二次創作小説(紙ほか)

第七十七話:VSヒヨクシティジム パート2 ( No.171 )
日時: 2014/11/15 21:34
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 滑空しながら場外攻撃を仕掛けるワタッコは強敵だ。しかも、今のニャオニクスは宿木で体を縛られて動けない。

『ワタッコ、種マシンガンじゃ!』

 急降下したワタッコはそのまま大量の種を吹き出す。
 動けない的に大量射出されたそれは容赦なくニャオニクスの体を狙っていく。
 しかし。種の動きが止まったのがフクジには見えた。

「……こいつがエスパータイプだってこと、忘れちゃ困りますよ!」
『念力で種マシンガンの種を止めたか』
「そのまま、サイコショックで叩きつけろ!!」

 サイコショックは空気中の塵を固めて念じ球にし、物理的なダメージを与える技。
 やはりと言うべきか、種も一緒に念じ球となり、そのまま大量に作られたそれが、今度はワタッコの体を狙っていく。
 しかし、その動きの素早いこと素早いこと。
 全てそれらを避けてしまったのだ。

『危なかったぞ、流石に今のは。だが、今すぐ撃ち落してやるぞ』

 再び乱射される種マシンガン。流石に危険を感じたのか、カルムはさっきと逆の方向に逃げた。
 その中、カルムはふと目に留めた。
 ワタッコが先ほど乱射したと思われる種を。

『おっほっほ、時間の無駄じゃよ、そんな追いかけっこをしても』

 しかし、とうとう観念したのか、カルムとニャオニクスはワタッコの方に向き直った。
 フクジは笑みを浮かべ、叫ぶ。

『種マシンガンッ!!』
「サイコショック!!」

 一瞬、フクジは怯んだ。こちらの攻撃に合わせてサイコショックを撃ってきたのだ。仕方があるまい。攻撃を一時中断して、念じ球を避けることに専念する。
 が、そのときだった。
 ワタッコの体が大きくぐらついた。
 それも後ろから何かの攻撃を食らったかららしい。
 しかし、後ろには何も居ない。
 そして、怯んだワタッコにカルムが追撃を掛けた。

「ニャオニクス、サイコショック!!」

 普段ならば避けられる。
 しかし、前方、再三にわたる後方からの攻撃にワタッコは全身放火を食らった。
 そして、決して高くない耐久のワタッコはそのままダウン。
 飛行ユニットが持ったモンスターボールのビームに当たり、そのまま中へ戻った。

『……なるほど。後ろに落ちていた種マシンガンを利用して攻撃したわけじゃな』
「ニャオニクスのサイコパワーだと、普通ならば今みたいな攻撃であれほどのダメージは与えられません。遠い距離の塵を固めることはできませんから。ですが、その点ワタッコの種を集めるだけならば簡単です」
『ほっほっほ、近頃の若いもんの柔軟な発想には驚かされてばかりじゃわい。だけどのう……』

 と、そのときだった。ニャオニクスがいきなりバッタリ倒れてしまったのだ。
 
『わしのワタッコの宿木の種は、ちょいとばかしお前さんのニャオニクスにはきつすぎたかの』
「--------!!」

 何という生命力だろう。宿木がニャオニクス程度の体力を完全に吸い取るのにそこまで時間は要らなかったということだ。
 短期決戦に持ち込めて良かった、と安堵するカルム。
 次に繰り出したのは----------

「行け、モノズ!」

 モノズだった。
 一方のフクジ操る飛行ユニットは次なるボールを繰り出す。
 その中から象られたポケモンは、巨大な蛙のようなポケモンだった。背中には蕾を背負っており、花びらが見えている。

『わしの二番手はこいつ、フシギソウじゃ』

 フシギソウ。一見、動きは鈍そうに見えるが、どうだろうか。
 何より、このフィールドを駆け回ったりジャンプするなどの跳躍力があるのだろうか。

「先手必勝、モノズ! 竜の息吹!」
『フシギソウ、避けなさい』

 モノズの口から放たれたブレスを難なく飛び跳ねて避け----------そのまま降りてこない。
 見てみれば、蕾から伸びた蔓の鞭で下にネットが張ってある所謂”落とし穴”がある所の天井にぶら下がって、そのままぴょいっ、と距離をとってしまった。
 そして---------

『フシギソウ、ソーラービーム、撃ち方始め!』
「なっ!?」

 しまった、とカルムは気づいた。奴は十分に距離をとってから時間を稼いでフルパワーのソーラービームを放つつもりなのだ。
 急いで走っていくカルムとモノズ。今のうちに邪魔をすれば阻止することができるかもしれない、と思って。
 しかし。

『掛かったな。フシギソウ、眠り粉!』

 フシギソウはソーラービームのチャージを辞めた途端に粉をばら撒く。それを吸ったモノズの動きはだんだん遅くなり、しまいにはうとうととまどろんで寝てしまった。
 カルムも少々吸ってしまったが、何とか持ち堪える。

『吸わない方が良いぞ。お前さんまで寝てしまうからな』
「く、くそッ」
『そして今度こそ、ソーラービーム!!』

 まずい。モノズは未だに目を覚ます様子が無い。
 そのまま成す術もなく、無慈悲にビームが照射され、モノズを直撃した。
 爆音が響き、あたりに煙が立ち込める。
 しかし、それでも尚。モノズは未だに寝たままだ。

「く、そっ……」

 まるで嬲り殺しに会うかのような戦法。
 さらに、天窓を見れば快晴。光を吸収して光線を放つソーラービームは、ほぼノーチャージで繰り出せるのだった。
 慌てて戻そうとする。しかし。

『フシギソウ、ソーラービームじゃ』

 光線が射出された。
 2撃目を食らったモノズはとうとう起きず-------というか戦闘不能になっており、仕方なくカルムはモンスターボールを取り出した。

「……ありかよ、こんなの」

 悔しげに言ったカルムはモノズをモンスターボールに戻した。

『ほっほ。無闇に突っ込むからこうなるのじゃよ。それに眠り粉などによる催眠戦法は対策しとらんモンが悪い。文句は言えんぞ』
「そーですね。文句は言いませんよ。これだって立派な戦法だってことですから。でも、こいつを見てあんた、いつまでも余裕ぶっこいてられますかね?」

 カルムにはまだ、3匹目が居る。
 まだ、負けたわけではない、と自分を奮い起こし、最後の希望に賭ける。

「行け、ワカシャモ!」

 ふむ、とフクジの声が聞こえた。

『炎タイプのワカシャモか。まあ良い、速攻で眠らせて---------』
「ワカシャモ、ニトロチャージ」

 ドスッ、という音が響いた。まるで、火の玉のようになって突貫したワカシャモがフシギソウの体に体当たりしたのである。
 
『むっ、何のこれしき! フシギソウ、眠り粉!』
「ワカシャモの特性は”加速”! 一度走り出せば速度が落ちることはありません! よって、眠り粉を繰り出す前に-----------」

 
 畳み掛ける!!

 ワカシャモが一度、フシギソウの顔に拳を入れて怯ませ、そして止めの体勢に入る。


「二度蹴り!!」

 
 強靭な脚がフシギソウの体を一度、そして体に衝撃が伝わる前にもう一度炸裂した。
 効果はいまひとつといえど、これは一溜まりも無いだろう。
 筋肉が受け流せる衝撃の許容範囲を超え、そして最後に火の玉となって突貫した。

「これで終わりだ、ニトロチャージ!!」

 効果、抜群。
 燃え盛る体を植物の体で止められるわけもなく。
 フシギソウはそのままネットへ叩き落されたのだった。

『ほほう、やるのう。じゃが--------』

 そのとき、ワカシャモの体に妙な宿木が絡み付いているのが分かった。
 それも、先ほどとは違って頭を中心に絡み付いていく。

「これは---------!」
『”悩みの種”じゃよ。相手の特性を”不眠”に変えるんじゃ。ただ、この戦法とは相性が最悪じゃから最後っ屁というやつじゃ』

 これが草タイプの戦い方。はっきり言って、とても厭らしい。
 補助技をまるで蔓のように絡めていくのだ。
 またもや不利な状況で戦わされることになったカルムは、少なからず焦りを感じていたのだった。