二次創作小説(紙ほか)
- 第六十一話:七炎魔・上級 ( No.145 )
- 日時: 2014/07/30 09:21
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
「リュー、火炎放射!!」
「ハッサム、バレットパンチ!!」
口から火炎を吐き出そうとするリューに、弾丸の如き速さで、正に鉄拳が打ち出される。
呻き声を上げたリューは一瞬怯んだが、それでも至近距離で炎を浴びせた。が、流石七炎魔将のポケモン。弱点を疲れたところで、倒れないほど鍛えられている模様。
赤い鎧に身を包んだ虫ポケモン、ハッサムは非常に硬い鋼鉄の身体を持つ。無論、拳も例外ではない。拳と言っても、カニのような鋏なのだが、それを威嚇に振り上げたかと思ったら、本当に振り下ろしてくるので、非常に危険極まりないポケモンだ。
そして、その危険性を更に助けるのが先ほど繰り出された”バレットパンチ”であり、これはハッサムの決して高くはない素早さを補う強力な技である。その名の通り、弾丸のように打ち出された拳は----------
「もう一度、バレットパンチ」
----------衝撃波だけで全てを吹っ飛ばしてしまった。
風で机が舞い、壁に穴が開く。
何とも酷い惨状である。
「貴様は一体、何者だ? 只者では無い気がするのだがね」
鋭い視線を浴びせるカーマイン。威厳と威圧に満ちたそれを目の当たりにして怯みそうになる。
「目的はなんだ? 誰の差し向けだ? そして、どこから来た?」
----------おー、おっかねーな、このじーちゃん。
「いーじゃん。こんなやつの話、聞いてらんないよ。クチート、じゃれつく」
「させないよ! ゲコガシラ、アクアジェットで食い止めろ!」
さえぎるようにカルムが叫んだ。
突貫。それを動きでそのまま表したか。
突っ走ってリューへ襲い掛かるクチートを水を纏ったゲコガシラが身を挺して突き飛ばす。
さらに、
「ゲコガシラ、煙幕!」
ボンッ、と何かが弾けたかと思えば煙が辺りに広がった。
「小細工を……ハッサム、羽で煙を吹き飛ばせ!!」
途端に、ハッサムは羽を羽ばたかせで煙を吹き飛ばす。もうもうと視界がだんだん晴れていき、そこには--------------
「ゲコガシラ、グロウパンチだ!!」
ゲコガシラの拳があった。顔面へまともにそれを喰らったハッサムは、仰向けに倒れこむ。
「やったか!」
「成長したとは言ったが、まだまだ甘いぞ」
びゅんっ!! という空気を切り裂く音に続いて弾丸拳(バレットパンチ)がゲコガシラを捉えた。
お返しと言わんばかりに顔面にぶつけられた鉄の塊。
同じように仰け反って倒れた。
さらに、後ろからクチートの姿が。
ガバァッと開かれた角-----------いや、大顎がゲコガシラに襲い掛かる。
「回避! んでもって、もう一発グロウパンチだ!!」
そこは流石切り込み隊長。素早い動きで襲い掛かる大顎を避ける。
だが、床は抉られてしまった。
あの顎の破壊力が見て取れた。
恐れずに低く構えたゲコガシラが、”成長した拳”をクチートの胴へ向けた。
しかし、軽い足取りで飛び上がったクチートは大顎を向けてゲコガシラへダイブ。
「不意打ち。相手の攻撃を利用して畳み掛ける技だよ」
「っ……癪だけど、強くなったじゃねえか!」
「そろそろ、一気に決めるとしよう……長引かせる意味も無いな」
カーマインが呟く。そういって、自身がいつも手に持っていた杖に飾られた宝石に触った。
続けて、シェナも腕に嵌められたリングに手をかざした。
直後、眩い光がほとばしり、2体を包み込む。
「ハッサム、進化を超えろ、メガシンカ!!」
「行くよクチート、メガシンカ!」
***
「さーて、プラターヌ博士。メガシンカについての研究データを全て教えて貰いますよ?」
ゲホッ、ゲホッと咳き込む博士に詰め寄る下っ端。背後には手持ちのズルズキンの姿が。先ほど、”死の輪”の範囲を逃れたにも関わらず、一行に奪われた活力が戻らないセレナ達は反撃する手段も失われていた。
拷問をしてでも吐かせるつもりなのか。
刹那、”何か”の拳がズルズキンを吹っ飛ばす。
「甘く見るんじゃねぇぞ、くそたったれがよ……まだまだバトルは終わっちゃいないぞ!!」
テイルのシビルドンだ。そして、辛うじて彼自身も立ち上がっている。
効果抜群のドレインパンチを喰らったズルズキンは伸びてしまった。
「へへっ、こんなときこそビリビリしてくるってもんだぜー!!」
景気付けに雄たけびを上げた彼は、身体に力が入らない博士を背負って、下っ端達に拳を突きつける。
「シビルドン、”暴れる”!!」
途端に瞳を真っ赤にしたシビルドンが腕を振り回し、一瞬で周りを取り囲んでいたポケモン達を薙ぎ倒してしまった。
「すごいよ……テイル君……! この短期間でシビルドンがここまで成長するなんて……」
「へへっ、どんなもんですか!」
「いや、シビルドンだけじゃない。君の背中も心なしか見ない間に大きくなった気がする……!」
ふふ、と笑みを零しながら博士は言った。
褒められて思わずにやけてしまうのを抑えてテイルは、限界が近づいている肉体に力を入れて、地面を踏み込んだ。
「随分と雑魚を倒して有頂天になっているようだな、ワッパが」
「浅はかとしか言い用がありませんね」
戸が開いた。そこから聞き覚えがあり、尚且つ虫唾の走る2人の男女の声が響いた。
執事服にモノクルでショートカットの金髪を生やした二枚目の男に、ポニーテールで結んだ黒髪で背の高い女が立っていた。
七炎魔将、バーミリオンとオペラだ。
まさか、と思った。
炎魔将の中でも上級が3人、揃ってしまうとは!
「首領からの命令は、貴方達の拘束。今まで散々邪魔してくれましたからね、本気で捕らえろとの事です……む?」
オペラは言った途中でステージの上に立っている序列1位であるカーマインが今にもメガリングに手をかざしている姿--------ではなく、下でそれのポケモンと戦っているカルムとブラックの姿を目に留めた。
----------成る程……まあ良いでしょう。
「さて、テイル君でしたね。貴方1人のポケモンでは、我々2人を倒すことはできない。それは分かりきってるでしょう。大人しく、投降するのはいかがですか」
「チッ……!」
「そして、新入りも紹介しましょう」
「切り裂いてやるぞ。貴様には散々やられたからな!!」
そういって、2人はモンスターボールを放った。
「実験開始ですよ……投入、ジュカイン」
「未来を切り裂け、出て来い、ダイケンキ!」