二次創作小説(紙ほか)
- 第六十八話:特訓 ( No.155 )
- 日時: 2014/09/17 18:52
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
***
あの日から2日経った。カルムはテイルに呼ばれて、シャラシティのカフェに来ていた。
「……何の用ですか」
「てめーに見せておきたいモンがある」
ガサゴソとカバンの中から取り出したのは、石----------それもメガストーンだった。
デンリュウナイトというらしい。
しかし、光が若干褪せているように見える。
色がくすんでいるのだ。
「メガストーンってのは、言うなればカロス地方そのものだ。石ってのは大地の一部だからな。その光が褪せているってことは---------」
「カロス地方の大地も相当危うい状態になっている?」
「正解」
そして立ち上がった。
一刻も早く、フレア団を倒さないとな、と続けた。
「シャラジムに挑むんだろ? ちょっと揉んでやる。着いてきやがれ」
「!」
「今の俺達じゃ、あいつらには勝てない。だけど、メガシンカさえ手に入れれば、それも可能となる」
だが、とテイルは続けた。
「メガシンカの継承は今は出来ない」
それはマスタータワーが襲撃され、キーストーンが根こそぎ奪われたからである。
新しいメガストーンが採掘されるまでは、まだムリという訳だ。
「だから少しでも強くなろうって訳ですか」
こくり、と頷くテイル。そして続けた。
「カーマインとシェナの件……残念だったな」
俯くカルム。
何故、こうなってしまったのか。
何故、誰も彼を止められなかったのか。
何故、自分は何も出来なかったのか。
「悔しい……です」
「だから取り戻そうぜ」
立ち上がったテイルは、いつもの不敵な笑みを浮かべた。
「”俺達が一番大事なモノ”って奴を」
「!」
どんっ、とカルムの胸に拳を当てる。
「俺はこの美しいカロス地方を」
「僕は大切な人を」
***
「つーわけだ。バトルすっか」
「結局それっすか」
カルムは溜息をついた。
また砂浜である。
アズール湾の砂浜で今、カルムとテイルは合間見えていた。
「お前のワカシャモと俺のモココ。互いに進化後がメガシンカできるポケモンを所持している」
「つまり?」
「互いに鍛え合えば良いのさ」
レベルも丁度同じ程度だしな、と続ける。
しかし2回のバトルが2回とも海辺とは、何かの縁か。
「こいつはカロスに来るときに連れてきたポケモンの1匹。お前に見せるのは初めてだな」
「早く始めませんか?」
「ちっ、物腰は柔らかくなったが、生意気な餓鬼だ。行くぞ、モココ!」
投げられたボールからはモココが現われた。一方のカルムはワカシャモを繰り出す。
「さーて。こないだみてーな漏電作戦は効かないぜ? 何せモココはシビルドンと違って、身体の綿以外は全てが絶縁組織になっていてな。もっとも綿が電気を通すのは----------発電するためのほかないけどな!!」
バリバリバリ、とモココの体毛が逆立った。”充電”だ。電気を溜めて電気タイプの技の威力を上げるだけでなく、特殊技に対する耐久力も強める技。
「ビリッと来たァー!!」
--------あんたが充電してどうする。
「ワカシャモ、グロウパンチ!」
成長する拳をモココに放つワカシャモ。
流石に速い。避け切れずに一撃目は喰らってしまったが、
「というわけで、エレキボール!」
刹那、電撃の球体がワカシャモ目掛けて飛ばされた。
それを胸で喰らい、膝を付くワカシャモ。
「すっげぇパワー持ってるじゃないですか、そのモココは」
「どーも、どーも」
「だけど、こっちも負けちゃいない! ワカシャモ、ブレイズキック!」
脚に炎を纏わせ、一気に振り上げる。目の前のモココ目掛けて。
しかし、ひょいと素早い動きで避けてしまう。
「隙ありだぜえええ!!」
もくもく、とモココの首の周りの綿が泡立ち、それが飛ばされた。
綿だ。綿がワカシャモを包み込んでいく。
あっと言う間にワカシャモの身体は綿まみれに。
「綿胞子は、相手の素早さを下げる技。これをどう突破するつもりだ?」
「くっ……! なら、火の粉だ!」
ふっ、と綿に火を吹きかけるワカシャモ。すぐにそれは燃え上がり、焼ける------と思われた。
しかし、実際そうはならなかった。
焼けた部分からどんどん綿が増えていくのだ。
「綿胞子。つまり、特殊な綿を増殖させる胞子を放つ草タイプの技だが、こいつは”菌類”の仲間で、しかも非常に成長及び繁殖が早い。つまり、燃やそうが何しようが無駄ってことだ!」
「んな!?」
また、補足すれば草タイプではないモココが、その胞子を量産できるのは、同じくポケモンが技を使う際に使用する際に”パワーポイント”、通称PPと呼ばれるものを消費してエネルギーに変えているからである。
ポケモンが炎を吐いたり氷を吐いたり電気を放ったりできるのは、全部このPPのおかげなのだ。
「エレキボール!!」
「避けろ!」
「無駄無駄無駄ァ!! エレキボールは自分の素早さが相手の素早さよりも高ければ高いほど威力が高くなる技! さあ喰らいな!」
高速で追尾する電撃の弾。ワカシャモの特性:加速(あの後やっと知った)で素早さを上げればダメージは軽減できるかと思ったが、綿胞子でそれを封じられてしまう。
レベルは同じはずだ。
しかし、こればかりはトレーナーの力量の差か。
電気が一気に流れ込む。
悲鳴を上げるワカシャモは仰け反って倒れた。
「おいおい、これでお終いか? 違うよなァ!」
「ったり前でしょうが!! ワカシャモ、ブレイズキック!!」
成長する拳を放とうとするワカシャモ。しかし、脚は完全に綿によって埋まってしまった。
つまり、技を出すための後一歩が踏み出せないのだ。
「どうした、その程度か! てめぇの決意はその程度で止まっちまうようなちゃっちぃもんだったのか!」
モココが再び充電を始めた。
「……これで終いだ。モココ、エレキボール!!」
まずい、電撃の弾が特大サイズに大きくなる。
「格闘タイプにおいて、最も重要なのは……己の業で戦うこと」
前に読んだ本にそう書いてあった。
「己の業……そうか」
電気の弾が迫ってきた。次に喰らえば本当にお終いだが----------
「正面から来る飛び道具-----------なら、こっちから打ち返す! ワカシャモ、グロウパンチ!!」
----------脚が使えないなら、拳を使うだけだ!!
電気の球をその拳で跳ね返す。電気が拳を伝う前に、それは弾けた。
「っ、やるじゃねえか! だけどそっから動けないだろ! どうやって決定打を与えるつもりだ?」
「ワカシャモ、気合溜め!!」
直後、熱いオーラがワカシャモを包み込んだ。
それだけで次に何が起こるか察する。
更にワカシャモの身体が業火に包まれた。
「これはっ!?」
「ニトロチャージ。炎タイプの物理技だが、ここで習得するかよ!?」
一気に内部から燃された綿は再生する暇もなく燃え尽きた。
そして、今目の前には丸腰のモココの姿が。
「これで一気に決める! ワカシャモ、スカイアッパー!!」
「舐めるんじゃねぇ! こっちだって、突進だ!!」
しかし、一瞬遅かった。
ワカシャモの拳がモココの腹をしっかりと捉えたのだ。
そのまま、太陽へ向けるように拳を突き上げる。
スカッとする音を立てて、モココは吹っ飛んでいった。
「っ、戻れモココ」
虚しいボールに戻す音が後に響いたのだった。
***
「この調子ならジムにも挑戦できると思うぜ、俺は」
「本当ですか!」
その後のポケモンセンターでテイルはカルムに太鼓判を押した。ここ最近で相当強くなっている、と。
「メガシンカ親父が聞いたら喜んだだろうがよ、残念だぜ。キーストーンさえ奪われてなかったらな」
「全くですよ」
何にせよ、ないものを欲しがるのは良くない。今はシャラジムに挑戦して勝つこと。それが最優先である。
「んじゃ、気張ってこいや」
「はい!」
最初はテイルの事を好い加減な人だと思っていたが、本当に熱くて良い人なんだと実感した。
そしてカルムはジムへ向かう。
3つ目のジムバッジを手にするために!