二次創作小説(紙ほか)

第七十三話:進化の獣 ( No.165 )
日時: 2014/09/28 21:44
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ヒヨクシティ。潮風が気持ち良いここ、シーサイドエリアとモノレールを通じて行くことができる丘側、ヒルトップエリアの2つに分けられた街だ。
 今まで、大きな街と街の間が離れていた反動か、今回はとても間が短かった気がする。
 それでも図鑑を埋めるために探索を行ったため、2日程かかったが。
 まずは街を見て回る。世界中から集めたお香を売っている店、木の実が置いてある無人屋台、そしてキャモメ達が飛び交うこの港。
 なかなか、この街ならではのものも多かった。港町だから色々なものが入ってくることもあり、とにかく店が多かった。
 
「さーて、このままジムに挑もうかな--------」

 と地図を見て、ジムがあるヒルトップエリアに向かおうとしたそのときだった。
 ホロキャスターに突然着信が入る。誰からだろ、と確認するとセレナからのホログラムメールだった。

『お隣さん、元気にしてる? 私はもうバッヂを3つ集めたわ。そっちもシャラジムを突破したところでしょ?』
「ごめんなさい、突破してないです」

 はぁ、と溜息をつくカルム。向こうにこの声が聞こえていないのがまだ幸いである。メールはまだ続いた。

『そういえば、博士が化石研究所の研究員の人から貰ったポケモンを、私たちに渡したいみたい。後でヒルトップエリアにあるポケモンセンター前で待ち合わせでいいかな?』

 たった今行こうとしていたばかりである。そこでメールは終わっていた。

「しかし何の用だろうな」

 そう呟いて、カルムはモノレールへ向かったのだった。

 ***

 モノレールを渡り、着いた先はヒルトップエリア。空気が若干さっきよりも薄くなったように感じられる。
 丘の上だからだろうか。
 それはそうと、まずはセレナの姿を探した。
 見れば、セレナと---------プラターヌ博士の姿が。

「遅かったんじゃない? お隣さん」
「そんなに遅れていないだろ。博士も。大丈夫ですか、あんなことがあったばかりだから」
「いや、僕の心配はしなくていいよ。それよりも、この間の化石研究所の人たちが知り合いを通じてポケモンを手に入れたみたいでね。この地方にも生息しているんだけど、どうも個体数が少ないんだ」
「化石のポケモンですか?」
「いいや、化石とはあまり関係ないかも。ただ、ポケモンの進化について大きく関係しているポケモンだからさ」

 プラターヌ博士はボールを取り出して放った。
 中からは茶色の毛皮に、犬とも兎とも似つかない容姿、そして首周りの飾り毛が印象的なポケモンだった。
 進化ポケモン、イーブイ。それがこのポケモンの名前だった。分類から確かにポケモンの進化に付いて関係があると分かる。
 尻尾を振りながら、こちらの様子を伺うようにじっと上目遣いで眺める様子は実に可愛らしかった。

「可愛い!」
「そういえば、10番道路のポケモンの中で、イーブイだけ逃げ足が速くて捕まえられなかったんだよな」

 イーブイを覗き込むようにしゃがんで見る2人。

「この子をこの間のお礼で君たちに渡したいらしい」
「お礼って、僕達フレア団を追い払っただけですから、照れちゃうなー」
「ん、待ってください。イーブイってその子だけですか?」

 セレナの言葉を聞いて、博士は「あ」と声を上げた。


「そういえば、一匹しか……貰ってないね」


 この瞬間、セレナとカルムの視線がカチ合った。

「なぁセレナ。あのメガボスゴドラに健闘したんだから、あのモフモフ……じゃなかったイーブイを手に入れるのは僕だよね? 僕意外ありえないよね?」
「お隣さんが倒れたときに介抱したのって誰だっけ? 私だよね? よってモフモフ……じゃなかったイーブイは私のものだよね?」
「ふ、2人とも、落ち着いて。しかも大体予想はしてたけど、イーブイの首周りの飾り毛が早くも狙われてる!?」
『表の広場に集合、バトルで勝った方がイーブイをゲットする!』

 2人の考えは完全に合致していたようで、台詞も被っていた。

「えええー!?」
 
 と声を上げて博士はおろおろしていたが、2人がにらみ合いながら広場の方まで並走していくのを見て、仕方なく後を追うことにしたのだった。

 ***

「バトルは3対3! 一応私はもう、パーティは6匹揃えているけど、まだスタメンが5匹しか決まっていないお隣さんのためにね」
「放っとけやい」

 セレナとは以前、マルチバトルで負けている。あのときは合体技で反則級の火力で押されてしまったが、今回はそうはいかない。
 見れば、博士がイーブイを抱えて追いかけてくる。

「はぁ、はぁ、イーブイって結構重いんだねぇ……ぜぇ。あ、ボールに戻せばよかった」
「お隣さんは私に一回も勝っていないよね?」
「マルチではな。だけど、今回はシングルのタイマンだぜ?」

 セレナのエースは恐らくハリボーグだろう。素早さで勝るとはいえ、防御に長けたハリボーグに決定打のかけるゲコガシラは不利。そして、セレナにはアブソルもいる。ニャオニクスは不利か。
 だが、一方でニャオニクスはハリボーグに有利だ。重戦車型の相手にニャオニクスなら素早い動きで翻弄できる。
 そして、ゲコガシラもどこかしらで活躍してくれるかもしれない。

「いくわよ、ニャオニクス!」
「頼んだぜ、ニャオニクス!」

 両者がボールを投げる。出てきたのは互いにニャオニクスだった。
 しかし、セレナのニャオニクスは姿形が違う。こちらのが蒼をベースとした体色に対し、セレナの方のニャオニクスは白がベースの体毛で更にジト目だ。若干、他にも相違点があるが、挙げればキリがない。

「おいおい、とんだ偶然だな」
「ニャオニクスは性別で姿が”大きく”違うポケモンなのよ。知ってた?」
「はぁ、知らなかった」
「じゃあ、こっちから行くわよ! ニャオニクス、瞑想!」

 早速、静かに心を落ち着かせて、特殊攻撃力と特殊防御力を上げていくニャオニクス。
 一方のカルムも負けてはいなかった。

「ニャオニクス、光の壁!」

 大きな透明な壁を張り、防御の体制をとるニャオニクス。さらに、特性:悪戯心の効果で瞑想が終わる前に光の壁を張り終えることができたが、できたところで別にどうというわけではない。
 そして、セレナのとる行動は変わらない。

「もう一回、瞑想!」
「くそ、ただでさえダメージが入りにくいのに! ……待てよ、これなら行けるか? ニャオニクス、サイコショック!」

 超能力で念じ球をいくつも作り、それをニャオニクスにぶつける。
 相手の防御力にダメージが依存するこの技ならば、瞑想を積まれたところでダメージは変わらない。
 もっとも、効果はいまひとつなのでそのダメージもしょっぱいままだが。

「ふぅ、そろそろ良いかしら。ニャオニクス、シャドーボール!」

 影の玉が打ち出された。
 しかし、光の壁でダメージは抑えられるはず---------そのときだった。
 玉が壁を貫通したのだ。

「--------え」

 ドゴゴ、とまともに影の玉を喰らって倒れるニャオニクス。しかも、瞑想を積んでいたため、まさに一撃必殺だった。

「な、何で」
「私のニャオニクスの特性は”すり抜け”! 光の壁やリフレクター、そして身代わりなどの効果を無視して攻撃ができるのよ」

 自分のニャオニクスの特性が隠れ特性だったので、完全に盲点だった。
 早速先手をとられて、悔しさがこみ上げる。

「だけど、こいつならどうだ!」

 確実に勝利を収めていくため、二番手にカルムは賭ける事にする----------

後書き:本日2話目の更新です。イーブイをパルレしながら今回の話の構想を考えました。イーブイの首周りの飾り毛をもふりたいと考えながら執筆していました。そのため、今回は作者の欲がダダ漏れなところがあったかもしれませんね。はい。個人的には最近はサンダースが好きです。外見としてはすらりとしたフォルムにパチパチとした体毛、そして釣り上がった瞳が良いですね。メガライボルトが出たとはいえ、メガなしであの素早さ、加えて補助技の多さでまだまだ活躍の機会は多いと思います。それに、今までも上位互換を生み出してしまっている(被害者は主に赤と青の電気ネズミコンビ)くらい種族値もなかなか高いですからね。皮肉にも今作では今まで下位互換だったライボルトに逆転される始末ですが。少し前まではブースターが好きだったんですがね。もふもふ。まあ、1ついえるのはブイズは皆可愛いと言う事で。はい。イーブイがどちらの手に渡るかは、お楽しみに。それでは、また。