二次創作小説(紙ほか)

第六十二話:破滅の盤上に立つものたち ( No.146 )
日時: 2014/07/31 09:22
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 顕現した2体のメガシンカポケモン。ただならぬ覇気を発しており、あふれ出るそれがおぞましいものすら感じさせる。
 クチートは、頭の後ろに付いていた角(つまり大顎)が2つに増えている。さらに目の色に下半身袴型、そして袖の部分がピンク色に変色していた。
 一方のハッサムは羽根と鋏が若干大きくなり、さらに頭部には菱形を伸ばしたような飾りがついており、やたらヒーローのような姿になっていた。

「嘘だろ!? クチートもハッサムもメガシンカするのかよ!」

 流石に動揺を隠し切れないブラック。
 そこに響く声。

「フレア団の正義は、勝ァーつ!! ハッサム、バレットパンチ!」

 主、カーマインの叫びに呼応するように、ハッサムは地面を蹴り、ゲコガシラ目掛けて弾丸の速さで飛ばす鉄拳を放った。
 ---------回避----------ダメだ、指示を出すのも間に合わない!
 避けられない。余りにも速すぎる。そのまま胴にそれを食らって、仰け反る。

「っ!?」
「援護するぞ! リュー、火炎放射------------」
「さっせないよー♪」

 にぃーっと笑ったシェナの口から指示が飛び出た。

「クチート、不意打ち!」

 途端に再び、物凄い勢いで突っ走るクチート。火炎放射のモーションを待たずして、だ。そして、大顎による一撃がリューにクリティカルヒットする。
 それだけならよかった。が、途端にリューの身体は地面に倒れてしまった。

「なっ!? なんだこの威力は! タイプ一致でもねぇのに!?」
「クチートはね、メガシンカすると特性が”力持ち”、つまり物理攻撃技の威力が”2倍”に跳ね上がるんだよ?」
「物理技の威力が---------2倍、だと!?」

 まずった。超攻撃型の2体が揃ってしまった以上、並みのポケモンでの受けは不可能。
 さらに、鈍足な2体はそれを補うかのように素早く繰り出せる技を所持している。
 
「戻れ、リュー」
「くっ、ゆっくり休んでくれ、ゲコガシラ!」

 既に手持ちがこの2体のために2つ戦力を失っている、カルムとブラック。
 絶体絶命。そんな言葉が過ぎった。

「頼んだぞ、ワカシャモ!」
「ナック、てめーの出番だぜ!」

 ワカシャモを繰り出すカルム。対するブラックはナックと呼んだフライゴンを繰り出す。

「奴らの共通弱点は炎だ! 一気にそれで攻め落とすぞ!」

 焦った声でブラックが言う。

「分かりました!」
「させんぞ! ハッサム、バレットパンチ!」
「クチート、じゃれつく!!」

 4体の技が、交錯する----------------
 
 ***

 貫禄ポケモン、ダイケンキ。そして密林ポケモン、ジュカイン。前者はイッシュ地方に生息する巨大なアシカのようなポケモンであり、後者はホウエン地方の密林に生息するという……のは以前博士から聞いたばかりであった。

「く、くそっ!! 何でてめーらの相手までしなけりゃなんねーんだ!」
「知りませんね? まあ命令なので」

 テイルは、はぁはぁと息を切らしながら、目の前の宿敵を見た。

「そういうわけで、とっとと消えていただきますよ! ジュカイン、ドラゴンクロー!!」
「ダイケンキ、シェルブレード!!」

 ジュカインは両手の爪を覇気で纏わせ、一方のダイケンキは前足に装備された刀、通称:アシガタナを振り回し、襲い掛かってきた。

「シビルドン……はダメか、戻れ!」

 ”暴れる”の副作用で混乱しているシビルドンを突っ張らせるよりも、別のポケモンにしたほうがよっぽど有利だ。ここは---------

「行け、エモンガ! エアスラッシュ!」

 ジュカインに弱点、ダイケンキには普通に効くエアスラッシュで攻撃する。
 ------------ここで、テイルは1つポカをした事に気付いた。
 1.エアスラッシュは1体にしか当てられない(止められるのは良くて1体)
 2.そして奴らの攻撃はどちらかでも避けなきゃ死ぬ(誇張表現)
 3.そして避けられない(つまりオワタ)

「え、ちょ、おま」

 ザクン、という鋭い音がし、あーコレ終わった感がテイルを支配した---------が、そうはならなかった。
 ジュカインはテールナーが、そしてダイケンキはヘイガニが受け止めている。

「あの変なオーラって範囲を抜ければそうでもないみたいね!」
「ここから反撃開始だねぇ」

 セレナとティエルノだ。

「てめーら……!」
「テイルさん、私たちは大丈夫です!」
「僕達にも手伝わせてください!」

 舌打ちするバーミリオン。邪魔をされたのが気に食わないのだ。不機嫌そうに、刀を一度振るうと、言った。

「貴様等……私の邪魔を何度も!! 生きて帰れると思うな!」

 何ともおっかない光景である。

「まあまあ、バーミリオンさん。我々の目的は彼らの拘束ですよ-------------ですが対象の生死は問われていませんか、クク」

 ずばり、殺しても構わないと言う事か。改めて、彼らがイカれていることを実感する。

「そういえば、あちらの方が若干手薄になっていますね? 単対多戦闘は慣れているでしょう? 私はあちらの方に行くとしますよ」
「仕方あるまい、頼む」

 あちら---------つまり、先ほどからマロン達が戦っている方向だ。
 好い加減、好転しない戦況を憂いたのか、オペラはバーミリオンに背中を預け、その渦中へ。

「フラエッテ、妖精の風!」
「テールナー、火炎放射!」

 一方のサナとトロバも襲ってくる団員のポケモンを蹴散らしていく。
 カルム達が戦っているのに、自分達がそれに甘んじるわけにはいかない、という思いがより一掃彼らに眠る闘志を掻き立てる。
 先輩であるマロンの助けも在り、今のところは完璧だった。
 しかし。

「ジュカイン、リーフストーム!!」

 突如、その場にいた下っ端達やそのポケモンを巻き込んで強力な竜巻が放出された。
 後にはそれを避け切れなかった大量の下っ端やポケモンの無残な姿が。
 オペラだ。オペラが無慈悲にも部下を巻き込んでジュカインにリーフストームを撃たせたのだった。
 しかし、その成果あり、テールナーとバオッキーは戦闘不能に。フラエッテも爆風に飛ばされて壁に叩きつけられる。

「そ、そんな! 仲間を巻き込んで技を撃たせるなんて!!」
「関係ないですね。それが今の技を撃たない理由にはなりません。あまり煩いと、貴方達も同じ目にあわせますよ? ---------ジュカイン、彼らを少々痛めつけてやりなさい!」

 その声で戦闘が始まった。

 ***

 かくして---------フレア団七炎魔将、上級に位置する3人が揃ったことにより、バトルシャトーで始まった激戦はさらにその激しさを増すこととなった。
 また、メガシンカしたポケモン、そして別の地方のポケモンを繰り出す彼らに成す術がない。
 破滅の盤上はくるくる回る。
 3人の少年を、軸にくるくると回る。
 そして、不安定なそれらは余りにも大きなものを乗せすぎていずれ----------崩壊するかもしれない。