二次創作小説(紙ほか)

第六十三話:苦戦、死闘 ( No.147 )
日時: 2014/08/02 01:37
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「ダイケンキ、シェルブレードだ!!」

 アシガタナが水の刃を飛ばした。何て威力だ。床が一瞬で縦に割れる。
 水圧がよほど高いのか。
 セレナは前に水の切れ味と言うものを父から教えてもらったことがある。
 それは下手をすれば、鋼鉄でも切り裂くことができる威力だと。
 故に、水タイプの技は鋼タイプに対して威力が弱まらない数少ない技なのだ。
 ぞくり、とセレナは改めて目の前にいる”敵”が強大なものであることを実感した。
 肌が泡立ち、思わず息をすることも忘れる緊張感。
 それに押し負けないように、気合を込めてハリボーグに指示を出す。
 それに、隣にはテイルとティエルノもいる。
 決してフェアではない戦いだが、こうでもしないと勝てないことは目に見えている。
 一方のティエルノも、ダンスの会場などとは比べ物にならない圧力を感じていた。
 相棒のヘイガニが何時になく震えているのが分かる。

「ヘイガニ……僕も今回ばかりは少し緊張しているかな」
「落ち着いていきましょう、ティエルノ!」
「よし、おめーら。準備は整ったか? こっちのポケモンの相性はアイツに対して有利だ。俺のエモンガが電磁波で痺れさせる。その隙に、畳み掛けるぞ!」

 こくり、とうなずく2人。

「作戦会議は終わったか? では----------遠慮なく行かせて貰うぞ! ダイケンキ、メガホーン!」

 バーミリオンが叫ぶ。
 そして、ダイケンキが吼えた。
 来た。虫タイプの物理技では最高級の威力を誇るメガホーン。巨大な角をオーラに纏わせて、突貫する。
 
「へへっ、奴さん考えもなしに突っ込んできやがった! エモンガ、電磁波だ!!」

 旋回しながら、微弱な電気をダイケンキに流すエモンガ。
 ---------電磁波の成功率は100%!! 決まったぜ!!
 突貫するダイケンキの速さは落ち-------------なかった。
 それどころか、より速さを増したか。
 
「……その程度か?」
「なっ!?」
「私のダイケンキが、その程度でトロくなるとでも思っていたのか!!」

 まずい。敵の機敏さ、というか根性は(特性ではない)予想以上である。
 本当ならば、ここでハリボーグがニードルアーム、ヘイガニがクラブハンマーで畳み掛けるところだったが、そうもいかなくなった。
 突貫してくる敵。
 しかし。

「エモンガ、ボルトチェンジ!」

 眩い閃光を放つエモンガ。強烈な電撃を浴びたダイケンキは、今度こそ完全に止まった。その瞬間に物凄い速さでエモンガはボールへ戻っていく。

「っ!?」

 そして、ボールから再び現われたのは、既に混乱状態が回復したシビルドンだった。

「甘いのはどっちだ、コラ。好い加減こっちもバリバリしてきたところだぜ!!」
「おのれ、貴様、味な真似を!」

 叫ぶバーミリオン。ボルトチェンジは攻撃して、すぐに他の手持ちと入れ替わる技である。
 故に、普通に交代させるよりもラグが少ないのだ。

「ハリボーグ、ニードルアーム!」
「ヘイガニ、クラブハンマー!」

 さらに、死角からハリボーグが棘に覆われた腕を振り下ろし、ヘイガニが鋏を叩きつける。
 -----------が、

「ダイケンキ、冷凍ビームだァー!!」

 刹那、辺りを構うことなく冷凍ビームが乱出された。あちこちが凍りつく。テーブルや床は最早、えらいことになっている。
 さらにハリボーグにシビルドン、そしてヘイガニもそれを喰らい、その場に凍りついてしまった。
 氷柱。
 まさしくそれである。

「ッー!!」
「冷凍ビームの温度は-320度。そんなものを喰らえば、一瞬で生きたまま凍るのは目に見えているぞ。さあ、どうする?」

 それはおよそ、液体窒素とほぼ同等の温度である。触れた瞬間、蒸発し、そして触れたものを即凍りせる氷タイプ及び水タイプがよく所持している技だ。

「っ……ハリボーグ!!」
「ねえ、返事をしてよヘイガニ!!」
「仕方ねぇ、一旦ボールに戻せ」

 なんと言う強さだ。下手をすれば、あのガブリアスを軽く超えるかもしれない。ガブリアス同様攻撃重視の戦法であることには変わりないのだが、それ以上に-----------
 -------------”レベルの差が桁違い”つーことだ!!

「うろたえるな。まだ戦いはこっからだろうが!!」

 とはいえ……凍らされたことで、動けない手持ちが1匹。完全に機能停止させられたよりも厄介である。

「ふ、他愛も無い連中よ! 切り裂いてくれようぞ、貴様らの未来も! 希望も!」

 ***

「ジュカイン。リーフブレード」

 一瞬で見境なく周りのものを切り裂くジュカイン。
 よく見れば、腕や首に妙な鎖をつけていた。
 観察力のあるトロバがいち早く気付いたのだった。
 あのジュカイン、今のままでも十分凶暴だが、どこか動きがぎこちない感じはしたのだ。

「マロンさん! あの鎖って!?」
「分かんないですけど……何かを押さえ込んでいるような感じはします?」

 それを聞いたオペラは、くくっと喉で笑った。

「何がおかしんですか!」

 憤慨するマロン。
 
「いえ、失礼。これは流石に私でも外すわけにはいかないんですよ」

 ご丁寧にも説明し始めるオペラ。

「この鎖は、あまりにも凶暴すぎたこのジュカインが余りにも私には手に余る代物だったので付けたものですよ。これを外したら、私でも手に追えなくなります」
「凶暴って……!」
「一種の強制催眠のようなもので、ポケモンの闘争本能を常に保たせるために、これにはある薬を投与しているわけです。凶暴になったのはその反作用ですが、全て計算のうちですかね」

 何という男だ。自分の研究のためならば、ポケモンの”心”がズタボロになってもいいというのだ。

「さあジュカイン、やってしまいなさい。奴らはお前の敵だ……痛めつけてしまえ!」

 その声を聞いた途端、虚ろだったジュカインの目がくわっと開いた。
 まるで、その声に抗いたくても抗えないような。
 狂ったような表情で吼えたそれは、地面を蹴り、一気に間合いをつめる。
 フラエッテとテールナーは既に瀕死寸前。このまま戦わせるのは得策ではないと判断したそれぞれの主人-----------トロバとサナは2匹をボールに戻すと、新たなポケモンを繰り出した。

「いっくよ! エネコロロ!」
「頼みましたよ、プテラ!」

 ボールから新たに繰り出されたのは、化石ポケモンのプテラ、そしてお澄ましポケモンのエネコロロだった。エネコロロは以前サナが所持していたエネコが進化したもの。プテラはトロバが秘密の琥珀をコウジンタウンで復元したものだった。
 一方のマロンはバオッキーがまだ戦える上に相性的に有利のため、そのまま戦わせることに。
 そして、飛行タイプのプテラならば少なくともジュカインには相性が良い。

「受け止めろ、プテラ!」

 鋭い牙を装備した大顎でジュカインの腕に噛み付くプテラ。悲鳴を上げたジュカインは即座にもう片方の腕をプテラの頭に振り下ろすが、そこで何かに見とれているのか、腕が止まってしまう。
 ---------おや? 何が起こったのでしょうか。

「プテラ、フリーフォールだ!!」

 そのままプテラはジュカインを天井付近まで連れ去り、そこから-----------突き落とした。
 ズドォン、と落下音と言う名の痛々しい音が響き渡った。

「まさか----------!!」

 エネコロロの異性を惹き付ける誘惑の体制、これは正しくメロメロだった。
 メロメロとは、異性を惹き付けることで攻撃させにくくする技。サナとしても一か八かの賭けだったのかもしれないが、こうも決まるとは。
 しかし。

「ギィエエエエエアアアアアア!!」

 再び、落下地点からジュカインが吼えた。
 天井付近から落とされてもそこそこのダメージしか食らっていないのは、間違いなく彼が高低差の激しい場所出身である”密林ポケモン”だからであろう。

「実験は最終段階……そろそろ本気で叩きのめさないと、ですね!」

後書き:すっごい久々な気がする後書きです。今回、七炎魔の上級連中が御三家(冒険の最初にもらえる3匹のポケモン)を使ってきたわけですが、これにもきちんと法則はありまして。
バーミリオン→刀のイメージがあるダイケンキ
オペラ→メガシンカでドラゴンが追加されるジュカイン
カーマイン→作者が運よく4Vヒコザルを手に入れていたため、ゴウカザル

といった具合です。ちなみにジュカインはメガシンカするかというと、それは最後までわかりませんよ? 作者って結構話の方向変えたりするので。