二次創作小説(紙ほか)

第五十五話:招待状 ( No.135 )
日時: 2014/07/08 23:12
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

 映し身の洞窟の一件から、カルムは自分の実力の低さを思い知らされていた。
 ワカシャモやニャオニクスでさえ、進化したとはいえまだまだレベルの高い相手に対しては不利だし、プラスルは強力な技を手に入れたといってもレベルの高(以下略)、モノズやゲコガ(以下略)。
 おおう、ゲコガシラが半透明のモンスターボールの中から凄い勢いで睨んできた。
 面倒くさくなってとうとう名前まで略してしまったのでご立腹のようだ。
 ケロマツのときといい、今といい、最近カルムはゲコガシラの扱いが雑な気がする。特に名前。
 さてそんなことはさておいて。
 最後に、あの男が言った言葉……。

”連中にこれ以上関わるな。お前、いつか大切なモンを失うかもしれねえぜ”

 大切なモノ……やはり真っ先に浮かぶのは自分のポケモン、そして自分の命、そして------------仲間達。

「……あれは一体、どういう意味だ?」

 恐怖。将来、何かを失うかもしれないという恐怖に包まれる。
 だけど、逃げるわけには行かない。
 フレア団と戦うこと、それが今の自分が前に進むための糧となるのだから。
 ---------これ以上、悲しむ人やポケモンを増やしたくない!!
 守ってやる。全部。この手に収まりきらなくても。


 ***

 浜辺に聳え立つマスタータワーの光景に思わず、カルムは足を止めた。
 洞窟を抜けた先には、すぐにシャラシティが待っていたのだ。
 しかしなんという絶景だろう。自然とマッチしているとは正しくこのことだろうか。
 早速、マスタータワーに向かうことにしたカルムだった。
 ローラースケートで滑りながら、ポケモンセンターの前まで辿りつく。
 しかし、よく見てみたら何かクレーンだのなんだのが色々集まっている。
 これってひょっとして……。

「もしかして、修復工事中とか?」
「そのまさかだ」

 後ろから声を掛けられた。見れば、テイルの姿が。傍には相棒のマロンの姿も。白衣姿を常日頃から羽織っているので直ぐに分かった。
 
「フレア団にやられたんだよ。マスタータワーの外壁の一部をぶっ壊されてな」
「じ、実行犯は!?」
「和服を着た女がエアームドに、紅いスーツを着た男女が数名、ゴルバットにぶら下がってやってきたそうだ-----------バーミリオンで間違いないな。クソッ。さらに、入口からも青いドレスの女と紅いスーツの女が数名、入り込んできたらしい。いずれもフレア団の犯行と見て間違いないようだ」
「やっぱりっすか……」
「知っていたのか?」

 怪訝な顔で彼が聞いてきたのでカルムは返した。

「ああ、此処に来る前にシャラジムのジムリーダーのコルニに出会ったところだったんで。マスタータワーが襲撃されて、キーストーンが大量に奪われたんだとか。後で調べたんですけど……研究所襲撃の前みたいです」
「ああ、俺もそれは”此処に来て初めて”知った。どうも最近ニュースが知りたいことを教えてくれないんだよな……」

 そして、話すまいか迷ったが、カルムは切り出した。

「後……映し身の洞窟でオペラに会いました」
「っ!! 大丈夫だったのか?」
「いや、チョーカーで洗脳したポケモンを使ってきて……コボクタウンでのポケモン強奪はこのためだったんじゃないすか?」
「ポケモンをチョーカーの実験台に……許さん、オペラのヤツ!」
「せ、せんぱいおちついてくださいっ! とにかく、かるむさん。こるにさんがめがすとーんに付いて、何かいってませんでした?」

 苛立つテイルをマロンが押さえ、カルムに問うた。

「ああ、それについてだけど……メガストーンがあるらしい場所を示した地図を渡されて。で、どうするんすか? メガストーン回収はテイルさんに任せていいですか?」
「いや、地図があるんなら、俺達とは別の場所を回ってくれ。俺達は今から、引き返して洞窟の中にチョーカー付きのポケモンがいないか探して、ショウヨウシティ、ハクダンの森、そして22番道路の近くにある虚ろの間を当たる」
「ですっ! こっちは任せてください!」

 つまり、テイルたちはこのままカルムとは逆方向に進むと言う事だろう。余計な手間を掛けさせてしまったか、と心配になったが彼のことだし問題なさそうだ。

「お前はこっから真っ直ぐいって、クノエシティに行ってくれ。今のところ、俺達はアズール湾でデンリュウナイトをゲットしたくらいしか収穫が無いんでな。少し、今まで来た道を後戻って調査だ---------としたかったんだが」
「はい?」

 彼の言い振りだと、今すぐそれを始めるわけではないようだった・

「そうは行かなくなった」

 それと-----------続けたテイルが小さな封に包まれた手紙を放った。
 わざわざ投げなくてもいいのに、と思う。
 カルムは慌ててキャッチする。

「な、何ですかコレ」
「これはお前ら選ばれし子供たち共々含め、俺達も呼ばれているパーティの招待状だ。場所は”バトルシャトー”と呼ばれる場所で、レンタルの車を経由すればここからすぐに着く場所だ。普段はバトル施設だがパーティ会場の貸し出しも行っているらしい」

 パーティ、か。
 ああ、自分も招待されているから簡単には此処を離れられないのか。
 それも選ばれし子供たちということは、どうやらセレナにサナ、ティエルノも来ると言う事だろう。
 カルムは生まれてこのかたパーティというものに参加したことが無い。
 だが楽しそうな言葉の響きから、好きな単語ではある。
 まして招待されているのならば、参加しなければ悪いだろう。
 そう思っていた。
 いや、そう思っていただけだった。
 差出人が気になる。思わず聞いてみることにした。

「で、差出人の方って一体?」
「差出人は、プラターヌ博士の師匠、ナナカマド博士の友人に当たる人物。プラターヌ博士は、その人からオーレ地方などの遠く離れた地方について教わったそうだ」

 オーレ……?
 頭の中に引っかかる単語だ。
 まさかと思う。
 まさか、”あの人物”では?

「世界的に有名な軍人のカーマイン大佐だ」
「--------カーマイン大佐!?」

 こくり、と頷いた。だがテイルは自分から”そのこと”を話すつもりはない。”そのこと”とは、カーマインという人物とカルムがどのような関係にあるかということだ。

「カーマインさんが、どうして……?」
「知り合いか」

 敢えてテイルは知らないふりをした。本当は知っていた。以前にプラターヌ博士から彼の過去を告げられたときに。
 もうこれ以上、彼の心は傷つけたくは無い。

「はい……」

 少し懐かしいような、複雑な感情が顔に浮かぶ。
 

「カーマインさんは……僕の、僕の恩人なんです」



後書き:今回は今作のコアに迫る展開の導入みたいなものです。また、バトルシャトーの場所は原作とは違って、シャラシティから別の道路を経由すれば着く、まさに”知る人ぞ知る貴族の秘境”といったかんじです。普段はご存知の通り限られた人物のみが入れるバトル施設ですが、劇中の説明どおりこのようにパーティ会場の貸し出しもしているわけなんですね。
それでは、次回から遅いバトルシャトー編ですが、お楽しみに。