二次創作小説(紙ほか)

第七十六話:VSヒヨクシティジム パート1 ( No.170 )
日時: 2014/11/15 17:19
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ***

 セレナと別れた次の日。

「もう少し間を置いてもいいかな、とは思ったけど」

 カルムは呟いた。新たな手持ち・イーブイを手に入れ(セレナも後から送られた方を手に入れた)とうとうヒヨクジムに挑むつもりなのだ。
 さて、ここでスタメンの確認である。
 まず聞いた話によればフクジは草タイプのエキスパートらしい。
 そしてカルムの手持ちにはワカシャモという草タイプに有効打を思いっきり突けるポケモンがいる。
 こいつを選出しない手は無い。
 そしてバトルは3対3の形式らしい。
 そこで残りはモノズとニャオニクスを選出することにした。
 ヒヨクジムの入り口は山に掘られた洞穴のようだった。
 意を決して中に足を踏み入れる。
 
「わーお」

 思わず口を開いた。
 そこには縦に長く伸びた巨大なアスレチック・フィールドが展開されているではないか。
 それもロープやネットは蔦で編まれた天然のものである。
 すると前の方から老人の声がした。
 ジムリーダー・フクジがカルムの前まで歩み寄ってきたのだ。

「ふぉっふぉっふぉ、少年よ。よくここまで来たな。この広大なフィールドはわしが若い頃に設計したものだよ」
「わーお」

 もう一度口をあんぐりさせて言った。
 何この人すげえや。
 とか思っているうちに審判と思われる男も現れる。

「今回はこのアスレチックフィールド”全体”で戦って貰います。ルールは3対3のシングル。良いですか」
「ぜ、全体!?」

 思わず絶叫するカルム。
 この広大なフィールドを駆け巡れと言う事だろうが、余りにもぶっ飛んだ発想だろう。

「そしてチャレンジャーはポケモンと共にこのフィールドを移動、一方のジムリーダーは音声を発する無線ユニットを飛ばして最上階の部屋から指示を出して貰います。昔はフクジさんもポケモンと一緒にこのアスレチックで移動することになっていたのですが」
「最近は体にガタが来てしまってな。そこでミアレシティの電気タイプの天才・シトロン君に頼んで離れた場所からでもポケモンに指示ができるようにそれを作って貰ったんじゃ」

 こんこん、と自分の腰を叩くフクジ。体が老いて体力も落ちてしまったのだろう。
 そして電気タイプの天才・シトロン。似たような肩書きを前に聞いたことがある気がする。そして、ミアレジムのジムリーダーだったはずだ。
 ちなみに飛行ユニットを破壊したら反則で失格らしい。まあ薄々気づいてはいたが。

「電気タイプの天災……ですか」
「いや、字が違うぞ少年」

 ***

『それでは始めるぞ』
 
 目の前を飛ぶ飛行ユニット。そこからフクジの声が聞こえた。

『まだ名を聞いていなかったな。少年、名乗ってみなさい』
「カルム。アサメタウンのカルムです!!」
『良い声じゃ。では、行くぞ』



フクジ:ヒヨクシティジムリーダー
『今なお 花を 咲かせる 老樹』



 円盤状の床全4層からなるバトルフィールド。
 4層目にはフクジがいる小部屋があるため、その下の層3つを移動して戦うことになる。
 現在、カルムは第3層にいる。
 そして飛行ユニットも同じだ。ちなみに、この飛行ユニットにはカメラがついており、これを通してフクジは指示を出すらしい。

『行け、ワタッコ!』

 上の方からボールが放り投げられ、そのまま割れた。中からは綿草ポケモン、ワタッコが現れる。
 ワタッコは丸っこい体の上と左右に大きな綿をつけている。そして風に乗ってふわふわと飛ぶのだ。
 このジムの通気口から流れる空気がそのまま風となり、ワタッコが飛ぶことができる最高のフィールドとなるのだ。

「よし、まずはお前だニャオニクス!」

 図鑑を見た限り、ワタッコは飛行タイプも併せ持つ。接近戦は不利だ。そのため、飛び道具を持つニャオニクスならば有利だろう。

『こちらから行くぞ。ワタッコ。下に滑空してタネマシンガン!』

 と、意気込んだそのときだった。いきなり今までの階層からふわりと飛び降りたかと思えば、ワタッコは風に乗り、そこから大量の種を口から吐き出してくる。
 それも、円盤状の床の外側からだ。
 それは正にマシンガンのように、乱射されニャオニクス目掛けて飛んでいった。
 
「リフレクター!」

 特性:悪戯心のおかげで先制して物理攻撃を遮る壁を張り、何とか凌ぐ。
 そこから反撃----------ではなく、

「ニャオニクス、とりあえず逃げるぞ!」
『ほほ、円状のこのフィールドにおいて、場外攻撃を仕掛けられるワタッコから逃げることができるとでも思っているのかな?』
「下だ! 下!」

 加えて、ワタッコはかなりスピードも速い。当然、それは敵を追撃するときにも役立つ。
 ニャオニクス目掛けて一直線--------と思いきや、カルムとニャオニクスは蔦を滑り降りて下の階層へ。
 さて、ここで痛くなってくるのがルールだ。トレーナーもポケモンもネットに落ちたら、それぞれ即失格・瀕死扱い。そしてこのフィールドには多くのネットが張られている。それを飛び越えるにはジャンプするか、ぷら〜んとぶら下がったロープでイッツ・ターザンジャンプをやらないといけないわけだが、ここで困ったことがあった。
 ショウヨウジムで証明されているように、カルムはこの手の運動が苦手なのだ。走るのならばまだしも、握力・そして腕力が貧弱貧弱ゥ! なのだ。

「どーすんだ、これぇ!!」

 たたた、と駆けていく中、カルムは絶叫。そんな中、回り込んだワタッコが綿の胞子を吹きかけてきた。
 が、逆に言えばこちらから待ち伏せする手間が省けたということだ。

「ニャオニクス、サイコショック!!」
『むっ』

 くぐもった声が追いかけてきた飛行ユニットから聞こえた。
 大量の念じ球がワタッコへ襲い掛かったのだ。
 しかし、ワタッコの速いこと速いこと。全て避けてしまった。

『その程度、わしが指示を出すまでもないわ』
「くっ……」

 カルムとニャオニクスは身構えてリターンダッシュする3秒前。

「さあ、ワタッコ! 宿木の種じゃ!」

 プッ、とワタッコの口から種が飛ばされた。それはすぐに発芽し、ニャオニクスの体に絡み付く。
 この技は見たことがある。パルファム宮殿の大会で、ナツトキと戦ったときだ。

「くそっ!」

 歯軋りをする。目の前のワタッコの強みは何よりも速さだ。攻撃技ならばまだ壁で防げるが、補助技はどうしようもない。交代しても良いが、ワカシャモもここで余り消耗をさせたくない。
 異質なバトルフィールドにルール、そして素早い敵。技は避けられて当たらない。
 カルムは気づかないうちにどんどん不利な状況へと落とし込まれていたことに気づいた-----------