、既にフレア団によって回収されていたり、同じくメガストーンの回収を行っているテイルとマロンに先を越されている可能性もあるので、場合によっては無駄足他ならない。

「難しいよな、この辺さ」
「でも、フレア団に悪用されないように早く行動を起こさないと-----------」

 メガストーンの回収という1つの大きな目的は見つかった。
 フレア団よりも先に、より早く迅速に目的地に向かわなければならない。
 だが、すぐにはいけない場所もある。
 そこでカロス一周の過程で回る場所回る場所で探せば良い、という結論に至った。

「じゃあ、この辺で解散ってことだな。セレナはどうする?」
「とりあえずメガシンカについての情報をテイルさんとかから聞いてみるわ。メガシンカを手に入れて、強くなりたい」
「強くなりたい、か。それは僕も同意見だ。最下級のネープル相手でさえ、僕達は追い詰められてしまった」

 まだまだ、実力不足だと言う事を痛感する2人。
 そして、コルニは

「じゃあ、あたしはおじいちゃんに報告したいことが沢山あるから真っ先にシャラシティに行くね!」

 とのことだった。

「ああ、そうか。気をつけてな」
「ジム戦、2人共楽しみにしてるよっ!」

 ローラースケートの軽快な音と共に、彼女の後姿は直ぐに見えなくなった。
 強くならねばならない。
 シャラジムでの戦いは、恐らく本気を出した彼女によってより激しいものになる。よって、今のうちにポケモンを鍛えておかないと、間違いなくさっきのように瞬殺される。
 
「フレア団を倒さないと……そのために、僕はメガシンカを手に入れる!!」


 ***

 ----------フレア団本部。通路で、スーツを身に纏ったボーイッシュな少女、ネープルは苛立った声を極限にまで抑え、(あくまでも自分の主観だが)目の前にいる場違いな執事服を羽織った金髪ショート、そしてモノクルを掛けた上司・オペラに告げた。

「以上が報告です」
「フライゴン、ですか。了解です」

 彼は顎に手をやると、「ふむ」と一声発する。
 そして、笑みを浮かべた。

「ネープル君。それと、この間頼んだ例の研究は?」
「ええ。丁度良いモニターも見つかったことですし、なかなか良い具合に進んでいます」
「結構」

 懐中時計に目をやると、オペラは歩を進める。

「定刻です。故にアニメ鑑賞の時間にします。実験はその後。良いですね?」
「了解です」
「くくく、これはどうなるか分かりませんね。ですが、私の理論が正確ならば、絶対的な確立で実験は成功します」

 カツーン、カツーンとブーツが地面を打った。
 オペラの笑い声が室内に響き渡る。
 冷酷に、そして冷たく。
 ドラゴン使いとは無縁のそれは無慈悲に反響する-----------------


後書き:久々の後書きです。今回は短めですね。どっちかというと。メガシンカの力をゲームで思う存分に感じています。対戦は厳選・育成の時間が取れないのでからっきしですがね。さて、今回ようやくセキタイタウン編が終わりです。圧倒的な力を見せるコルニ、そしてメガストーンの回収という新たな目的。そして相変わらず不穏な動きを見せるオペラですが、その彼の計画は前作のある人物に通ずるものがあるんですよね。ここで言ったら100%ネタバレですが、あくまでも通ずると言うだけなので。次は映し身の洞窟辺りになると思うので、お楽しみに。
それでは、また。