二次創作小説(紙ほか)

SS1:木登り騒動 ( No.148 )
日時: 2014/08/24 00:57
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 僕は、ニャオニクスである。名前はまだ無い。というか主人がニックネームをつけない柄だからだろうか。
 いや、そんなことはどうでもいい。
 まず僕が今、どういう状況なのかを簡潔に説明しようか。

 ----------木に登ったまま降りられなくなった。以上。

 うわあああああ、こーわーいー、こーわーいーよー!! ごしゅじーん、たすけにきてえええ!!
 落ち着け、こんなときは素数を数えれば良いって御主人は言ってたっけ、えーっと2、4、6、8、12、私のレベルは52万って馬鹿!!(そもそも素数ではない)んなコントやってる暇無いんだけど!?
 いや待て、何のための超能力だ? 自分を浮かせて降りれば問題なくね?
 ってムリムリ、絶対ムリ!!
 こんな足場の不安定な場所で集中して念力なんか使ったら100%落ちるから!
 
「おーい、ニャオニクス殿、何やってるでござるかー?」

 声が聞こえる。人間のものじゃないな。これは-----------ゲコガシラだ!!

「すまなーい、降りれないんだー! 助けてく」
「自分で何とかするでござる」

 ひでぇ!? こいつ薄情だよ!? 仲間のピンチを正しくみすみす見逃すつもりだよ!?

「うぉーい、ふざけんなぁぁぁ!! マジヘルプミー!! 助けて、ホントマジ助けて!?」
「拙者だって暇じゃないでござる」
「嘘付け、お前今絶対暇だろ!!」
「拙者影薄いからお前がいなくなったら、ゲフンゲフン、じゃなくてそもそも、何故自分からそんな危険な場所に?」

 こいつ今本音漏れたよ!? 影薄いって自覚してたよ!? 言うほど薄くも無いとは思うけど!?
 ゲコガシラの奴、腹立つ……今日はそもそも休みで主人が公園に連れてきたから結局皆暇だろうが!
 仕方ない。恥ずかしいことこの上ないが、どうしてこうなったのか話そう。

「実はさ……可愛いチョロネコがいたから話しかけたんだ」
「ナンパでござるか」
「っせぇよ! 黙って聞いてろ、元ケツマロ!!」
「ケツマロ!?」

 ああそうだよ、ナンパだよ悪かったな! 仕方が無いじゃないか、可愛かったんだもの、可愛かったんだもの、可愛かったんだよ、チクショォー!!

「そしたらお腹が減ってるから木の実とって欲しいって言われて、木に登ったら-------------」
「降りれなくなった上に彼女には逃げられたというわけでござるな。自業自得でござる、帰る。カエルだけに」
「上手い! って分かったなら助けろやオイィィィ!!」
「拙者はダルいから他の面子に頼むでござる」
「ね!? お願いだから!! 助けて!」
「ケツマロを撤回するでござる」
「します、しますから許して!」

 仕方ないでござるなー、そうだ何か木の実でも後でおごってもらうでござる、と良いながら木に登ってくるゲコガシラ。
 さてやってこれで降りられる。後はこいつに捕まって降りるだけ----------

「うわあああああ、こーわーいー、こーわーいーでごーざーるー!! ごしゅじーん、たすけにきてでござるぅぅぅぅぅぅ!!」

 テメェもかああああ!! お前忍者じゃなかったのかよ、ふざけんな、何で忍者が高所恐怖症なんだよ、ハクダンジムでの戦いは一体なんだったんだよ!!

「ねー、騒がしいなー。あんた等何やってんのよ」

 こんどは♀の声。この澄ました感じの声は間違いなく、プラスルだ。
 さっきまで寝てたのか、目がしょぼついてる。

「降りれなくなったんだよー!!」
「ねえ、ニャオニクスはともかくゲコガシラはおかしいでしょ」
「高所恐怖症でござるー!!」
「アホか。一体何があったのか教えてよ」

 仕方がないから、今までの経緯を話してやると、プラスルは相槌を打って言った。

「ふーん、なるほどよーするにニャオニクスは番(つがい)の相手が欲しいわけね?」
「え!? そこ!?」
「番ならさー、あたしがなってあげようか? ん?」

 やばい、この色気はメロメロの構え……って何でそうなるんだよ、誰がテメーなんかの番になるかぁぁぁぁ!!
 気合でメロメロを避けるも、ゲコガシラにメロメロ(ハート状の弾幕)が当たって酔っ払いおっさんモードに--------なる前に殴って正気に戻しておいてっと。

「嫌に決まってるだろ! しかもお前は主人一筋じゃなかったのか!?」
「あ、バレた?」
「好い加減に降ろして欲しいござる」
「降ろして欲しいって言ったってあたしにはムリだって。じゃあワカシャモ辺りに頼んで二度蹴りで木を揺らして落としてもらうわ」
「やめて!! 僕ら確実に怪我するから!」
「あんたら温室育ちには分からないだろうケド、野生での生活には全てにおいてリスクが付きまとうものよ。怪我ぐらい、何てことないわ」

 言うけどね!? 5mくらいはあるからこの地点。メッチャ高いから!

「シャモちゃーん、ここに二度蹴りの良い練習台があるよー?」

 マジやめて、冗談抜きであいつの蹴り強いから!

「え? 本当?」

 来ちゃったぁー!! 熱血系乙女ワカシャモもおでましだーい、終わったぁぁぁぁ!!

「うおおおお、燃えてきたあああ!!」

 しかも上の様子まるっきり見えてないからこいつ!! 

「熱血は勝あああつ!! ホワチャチャチャチャ!!」

 二度蹴りじゃねえええ、百烈キックだこれええええええ!! あばばばばばば、揺れるぅぅぅぅ身体が揺れるぅぅぅぅ!!
 ---------あれ? 止まった?

「あれー? ゲコガシラもニャオニクスもどうしてここにいんのよ」
「木に登ったら降りれなくなってオゲェーッ」
「助けに行ったら巻き添え食らってオゲェーッ」

 気持ち悪い……完全にさっきので酔った……。

「ちょっと、プラスルー。2匹がいるんだったら何で教えてくれないのよ」
「ごめんごめん、とりあえずさー……さっきのでもう一回揺らしてあいつら落として助けてやってよ!」
「あ、そういうこと! んじゃ任せて!」

 任されるな、あばばばばばば、揺れ揺れる揺れるるるるるる------------

 ***

 その頃、日陰で主人-------カルムに抱かれて寝ていたモノズは喧騒に意識を引っ張られた。
 だが、目が見えないので状況が分からない。とりあえず、他の連中が何か騒いでいることは分かった。
 
 --------ごしゅじん……なんかさわがしいよう。

 くいくい、と服を噛んで引っ張ってみる。が、寝ていて起きる様子なし。

「しかたないな……」

 そう思って、喧騒のする方へ歩んでいった。

 ***

「ちょっとぉー? 枝に捕まってたら落ちないでしょー」
「落ちたくないから捕まってるんだよ!! 何で僕の周りには脳筋と下忍しかいないんだオイ!!」
「下忍とは失礼な、もうレベルは中忍くらいはいっているでござる!」

 ……あれ? 皆何やってるんだろう。
 木の幹のにおいがする。それと、大分上にニャスパーとゲコガシラ……。
 どうやらニャオニクスとゲコガシラが木の上から降りれなくなったみたいだ。全く仕方ないな。僕がどーにかして助けてあげたいけど、どうしたらいいのか分かんないよう。

「良いトコに来た、モノズ! あんたの馬鹿力を見込んで頼みがあるんだけど---------」
「ふぇ?」
「ちょっとあの木に頭突きをかましてみなよ。そしたらあいつら落ちて木から降りれるから」
「うん、良いよ」

 人助けだと思って、やってみるか。

「ストォーップ!! 止めて、怪我する怪我するねえやめてとめてやめてとめてやめてとめて--------------」

 ----------刹那、木が大きく揺れ、2匹は撓った木が戻る反動に耐え切れず、そのまま振り落とされるように吹っ飛んでいった。

「……パワーが強すぎたかな」
「これであいつらも懲りるでしょ」
「ねーねー!! モノズってすごい力があるんだね! 今度あたしの特訓に付き合ってよ!」

 ***

「で、ゲコガシラとニャオニクスは何でそんなにケガしてるんだ?」

 ご主人に手当てしてもらいながら僕は思った。右のゲコガシラも同じようだ。
 あの後すっごいモノズには謝られたから良いとして、ワカシャモとプラスルはキュッと締めておきました。

-----------馬鹿程怖い奴って世の中にいないよね?
 -----------同感でござる。ヌシも同類でござるが。
 -----------うん、やっぱお前も後で締めとくわ。

木登りなど、二度とゴメンだと肝に銘じた僕たちだった。