二次創作小説(紙ほか)

第七十四話:モノズ、立つ ( No.166 )
日時: 2014/12/07 09:26
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「次はお前だ、モノズ!」

 倒れたニャオニクスをボールに戻し、次のポケモン、モノズを繰り出した。悪・ドラゴンのモノズなら、比較的誰が相手でも有利に動けるはずだ。
 一方のセレナは、このままでは不利と思い、交代してくるか、それとも別の技で対抗するか----------

「交代はしないわ。かかってきなさい!」

 大体、何を使うかは予想できた。
 ”チャームボイス”だ。フェアリー4倍弱点のモノズはこれを喰らえば一撃で沈むだろう。
 何故って、自分のニャオニクスも覚えていたからだ。
 だが、こちらだって策がないわけではない。
 
「ブイブイー!」

 博士の腕に抱きかかえられたイーブイが応援するように鳴いた。
 その瞬間、ハートを射止められてしまったらしい。頬がほんのり赤く染まる。そして当のカルムは何が起こったのか、全く気付いていない模様。
 モノズは自分を奮い立たせるように地面をガッガッと蹴り、一声「ギィ!」と吼えると、面と目の前の相手を見据えた。

「いくぞ、モノズ! 噛み付く!」
「ニャオニクス、チャームボイス!」

 ニャオニクスが可愛らしい声で鳴く。しかし、その音が一気に波紋となってモノズへ襲い掛かった。
 しかし、それを難無く避けてニャオニクスの首元を狙ってガブリ、と噛み付く。
 だが、威力は今までの噛み付くの比ではない。

「これはもう、噛み付くなんて甘っちょろい技じゃない、”噛み砕く”だ!」
「まずっ……!」
「そのまま上に放り投げろ!」

 強い力でニャオニクスを放り投げるも、空中で超能力を使い、ニャオニクスは静止した。
 何とか一安心、と息をついたセレナとニャオニクスだったが---------突如、ニャオニクスは首筋に痛みを感じて、バランスを崩してしまう。

「倒れなかっただけまだ良いけど、次の一撃は耐えられないはずだ! 龍の息吹!」
「くっ、ニャオニクス、チャームボイス!」

 しかし、痛みでもう声を発することもできず。そのまま、濁った龍の吐息がニャオニクスを包み込み、次の瞬間には地面に落下していた。
 完全に戦闘不能だ。
 ニャオニクスをボールに戻し、溜息をつくセレナ。

「仕方がないわね。何なら次はアナタよ、ハリボーグ!」

 セレナが二番手に繰り出したのは、ハリボーグだった。
 重厚な装甲に身を包み、トラックさえも跳ね返すパワーを持つこのポケモンに、どう対抗すれば良いか。

「まずは、押してみるぜ! モノズ、龍の息吹!」

 濁った吐息がハリボーグを包み込むが、難無くそれを受け止めてしまう。
 そして、腕を振り回したかと思うと、一気に腕から棘が生えた。そして、その棘が次々にミサイルのように飛んでいく------------

「ミサイル針!」

 まずい。悪タイプに(実は)虫タイプであるこの技は効果抜群だ。
 モノズは驚いて足がすくむが、応援しているイーブイの顔を見て、その場を飛び跳ね、針を避けてしまった。
 
「おおう、今日のモノズは何か妙に動きのキレが良いな!」
「むぐぐ……」

 悔しそうにセレナは唸ると、ハリボーグに「次、当てにいくわよ!」と激励した。
 対するカルムは調子を上げていき、モノズに指示を出す。

「今度は勝たせてもらうぜ! モノズ、噛み砕く!」

 再び、ハリボーグの喉を狙って噛み付きに行った。

「ニードルアームで防ぎなさい!」

 警察犬の噛み付き訓練に付き合うトレーナーのように、腕を守る棘を出してモノズの顎を遠ざけようとするハリボーグ。
 
「そのまま、宿木の種!」

 腕から宿木の種を射出し、モノズへ絡めさせた。一瞬で宿木はモノズの身体全体を包み、力を失ったモノズはその場に倒れこんだ。
 めきめき、と宿木がモノズの身体を舐めるように体力を吸い取っていく。

「まずい……!」
「しかも、この宿木で奪った体力は全てハリボーグの元に行くから」
「だけどよぉ……何となくだけど」

 カルムは不敵な笑みを見せた。


「感じるんだ。今日のモノズは一味違うってな!」


 何が原因だか知らないけど。
 まあ、1つだけ言えるのは。

「このまま、無理矢理押し切る! モノズ、宿木を食いちぎれ!」
「なっ!?」

 メキ、メキメキメキ、と音を立てて固くなった宿木が千切れた。
 そして、次の瞬間には完全にその宿木からモノズは開放されていた。

「今だモノズ! 噛み砕く!!」

 ガァッと大きな口を開けて再びハリボーグへ牙を立てるモノズ。すかさずニードルアームで防御するハリボーグは、そのままモノズを地面へ叩き付けた。

「ハリボーグ、転がる攻撃!」

 ハリボーグは身体を丸めて、砲弾のように転がり、モノズを押し潰そうとした。
 ごろごろと勢いつけて回転していくそれは、止まることを知らない。
 しかし。

「飛び乗れ!」

 すかさずジャンプして回転したハリボーグの上に乗り、玉乗りのように逆に転がしていく。
 そしてハリボーグが向かった先は、広場の大木だった。
 大木が折れることはなかったが、代わりにハリボーグは回転が止まり、そのまま立ち上がった。
 そしてギリッ、と歯軋りしながらモノズを睨みつけた。

「へへっ、どんなもんだ!」
「強くなったじゃない、お隣さん。でも、まだまだよ! ハリボーグはまだ戦える! ミサイル針!」
「龍の息吹で燃やし尽くせ!」

 濁った炎はミサイルのように射出された針を全て燃やしつくし、そのままハリボーグへ。
 息吹がハリボーグを包み込み、燃える。
 そして、ハリボーグは力尽きたように倒れた。

「よし、やったぜ!」

 と、カルムがガッツポーズしたそのときだった。「……ミサイル針!」の声と共に、最後の力を振り絞ったハリボーグが背中から大量の針を飛ばしていく。
 油断していた。
 その針を一気に喰らったモノズは、悶絶した表情を見せ、倒れた。
 そして、針を飛ばしたハリボーグも、ガクッ、と白く燃え尽きたボクサーのようにうつ伏せに倒れた。
 共に、戦闘不能だ。

「頑張ったな、モノズ。ゆっくり休んでくれ」
「貴方も十分がんばってくれたわ、ハリボーグ。後はこの子に任せて」

 そういって、互いに最後のボールを握る。

「ゲコガシラ、お前の出番だ!」
「アブソル。頼んだわよ!」

 災いポケモンのアブソル。最後に見たのは10番道路以来だが、そのパワーは侮れない。

 --------何せ、鎌鼬でポケモンを2体同時に倒しちまったもんな。

 はぁ、と溜息をつくカルム。苦しい戦いなんて、最初から承知だ。最後は最近活躍させてやれてないこいつで挑む。

「このアブソルは私のパートナー。今までに何度も助けてもらったわ」
「なるほど。道理で強いわけだぜ」

 笑うセレナに、余裕の笑みで返すカルム。だが、それは焦っていることを隠しているのに過ぎない。

「ゲコガシラ、電光石火!」
「アブソル、サイコカッター!」

 地面を蹴って突っ込んでいくゲコガシラを、アブソルが刃に溜めたエネルギーで迎え撃とうとする。
 最終戦は、今、始まった。