二次創作小説(紙ほか)

第六十七話:脱出 ( No.154 )
日時: 2014/08/12 18:11
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「いやぁ〜、今日も穴掘るっぺ」

 キーン、コーン、キーン、コーン、と工事現場で作業員がドリルで道路工事をしていた。
 12番道路。アズール湾へ続くこの道路は現在、整備の途中だった。
 何せリゾート施設を作るためなんだとか。

「ったくよ、にしても随分勝手だよな。コバルトって奴も」
「ああ。自分のプライベートビーチを作るために俺らをこんな暑い日に狩り出しやがって」
「まあ良いじゃねえか。俺らがおまんま食っていけるのもそいつのおかげなんだからよ。おい手ェ止めてないでどんどん掘るぞ!」

 アイアイサー!! と元気の良い掛け声を放ち、再び腕を振るう。傍には怪力ポケモンのワンリキーが岩や瓦礫を運んでいるので大助かりだ。
 さて、俺もやるかー、と1人の作業員が鶴嘴を振り上げたそのときだった。

 ズボッ

「すんませーん、ここってどこシティですかね?」

 突然、人の首がにょいっと生えてきた。
 あー、ここは街じゃないです、12番道路でして……と答えた彼。
 しばらく、沈黙が流れた。
 そして、ようやく目の前に広がる光景が奇妙なものだと気付く。
 あれ? これって生首じゃね? ナマの生首じゃね? 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」
「おい、どうした!!」

 仲間の悲鳴を聞いたもう1人の作業員が駆けつけてくる。

「あのさ、お仲間さん気絶しちゃったんですけど」
「え? マジ? 運ばないとな、ったく生首でも見たのか----------生首?」

 直後、再び男の叫び声が響いたという。

 ***

 ずぼぼぼ、とその全貌が明らかになった。
 正確に言えば、フライゴンに乗った少年---------ブラックだった。後は、カルムを初めとしたメンツである。
 あの後、空中への脱出は困難になったので、フライゴンの”穴を掘る”で地面に潜り息が切れないうちにすばやく脱出したわけだが、窒息するかと思った一行であった。
 フライゴンは”高さ”だけでも2.0mある。そして頭から尾までの長さは更に長いので、人を多く乗せるのは楽勝だった。

「夏のホラー回も良いところですよ、作業員の皆さんあの後芋づる式にやってきて皆が気絶しちゃったじゃないですか」
「まあ良いじゃないか、カルやん。助かったんだから」

 ふぅ、とようやくシャラシティに戻って一息吐けたカルム。
 そこで博士が切り込んでくる。

「しっかし、カーマイン大佐が、七炎魔将の1人だったとは」
「それだけじゃねえっすよ。あの男は序列一位。今の俺達では、まず敵わないでしょうね」

 力の差は歴然だった。
 しかも、カーマインの養子であるシェナは更にその上の階級------------『絶望の使徒(ハッピーエンド・チルドレン)』の1人。
 また、それらが一体何者かは分からなかったのだが、セレナが口を開いた。

「……私、知ってます。あの『絶望の使徒』について」

 全員の注目がセレナに向く。
 
「以前、ある探偵の方にフレア団の事を聞かれて。それで情報交換と言う事で教えてもらったんです。『絶望の使徒』はいずれも社会から迫害された子供の能力者だって」

 1人は天候を自由に変えられ、
 1人はポケモンと心を通わせることができ、
 1人は命を直接奪うことができる。
 そして最後の1人は--------------不明。

「何てことだ、七炎魔将以上の階級があるなんてよ!!」

 テイルが怒鳴った。

「今後、それらが襲ってくるとも限らないが、いずれも人知を逸した能力を持っているってことですね」

 トロバも不穏な表情を浮かべる。

「怖いよ……旅を続けられなくなっちゃう」
「案外、大袈裟でもないかも、だねぇ」

 ちょっと待て、とカルムが言った。

「おいおい、もしかしたらそいつもフレア団の一員で、情報操作をしてるって可能性もあるんだぜ!?」

 しかし、そこにブラックが割ってはいる。

「その探偵は何と名乗った?」
「クリスティと言っていました」

 その言葉にブラックはピンと来たようだった。

「なーるほど。そいつの言葉は信用できるぜ。俺とそいつはちょっとした仲でな。詳しくは言えねえが」
「そうだったんですか!?」

 --------ブラックさん、本当に何者なんだ!?

「つーわけだから、俺はこれで」

 そういって、フライゴンのナックに飛び乗るブラック。

「フレア団を倒すのはこの俺の使命だ。何の能力を持っているか知らんがカルム。これ以上フレア団に関わるなよ」

 こういい残したのが気がかりだったが。

 ***

『---ガ----こっち----は----失敗だ。何とか-------抜け出して------たけど』
「そーか。御苦労だったな。つーかノイズ入ってるから良く聞こえない」
『だ-----ら言った-------よ、僕1人-------で-------ムリだ------て』
「そんなこというな、元四幹部さんよ」
『黙れ、バカ』
「あ、そこだけはっきり聞こえたわ」

 やはり、予想以上だったか、敵の戦力は。
 彼一人では食い止めることが出来なかったと言う事か。

「まぁ良いぜ。後は基地ごと叩いて助け出すだけだ。俺だけじゃねえ。クリスティの奴もいるからな」
『-----ま------そう、だけど』
「んじゃ、一応ヒヨクシティで落ち合うってことで」
『了解』

 フランクに返したその声は、どこか悔しげだった----------


後書き:ようやくこれにて、バトルシャトー編終了です。まだまだ掘り下げていない伏線は有りますが、何より謎の一部がだんだん晴れてきたところが読者の皆様には大きいでしょう。まあ一方で、あの少年2人の正体やクリスティとの繋がりも見えて来ましたし。
さて、何よりカルムはまだシャラジム突破に向けての修行といえる修行をしていませんからね。というわけで次回はその修行回になると思います。多分。
にしても、ここ最近で参照が増えていますが、それだけで作者のモチベーションはぐーんと上がる一方です。
今回は話自体は短めでしたが、次回はまた大きなボリュームでお届け出来れば、と思っています。それでは、また。