二次創作小説(紙ほか)

第七十話:VSシャラジム パート2 ( No.158 )
日時: 2014/09/19 07:09
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

「頼んだぞ、プラスル!」

 次にカルムが繰り出したのは、ジム戦では初投入となるプラスルだった。バチバチッと電気を頬から弾けさせ、闘争心を込めた笑みでゴーリキーと向かい合う。
 
「相手との体格の差はでかいが、それを補助技で補う! まずはプラスル、メロメロだ!」

 愛くるしい笑みでハートの弾幕を放つプラスル。
 カルムの内心は-----------

(♂でありますように♂でありますように♂でありますように------------)
 
 だった。さもなくば、早速この行動が無駄になりかねない。
 が、ハートの弾幕は真っ直ぐ向かっていく。失敗ならばとっくに弾幕は爆ぜているので、成功か。
 そして、敵の特性はノーガード。その弱点はこちらの攻撃も絶対あたると言う事!
 一方のコルニはそれに動じることなく指示を出す。
 
「ゴーリキー、冷凍パンチ!」

 冷凍パンチ。ゴーリキーとプラスルの距離は軽く10mは離れている。

 ----------近づくための時間がロスとなり、メロメロを喰らってしまう! どういうことだ!?

 が、次の瞬間。
 飛び上がり、拳を振り上げたゴーリキーは地面に向けてそれを叩き付けた。
 刹那、凄まじい冷気が襲い掛かる。空気が刃になり、冷たく頬を抉っていくような、そんな感覚だ。
 
 -----------冷たい! そしてこれは、まさか!

 バキバキ、とバトルフィールドが氷で覆われていく。
 加えて、所々が柱のように隆起し、ハートの弾幕も打ち砕かれてしまった。
 そして、近づく氷の床の魔手はプラスルへ。
 足を捕まえにどんどん氷は迫ってくる。
 この際、一緒に凍るよりはこのまま不利な足場で戦ったほうが良い。

「飛び上がれ!」
 
 指示と同時にプラスルは上空へ飛んだ。
 そして、頬から再び電撃を------------

「させないよ? ゴーリキー、岩石封じ!」

 空中から突如、大量の岩石が降りかかる。バラ付きこそあるが、空中にいるこの状態でそんな攻撃をされたら堪ったものではない。

「回避だ! 岩を足場にしろ!」

 が、そんなムチャ振り聞けるわけもなく。1つ目に乗ったとたんにそれが崩れて落下。そこに再び岩石が降りかかる。
 そこを素早い身のこなしで脱するが、ノーガードで身体を固められ、結局何発か喰らってしまった。さらに、氷の滑る床で足をとられ、つるつるとそのまま転ぶ。

「これが本当のスケートリンク、何てね!」
「生憎スケート違いじゃないか? スケートはスケートでもこれフィギュアスケートのリンク」
「ああ、でもそのままじゃ動きにくいよね」
「え?」

 再び、ゴーリキーが拳を地面に杭のように打ち込んだ。めり込んだ拳から阿弥陀くじのように広がったヒビの波紋は一瞬で氷付けになったバトルフィールドを砕いた-----------そして、砕けた氷が刃となって襲い掛かる。

「やっべ……!!」

 次々と襲い掛かる刃を喰らってしまうプラスル。
 まずい。まさかフィールドにメイクを加えた上にそれを壊して攻撃してくるとは思いもしなかった。
 真っ向から向かい合って攻撃する格闘タイプとはなんだったのか。

「おいおい、さっきからこっちに直接攻撃してこないじゃんかよ、どうしたんだ? 真っ向から挑むのが怖いのか? ん?」

 が、次の瞬間。氷の刃の間から現われたのはゴーリキーだった。
 回避行動に勤めていたプラスルの身体を掴む。

「今、何か言った?」
「い、いえ何も……」

 たじろぎながらカルムは後ずさった。
 壮絶な笑みを浮かべたコルニは言った。


「そっかー、確かに格闘タイプのジムなのに肉弾戦がないと面白くないもんね」


 しまったあああ、とカルムは後悔した。
 余計なことを口走ったがばかりに彼女の殺る気をさらに押し上げてしまったようである。
 完全にお怒りのようだ。はい。


「ゴーリキー、地球投げ!」


 小さなプラスルの身体を片腕でがっちりホルード、じゃなかったホールドし、地面にもう片方の拳で地面を叩き付ける。その反動と脚力で大きく飛び上がったゴーリキーは、最高地点で静止したかと思うと氷の刃が突き刺さったままの地面へプラスルを投げた-----------

「やばい、これはやばいって!! プラスル、避けろ!」

 といっても無理な話である。技ではないのでノーガードの適用範囲外とはいえ、体勢が整えられない。流石に氷の刃はもろく、すぐさま折れてしまったが結果的に砕けた氷の中へ突っ込んでしまった。
 ゴーリキーは氷からずれた安全な位置に降りる。
 そしてそこには、全身切り傷だらけのプラスルが目を回して倒れていた。
 くっ、と呻いたカルムはモンスターボールへプラスルを戻した。

「な、なんつーえげつない攻撃方法だ……!」
「あたしを怒らせるからこうなるの」
「だけどな、ただ負けたわけじゃないぜ。今お前のゴーリキー、俺のプラスルに触っただろ?」
「?」

 まさか----------とコルニはゴーリキーの姿を見た。
 立つのもままならないような印象を受ける。
 
「ま、マヒ状態!?」
「電気タイプに容易に触らせたのがお前の失敗だ。あがいたんだよ。あんなにがっちり捕まれたんだ。普通、苦しくて暴れたりするだろ? 電気タイプのポケモンとて同じだ」
「電気を、抵抗したときに電気をゴーリキーに流しこんだっていうの!?」
「そのとーり。ま、流石にここまでは計算外だったけど」

 と、口では余裕ぶっているカルムだが、内心はかなり焦っていた。こちらの手持ちは後1体。対し、コルニは手負いとはいえ、ゴーリキーと残りの1匹、つまりこの間見たルチャブルかルカリオか、はたまた別のポケモンか-----------いずれにせよ、このゴーリキーよりも強いのは確かだが。
 ゲコガシラの素早さは魅力的だが、相手が思ったよりも固いので決定打に欠ける。
 モノズはタイプ的に相性が不利なので×。
 残る選択肢は--------------

「頼んだぞ、ワカシャモ!」

 これしかない。

「目には目を、歯には歯を、格闘タイプには格闘タイプだ!」
「いいじゃん、いいじゃん! この間よりどれだけ強くなったのか、試さないとね! ゴーリキー、岩石封じ!」

 ノーガードでどうせこの攻撃は避けられない。
 ならば------------相手が岩石を出現させる前に畳み掛ける!

「ワカシャモ、ニトロチャージだ!」

 全身を炎で包み込んだワカシャモが地面を蹴り、ゴーリキーへ突っ込んだ。呻く巨体に続けて「グロウパンチ!」というカルムの声と共に拳を何発も打ち込む。

「速い!?」
「それだけじゃない、麻痺の追加効果で素早さが低下しているから、お前のゴーリキーが動く暇なんかない!」

 そして、最後にゴーリキーの巨体を放り投げ-----------

「ワカシャモ、スカイアッパー!!」

 昇天する太陽のように拳を地面から上空へ打ち込んだのだった--------そして、後には完全に再起不能と化したゴーリキーが倒れていた。

「お疲れ、ゴーリキー」

 彼女は残念そうに微笑むと、ボールの中にゴーリキーを戻した。
 そして、再びにっと笑って見せた。

「最後はこの子! 行くよ、ルチャブル!」

 現われたのは、あのレスラーポケモンのルチャブルだった。
 鮮やかな羽を大きく広げ、威嚇する。

「ルカリオじゃないのか。ちょっと残念だぜ」
「少し訳があるんだけどね、それには。だけど、この子は素早さだけならルカリオを遥かに上回ってるんだよ!」
「素早さ、か。だけどこっちだってグロウパンチで攻撃力と、ニトロチャージで素早さを上げてるんだ。相性だけじゃまだ分からないぞ!」
 
 2人の視線がかち合った。
 最終ラウンドの幕開けだ------------