二次創作小説(紙ほか)
- 第五十八話:婚約!? ( No.140 )
- 日時: 2014/07/11 08:08
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
***
しばらくして、カーマインの宣言でパーティが始まった。
全員が旨い料理や飲み物に舌鼓を打っていた。そして余興やその他色々に興じるものや、中にはナンパを仕掛けて頬を真っ赤に腫らすもの(誰かは大体お察しいただきたい)などそれぞれがそれぞれの形で楽しんだ。
しかも手持ちも出して良いとの事だったので、面子の中にはポケモンと共に楽しむものも。
勿論、カルムも例外ではない。
「あ、バカ! 勝手に僕が取ったのを食うな、プラスル!」
「プラプラー♪」
プラスルの口には既に放り込まれたエビフライが。
度々笑顔で悪戯をするのだからタチが悪い。
と床の上を逃げ回るプラスルを利口なワカシャモが尻尾を掴んで捕らえた。と思ったが、電気で痺れさせられてしまった。
「ったくよォ……はぁ。お、モノズ。そのポフレ美味しいだろ? 最高級のヤツなんだとか」
「ギィ!」
嬉しそうに鳴いたモノズは一口でポケモン用のお菓子、ポフレを平らげてしまった。
本当に美味しそうに食べる姿は少し前までは想像できない。
「あれ? ゲコガシラもニャオニクスも食べなくて良いのか?」
2匹とも首を縦に振る。
どうやら、”何か”を感じているようだった。
言葉には表しにくいが、何か嫌な予感がするのか。
「……僕もなんだか妙だと思った」
最初はどうとでもなかったのだが、何かがおかしい。来賓客の視線、というか気配がこちらに向いているような気がする。
そして、カルムの一番近くにいたゲコガシラとニャオニクスだけが感じ取っていたようだった。
***
「テイル君。どういうことだい?」
「此処の面子の顔を調べてみたんですけど、全員がポケモン学や科学関係の業界の連中なんです」
「そういえば知っている顔ばかりだとは思ったよ。カーマインさんはこんなに学者を集めて何をするつもりなんだろうね? どうも僕にはもう1つの目的があってこのパーティを開いたようにしか見えないんだ」
華やかな会場だが、やはり何かがおかしいということは皆が感じ始めていた。
視線、気配、そして面子。
何かが1つの意思によって統率されているように感じる。
***
「ねー、カルム♪」
そんなこんなでポケモンと戯れていたカルムだったが、シェナが話しかけてきたので全員を一旦ボールに戻す。目を離すとどうなるか分かったものではない。
「なんだよ」
「小さい頃、約束したよね?」
訴えるような視線を投げかけられてカルムの胸が跳ねた。
まるでコルニのときと同じだ。
上目遣いで話す目の前の美少女に心ときめかない男子が一体この世に何人居るだろうか。
そして約束と言うワード。
やはり思い当たるのは1つしかない。
「い、いや、もしかして結婚のことか? でもさ、あれは小さい頃の訳が分からないうちにしたのであって」
「カルムは……あたしのこと嫌いになっちゃったの?」
「ち、違う」
「あたしはカルムのこと大好きなんだよ?」
---------っ!!
顔が真っ赤に紅くなるのが分かった。
目の前に居るシェナも同じように。
心臓が聞いたことにないほどの爆音を鳴り散らせている。
「待っててね? もうすぐそれが現実になるから」
頭が冷静に考えられないうちに放たれた言葉は、あまりにもカルムには理解し難かった。
***
落ち着かない。気分が落ち着かない。
あんな告白まがいのことを言われた後だからか、心臓は鳴ったままだ。
「お隣さん、どうしたの? 熱でもあるの?」
「あ? いや多分そうかも。でももうすぐ終わるみたいだから」
「それなら良いんだけど」
-----------やめろやめろ! 今女子に話しかけられたら恥ずかしくて死ぬ!
そう思っていた最中、カーマインの最後の演説が始まった。
「これより-----------主催者である私、カーマインによる閉会の儀を取り始めます」
彼の静かで重い声が響き渡った。
まず、来賓への謝辞などが主だったが、その他現状報告などが続いた。しかし、カルムは先ほどのできごとの所為でほとんどすっ飛ばしてしまった。
だが、問題は次だった。
「そして、会場の皆様に嬉しい発表があります。私の血こそ繋がっていませんが、養子であるシェナの非常に喜ばしい出来事がありました。それについて、彼女本人から直接報告があります」
ま、まさかとカルムは思った。
彼女の引き取り先が決まったのか? いや違う。カーマインはもう、シェナを手放すつもりはないようだった。
公に一人娘といっているのだからそうなのだろう。
じゃあ一体、なんだ?
さっきドキドキの中、彼女に言われた言葉を思い出す。
『待っててね? もうすぐそれが現実になるから』
そして杞憂は本当に現実となってしまった。
台詞は前半は聞き飛ばしたので聞こえなかったが、これだけははっきり聞こえた。シェナ自身の声で。
「-----------それはつまり、婚約相手の決定です!」
冷や汗が伝う。
何故今日、自分たちが呼ばれたのか。
それがようやく分かった。
セレナ達はオマケで呼ばれたに過ぎない。
メインは自分そのものだったのだ。
自分の予想が正しければ、こうだ。
次の台詞は-------------
「相手は、アサメタウンのカルム君ですっ!!」
次の瞬間、喝采が巻き起こった。
つぅーっと額に溢れる汗が隠せない。
セレナがぐいっとカルムを引き寄せる。
「ちょ、ちょっとお隣さん! 何時の間に婚約なんかしたのよ! 唯の幼馴染じゃなかったの!?」
「知らないよ! 勝手に-----------!!」
尚---------とカーマインの言葉が続く。
「カルム君には我が娘の婿になる”義務”、そして--------------フレア団の一員となっていただく”義務”を得てもらいます!!」
------------は? 今何と言った!? フレア団!?
次の瞬間だった。周りで立って話を聞いていた面々が豹変した。
一気に、ガッと服を掴み脱ぎ捨てる。そして次の瞬間には全員が紅いスーツに身を包んでいた。
さらに、カーマインも軍服を掴むと一気に脱ぎ捨てる。
その下には紅い軍用コート。
胸にはフレア団の紋様が付いたバッジが。
隣に居たセレナ、そして纏まっていたサナ、ティエルノ、トロバはぞっとした表情を浮かべる。
プラターヌ博士も傍にいたテイルとマロンが守るように囲み、身構えた。
この場に居た来賓客が全員フレア団の一員だったとは!
「ど、どういうことだカーマインさんっ!!」
「許せカルム。お前の身を案じてのことだ。もうすぐ、この文明は滅びる。争いを繰り返す人間共が支配する愚かな文明は」
すたすたと階段を下りるカーマイン。
その眼光は鋭く光っており、軍人そのものだった。
「カーマインさん、これは……!」
博士が呼びかける。
「プラターヌ君。進化するのは何もポケモンだけではない。人間もなのだよ」
「人間も……!?」
博士の表情は更に困惑を増した。
「そうだ。我々は新人類へとステージを移すときが来たのだ!!」
高らかに宣言したカーマイン。しかし、全く意味が分からない。
「そしてプラターヌ君。何故、メガストーンの在り処がフレア団に分かったのか、君ならもう見当が付いてるだろう」
「まさか、貴方が私の研究所の情報を流したんですね!? カーマイン大尉!!」
「その通りだ。しかし、今の私はカーマイン大尉ではない」
赤いマントを翻し、手に持った杖にはキーストーンが埋め込まれている。
その風貌には見覚えがある。キーストーンを持つフレア団員はいずれもこう名乗っていた。
「フレア団幹部、七炎魔将序列1位、『炎魔王邪(タルウィ)』だっ!!」
カルムは目の前の全ては信じがたかった。
わなわなと震える右手。
思わず彼は駆け出して叫んだ。
「お、おい!! シェナ!! これは夢だよな!! まさかお前も七炎魔将なのか!!」
「違うよ、カルム」
にこっ、と微笑んだ彼女の口角からは全くカルムが安心できる要素が見つからない。
全て、不安を掻き立てられるものだ。
すべてを知っていたはずなのに。
「あたしこそが、フレア団最高幹部、『絶望の使徒(ハッピーエンド・チルドレン)』の1人、『破壊の遺産(イベル・ミゼル)』のシェナなんだもの」