二次創作小説(紙ほか)

第六十六話:炎魔強暴 ( No.153 )
日時: 2014/08/12 18:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「おーい、おーい? 応答願うけど? ん?」

 少年は無線通信を使って先ほどからしきりに、ある人物の応答を待っていた。
 が、出る様子は無い。

「……流石に心配だな」

 そう呟く。
 フレア団の巣食う洞窟の中にまで来たものの、流石にこれはどうかと思った。
 今こそ岩陰に隠れているが、相当な数の下っ端がウロついているのである。

「ちっ、何なんだよ」

 彼でなくともそう悪態をついたであろう。
 下手をすれば袋のネズミになるがオチ。
 と、そのときだった。

「イクシャァァァ!!」

 轟く轟音。何かのポケモンの鳴き声だ。それも、とても強大な。
 それに釣られて、他の下っ端達も駆けて行く。

「急がないと」

 そう言って駆け出す少年。しかし、そのときだった。

「おーっと、待てよ。こっから先は立ち入り禁止だぜ?」

 身構えた。目の前に立っていたのは男だった。
 妙な笑い声を上げた男は詰め寄ってくる。
 男の姿の全貌は、ローブに隠されて分からない。しかし、背丈・声から大人の男、それも20代ほどだとは判別できた。

「ケカカカ、誰だテメェは。名乗りな、侵入者君?」
「はーあ。同じ悪の組織の幹部って言ってもこっちは大したこと無さそうだ」
「あ?」

 苛立ちを隠し切れない男。敵とはいえ、ガキに舐められたマネをされたのが気に食わないのである。
 同時に疑問も感じた。
 --------”同じ悪の組織の幹部”だと?

「悪の組織? あーあ、大体子供のごっこ遊びか」
「元だよ元。それに---------」

 --------舐めて貰っちゃ困るね。
 次の瞬間、少年はボールを投げた。中からは再び、親子ポケモンのガルーラが。
 頭にはメガストーン・ガルーラナイトが埋め込められたヘルメットを装備している。
 同時に、少年の手首に嵌められていた腕輪に装着されたキーストーンと、ガルーラナイトが反応した。

「ガルーラ、メガシンカ!」

 激しい光と共に、卵の殻のようなものに包まれたガルーラ。そして、い一気にそれが弾け飛び、粒子となって霧散した。
 ガルーラ本体に変化は無い。しかし、袋の中に居た子供が大きくなって飛び出してきたのだ。

「へーえ、コケ脅しじゃねえみたいだな」

 男は感心したように言う。

「『炎魔強暴(アエーシュマ)』」
「?」
「異名だけ教えておいてやる」

 ククッ、と男は喉で笑った。胸糞悪い。不愉快である。
 そしてその直後------------

「行け、ライボルト!」

 ボールを投げ、現われたのは放電ポケモンのライボルト。逆立った黄色の鬣が特徴的な四足歩行のポケモンである。
 また、それ以外の部分の体毛は青い。
 何より電気が体中を迸っているのが一番怖い。

「てめーがメガシンカするなら、こっちもだ。ライボルト、メガシンカ!!」

 直後、男のチョーカーに埋め込まれたキーストーンとライボルトの首輪に埋め込まれたメガストーンが反応する。
 激しい雷と共に、ライボルトが咆哮した。
 同時に卵の殻のようなものに包まれ、それが電気と共に弾け飛ぶ。

「メガライボルト。これでテメェをぶっ潰す」
「ふーん。口だけじゃなかったら良いけど」
「そうだな。逆に口だけだったら良かったと思わせてやる!」

 メガシンカしたライボルトの姿は巨大な稲妻のような体毛を身に纏ったというもの。いろんな意味でボリュームが増しているが、何より-----------

「電撃もボリュームアップだぁぁぁ!! ライボルト、10万ボルト!」
「ガルーラ、シャドーボール!」

 2体の技がぶつかり合った。
 電撃の影の弾。しかし、電撃が押し勝ち、ガルーラに襲い掛かる。

「一気に決めろ、もう一回10万ボルト!!」

 そういって、再び電撃を放ったが--------------ライボルトは足を動かすのが辛そう、というか身体を動かすことすらきつそうだった。
 思い当たる原因は地面技、特に地均しを喰らった際の素早さ低下が思い当たるが------------考えられないか。
 では何時の間に!?
 そう考えている『炎魔強暴』の耳に少年の声が響く。

「バカだな。地均しを気付かれずに放っていたことに気付かなかったのか」
「な、何ィ!?」

 全く、気付かなかった。

「待てよ、この戦法---------まさか、”あの方”のもの--------」
「ん? これはたまたま立ち寄った大会で見かけた戦法でさ。盗ませてもらったんだ」

 待てよ、と少年は声を止める。

「お前、そのときの誰かに似ているような---------誰だったけな」

 次の瞬間、目の前の敵の口角がニィーッと上がった。

「お前はライボルトが疲労したように見えたかもしれねぇが---------」
「!」

 電気。それも地面を這うように迸っている。

「俺のライボルトの電気は弱くなっていねぇぞ青二才が!」

 直後、それがガルーラの身体を伝わり、一気に駆け巡った。

「っ-----------しまった」
「喰らいやがれ、10万ボルト・俺様バージョン!!」

 雷の柱が現われる。それが一気にガルーラを覆った。
 そして一気に襲い掛かる。
 地均しで先にライボルトを狙うが、上手く技を出せない。

「無駄無駄無駄ァ!! 何で地面に電気が這うようになってるか知りてぇだろ? ああ!? よく足元見てみろよマヌケ面でよォ!!」

 足元------------しまった。僅かにだが水が靴の底までの高さに漬かっている。

「これが電気を通していたのか!!」
「俺様のヌオーだ。バックに潜ませていたのが気付かなかったのか、クカカカ」
「参ったね……!」

 少年は少なくとも焦りを感じていた。
 2体。
 敵は2体居る。
 こっちももう一体出して対抗するしかないようだ。

「良いよ。ダブルがお望みなら、僕だってコイツを出す」

 そういって、少年はボールを放った。中から出てきたのは、穴掘りポケモンのホルード。ホルビーの進化系でノーマル・地面タイプである。

「ほーう。相性の良い地面タイプを出したつもりかもしれねぇがどうやって勝つつもりだ?」
「うるさいな。やってみなきゃわからないだろ」

 ---------あーあ、あいつの口癖が移ってしまったよ。「やってみなきゃ分からないだろ」。あいつと会ってなきゃこんな言葉使わなかったろうにね。

「ま、勝てば良いだけだから」
「御託は良い。口だけなら良かったって後悔させてやるよ!!」

 再び、2人の間に戦闘の空気が流れる。
 ぴりぴりしてとても重い。
 なのに、この状況を楽しんでしまっている自分が居る。
 戦いは続いた------------そのときだった。

「イクシャアアアアアアアアア!!」
「来たか」

 くくっ、と喉で笑った『炎魔強暴』は確信したように言った。

「俺達の勝ちだ!! ライボルト、電撃で天井を落とせ!」
「なっ----------!!」

 直後、電気の柱が天井を破壊した。そして、岩が次々に崩れ落ちてきた------------