二次創作小説(紙ほか)
- 第七十八話:VSヒヨクシティジム パート3 ( No.172 )
- 日時: 2014/11/16 12:44
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
さて、ネットに落とされて戦闘不能扱いになったフシギソウ。しかし、まだ動けるようだった。弱点の技を食らっていたにも関わらず。はっきり言って恐ろしい耐久力だ。
このまま長期戦に縺れ込んでいたら危なかった。
モンスターボールにフシギソウは戻され、回収される。
そして、3つ目のモンスターボールが上から投げられた。
『わしの3匹目。そろそろ老樹が大花を咲かせるときじゃ。行け、ゴーゴート!』
と、飛行ユニットから声が聞こえた途端、物凄いスピードで、ゴーゴートが駆け下りてくる。
それは、メェークル牧場で見せた穏やかさとは掛け離れた姿だった。
いきなりの戦闘開始に戸惑うカルムだったが、すぐさま声を発した。
「ワカシャモ、ニトロチャージ!」
『加速とニトロチャージで上がってしまった素早さはこれで封じてくれよう。ゴーゴート、ワイルドボルト!』
刹那、ゴーゴートが電気を纏い、突貫した。火の玉となったワカシャモを突き飛ばす。
間一髪、穴には落ちずに済んだが、感電した所為で脚がやられたらしい。
麻痺状態になっていないだけ、まだマシだが。
---------つーか、今までのジム戦での麻痺発生率100%だったからな。敵味方関係無く。
「草タイプのくせして、電気技まで使えるのかよ」
『さらに、これだけでは終わらせんぞ。ゴーゴート、地ならし!』
地団太を踏むように脚を鳴らすゴーゴート。その振動がワカシャモに伝わった。
体が衝撃に襲われる。さらに、脚はガクガクになって最早使い物にならないだろう。
『わしが炎タイプと当たったときの対策をしていないとでも思ったのかな?』
「さ、流石ジムリーダー……!」
戦慄を覚えたカルム。弱点を突かれるポケモンの弱点を突く。基本だが、これが意外と後々になっても役に立つのだ。しかし、まだ終わってはいない。脚は完全に封じられたが、それならば動かなくても使える技を---------ってそんなのなくね、と気づく。
「二度蹴り、ニトロチャージ、スカイアッパー、ブレイズキック……ダメだ、これじゃあ……!」
『珍しい。ワカシャモの時点でブレイズキックを覚えているのか』
「げっ、聞かれてた」
『しかも特性が加速、と来た。まあ良い、これで止めじゃ』
バチバチ、と音がした。ゴーゴートが再び発電を始めたのだ。
まずい。ここで起き上がらなければ、間違いなくワカシャモは負けるだろう。
「立て、立つんだ、ワカシャモ-----------!!」
***
ワカシャモは思い出していた。シャラジムでの戦いを。
ぎりぎりのところでルチャブルに負けたことを。
あんな屈辱はもう味わいたくは無い。
まして今度は、有利なタイプの相手に負けるなど、もってのほか。
負けず嫌い、というワカシャモの性格が、それまでに蓄えていた経験と結びつき、とうとう自身の力を次の次元へと進めたのだった。
気が付けば、ワカシャモはゴーゴートの体を片手で受け止めていた。
電撃が走っていようが関係ない。
自分の主のためか、いや自身の勝利のために、彼女は戦っていた。
そのまま、ゴーゴートを投げ飛ばして再び立ち上がった。
「ワカシャモ……!」
カルムの声が聞こえる。
そして自身の体の内側から聞こえる新たな鼓動に胸を震わせていた。
体全体が熱い。
そして、体全身からあふれ出る熱と炎。
確信した。自身がもう一度進化を遂げることを!
***
「これは……!」
『まさか、進化じゃと』
余りにも早すぎる第二の進化。しかし、あれだけの強敵との戦いを経てきたのだ。
おかしくはなかった。
次の瞬間、ワカシャモの全身を纏っていた炎が弾け飛んだ。
そこには、轟々と燃える炎を手首から放ち、凛々しくもスマートな体つきをした鳥人の姿が。
急いで図鑑を見たが、認識を弾いてしまう。
『猛火ポケモン、バシャーモ。アチャモ系統のポケモンの最終進化系じゃ。まさか、この土壇場で進化するとは……!』
「なるほど。なら、形勢逆転だっ!!」
バシャーモに進化したことで、先ほどまで負っていた脚の傷は治ったのか、さらに加速していくバシャーモ。悩みの種さえも燃え尽きたらしい。
『良いじゃろう。最後に一騎打ちじゃ! ゴーゴート、ビルドアップ。からの-------ワイルドボルト!』
筋骨隆々となったゴーゴートの体。そして、地面を蹴って電気を纏い、バシャーモへ突貫する。
しかし。一度燃えた炎に油を注げば、そう簡単には止まらない。バシャーモの意地で盛った炎は、むしろ滾りを増すだけだった。
「バシャーモ、ブレイズキック!」
カルムの声がしたコンマ数秒後。
電撃ごと、ゴーゴートの体は蹴り飛ばされ、そのままネットのある穴へと叩き落されたのだった。
***
ジム戦はカルムの勝利に終わった。ジムの扉の前に立つ2人。
「まさか、あの土壇場で進化するとはのう。若いモンにはまだまだ負けんと意気込んでいたんじゃが」
「いえ、まだまだですよ、自分も」
照れるカルム。そして、フクジが小箱を取り出した。
蓋を開ければ、そこにはバッヂが。
「ヒヨクシティジム、ジムリーダーに勝った証。プラントバッヂじゃ。受け取りなさい」
「ありがとうございます!」
ついに手に入れた3つ目のジムバッヂ。はっきり言って疲れがこみ上げてくる。
これでまだ3つ目とは。先は、まだまだ長い。
「さて、次はどの街に行くのかな、カル---------」
とフクジが声を掛けたそのときだった。
天井の照明が、ボン、と音を立てて消えた。
停電らしい。
「はて。この近くには発電所があるんじゃが、どうしたことか」
「発電所、ですか」
そういえば、思い出した。プラターヌ研究所にバーミリオンが襲ってきたときのことを。
『研究所の方も上手くやってくれたか』
戦慄が走る。
まさか、これはフレア団の仕業ではないか、と。
大分前に発電所をのっとり、そして今停電が起こった。
関連性は高いだろう。
ダッ、と踵を返してカルムは走り出した。
「ど、どこに行くんじゃ!」
「発電所に行って来ます!」
と、言って飛び出た矢先-----------カルムは足を止めた。
「何だ、これ……」
一瞬、思考が停止した。何故、これが今此処に? と。
街には、大量のミツハニーが群れを成して飛んでいたのだった。それも住人たちを襲撃しているという事態に----------
「一体、何が起こっているんだ!!」
***
「大変なことになったな……」
少年は、コンピュータのキーボードを叩きながら、そう呟いた。眉間には皺が寄っている。傍には電光ポケモンのルクシオが主人を見上げるように座っていた。
碧眼はなぞるように画面の字を追っていたが、すぐさま視線を落としてルクシオの頭をくしゃり、と撫でた。
「ごめん、君にも最近忙しくて構っていられなかったから」
カタカタ、とキーボードを打ち終わった彼は声を掛けた。
「やはり僕が直々に出向くしかないでしょう」
立ち上がった少年は言った。そして置いていた大きなリュックサックを背負った。
「今こそ、サイエンスが未来を切り開くときですから!」
後書き:というわけでヒヨクジム戦完結ですが、今度は発電所の方の騒動に巻き込まれていくことになります。というわけで次回、発電所編スタートです。後、フクジがウツドンじゃなくてフシギソウを使っているのは、ウツドンの形容に困ったからなんですよ。あれどうやって文にしろと。難しい。
フシギソウの方が案の定描写は簡単でした。駆け足のジム戦でしたが、この後の方が長くなりそうですし。最後に出てきた少年の正体は……流石に分かりますよね?
そして、参照が驚きの10000突破! ありがとうございます、いつも読んでいただける皆様のおかげです!
それでは、また。