二次創作小説(紙ほか)
- 第七十一話:VSシャラジム パート3 ( No.161 )
- 日時: 2014/09/28 00:32
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
「ルチャブル、空手チョップ!」
ひゅんっと小柄なルチャブルが跳んだ。いや、”飛んだ”。助走を付けてフィールドを駆けたと思えば、次の瞬間には既に飛んでいたのだ。
そして、くるっと回転したかと思えば、そのまま腕を振り下ろしてくる。
咄嗟に避けたワカシャモ。しかし、尚ルチャブルは動作を連続させて続いて---------「燕返し!」とコルニの掛け声と共に一気に襲い掛かってきた。
速い。避けられることを想定して、動作を次の次まで続けている。
しかも、燕返しは避けられない。高速で身体を切り替えし、隙を突いて攻撃するこの技は、絶対に避けることができないのである。
この高速体当たりを喰らい、仰け反るワカシャモ。しかし、持ち前の運動神経でひゅん、とバック転して後ろへ一旦退いた。
「くそっ! ワカシャモ、ニトロチャージ!」
「もう一回、燕返し!」
炎を身に纏い、突っ込んでいくが全て無力。再び、素早い攻撃を喰らってしまった。
「は、はえぇ……!」
「どーしたの? まさか、これで終わりじゃ------ないよね!」
ルチャブルが再び地面を蹴る。
身体を捻って回転し、下から蹴り上げ、ワカシャモを上へ吹っ飛ばした。
向かう先は天井--------------
「また燕返しかよ!」
「格闘タイプに飛行タイプの技は効果抜群……弱点の技で攻撃するのは当然でしょ?」
「ああ、そうだな」
しかし、帽子の鍔をくいっと上に上げてカルムは不敵に笑った。
「だけど、嘗めてもらっちゃ困るぜ! ワカシャモ、天井を蹴ってニトロチャージ!」
吹っ飛ばされた状態から、空中で方向転換し、一気に突っ込んでいく。炎をまとって、目にも見えない速さでルチャブルにぶつかった。
小柄なルチャブルは衝撃で地面に跳ね飛ばされて倒れるが起き上がってみせる。
「さっき気付いたんだけどさ、ワカシャモの特性は”加速”! 戦っていればいるほど、だんだん脚の力が強くなって速くなっていくんだ」
「……!!」
目にも留まらぬ速さでバトルフィールドを駆け回り、翻弄していくワカシャモ。一発、また一発とすれ違いざまにキックを入れていく。
速さだけならば、とっくにルチャブルを抜いていただろう。しかし、
「相性の面なら、まだ勝ってるから! 燕返し!」
「ッ……!!」
幾ら速くなっても、身体を高速で回転させて切り返し、突っ込む燕返しだけはどんな手段をもってしても避けることができないのである。
そして、格闘タイプのワカシャモにこの技は効果抜群。飛行タイプを兼ねそろえた格闘タイプ、それがルチャブルなのだ。
だが、それでもカルムは向かっていく。
目の前の壁を越え、さらに強くなるために!
「ニトロチャージ!」
「ルチャブル、燕返し!」
止められないのならば、もっと別の方法がある。
「そのまま受け止めて、投げ飛ばせェェェ!!」
炎を纏った状態でルチャブルの両腕を掴み、衝撃を受け流すように真上へ放り投げた。「スカイアッパー!」の声と共に地面を大きく蹴り、飛び上がる。
そして、放り投げられたルチャブルを確かに捉えた。
が、しかし。
「ルチャブル、空手チョップで迎え撃って!」
流石飛行タイプ。羽根で空中での体勢を整えた後にワカシャモの拳を迎え撃つだけの素早さはある。
そして、ワカシャモの加速について行くことができるのも驚きだ。
平手と拳がぶつかり合い、弾けとんだ。
しかし、ルチャブルは続いて落下していくワカシャモへ「燕返し!」の掛け声と共に再び繰り出していく。
ルチャブルも落下しているが、上になっているこちらの方が有利だ。しかも、その際のスピードが掛け合わされて威力は数倍に跳ね上がっていることだろう。
だが、カルムも負けては居られなかった。
「二度蹴りで頭を狙え!」
見事なカウンターだった。一気に突っ込んできたルチャブルの横っ面に蹴りを確かに二発、食らわせたのだ。
一気に体勢が崩れてそのまま地面へ落ちてしまうルチャブル。「大丈夫!?」とコルニが心配そうに叫ぶが、再び起き上がってその闘志を見せた。
2匹の視線がかち合う。
共に格闘タイプでしかも鳥系ポケモン。同属同士、ライバル意識が芽生えたか。
「やるじゃん、カルム。ここまで相性を跳ね返して戦うなんて」
「そっちもな。まあ、ジムリーダーだから当然か」
「でも------------終わりにするよ!!」
キッ、とコルニの表情が変わった。
並々ならぬ気迫を感じたカルムは、何かが来ると感じる。
「ルチャブル、フライングプレス!!」
その声と共に、ルチャブルが飛び上がった。
そして、最高地点に達したと思えば、そのまま急降下してワカシャモを狙う。
「ワカシャモ! スカイアッパーで打ち返せ!!」
ワカシャモも負けじと向かってくるルチャブルのむき出しになった腹をめがけて拳を打ち込もうとする---------------
ドカッ
鈍い音が響いた後、フィールドは砂煙に包まれ、見えなくなった。
***
「あのカルムという少年。なかなかの腕前だ」
老人は2人の試合を見て、呟いた。眉毛が立派に伸びており、しゃんとした腰からは若々しささえ感じられる。
「戦いに関するスキルを心得ておるわい。これなら、メガシンカを手に入れても使いこなすのは時間の問題だな」
しかし--------と老人は続けた。
「その段階に到達するのは、まだ早い」
老人の視線の先には、ルチャブルのフライングプレスをまともに喰らって地面に倒され、戦闘不能になったワカシャモの姿があった。
「それでも、我が孫を相手に不利な条件であそこまで戦えたのは十分な素質といえよう」
老人は、ふふ、と微笑みを浮かべた。その左腕にはメガリングが嵌められていた-----------
***
「ま、負けた……か」
戦闘不能となって動けなくなったワカシャモを見下ろし、カルムは呟いた。
「戻れ、ワカシャモ。お疲れ様」
なぜか、悔しさは思ったよりもなかった。清々しい負け方、と言ったところか。もちろん、悔しくないといえば嘘になるが。
ふぅ、と息を吐き、目の前のコルニを見据えた。
「強いな、やっぱ」
「へへっ。だけど、またいつでも挑戦しに来てよ!」
結局、自分が思ったほど強くなれなかったということか。
それでも、あそこまで健闘できたのだ。まずは次に向けて考えなくては。
何なら、しばらくここに滞在してもう一度挑むと言うのもありだが。
「……とは言ったんだけど、マスタータワーの修理も手伝わないとだし。それまで再戦はお預け。ごめん、本当に!」
「いや、良いんだ」
そういうことならば仕方ないか、とカルムは再戦という考えを一度封印した。
彼女も忙しいのだ。
「次は絶対勝ってジムバッヂを貰う!」
「今度も負けないから!」
こつん、と2人の拳が優しく触れ合った。
***
シャラシティ、ポケモンセンター。
「とは言ったものの……」
カルムは溜息をついた。あんなに意気込んで言ったのにこの体たらく。テイルに何と言えば良いのやら。
と思っていたら、そのテイルはとっくにこの街からは出ていた。メガストーンの回収の件もあるからだろう。
まずは、他のジムを巡ることにした。もう一度ここに来る頃には、マスタータワーも直ってメガシンカの継承もできるようになっているだろう。
「だからまずはヒヨクシティに行かなきゃいけないわけだな」
ここからまだまだ強くならなければならない。
だが、目標がある限り、彼は進める。
もう、迷わない。
フレア団を倒すため、そしてポケモンリーグに挑戦するため。今度このジムに訪れるのはいつになるか。
ティエルノ達も先の街へ行ってしまった。追いつかねばならない。
「それまでお別れだな、コルニ」
そう呟いて、カルムはシャラシティを去った------------
後書き:最近、ポケモンの育成さえも忙しさで面倒と感じてしまっているタクです。そして、アニメのジム戦に間に合わせようとしたら結局間に合いませんでした。しかも負けオチ。ねえ、勝つと思った? 勝つと思った? さらにシャラジム再戦は結構物語の終盤にする予定です。後、バトルの終盤に出てきた老人の正体は幾らなんでも分かりますよね? さて、これからですがとりあえずヒヨクシティ編開始ですね。でもその前にアズール湾とかメェークル牧場とかのイベントも挟まないとですね。何にせよ次回はイベント回です。お楽しみに。それでは、また。