二次創作小説(紙ほか)

第七十九話:カロス発電所へ ( No.173 )
日時: 2014/11/18 19:01
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 間一髪。フクジがカルムの手を引っ張り、ジムの中へ入れた。そして扉を閉める。
 もう少しでミツハニーの群れに襲われるところだった。
 
「落ち着くまで、もう少し此処にいなさい」
「す、すみません……」
「最近、フレア団とかいう組織が動いているという話を聞いてな。もしかしたら、それが絡んでいるのかもしれんのう」

 うーむ、とフクジが顎に手を当てた。
 彼もフレア団の事を知っていたのだ。

「しかし、正義感に任せて突っ走ってはいかん。出るにしても、まずは出所を伺わなければ……」
「そうですね、すいません」

 流石、年長者。落ち着きのある風格だ。

 ***

 しばらくしただろうか。ラジオなどで情報収集していたが、どうやらこの停電はカロス全域に広がっているらしかった。
 そして未だに復旧しない。
 
「ふむ、街の外の様子も心配だ。一応、住人は家の中に避難するように勧告が出たらしいが……」

 とフクジが言ったときだった。

 
 パリン


 音がした。何かが割れた音だ。見れば、ガラスの小さな破片が降ってくる。
 寒気がした。夥しい数の羽音が聞こえてきたからだ。

「ハニィーッ!!」

 ブゥゥゥン、と凄まじい数で襲い掛かってくる。
 これはもう終わったか、と思った。とりあえず、臨戦態勢に入る。
 バシャーモを繰り出そうとしたが、刹那。連中はエアスラッシュを放ってきてそうさせてくれない。

「まずったかな……!」
「ぐっ、わしの草ポケモンは虫・飛行タイプの奴らに対して不利じゃ、どうしたものか---------」

 外にも逃げ場は無いが---------仕方があるまい。
 とりあえず、戦場を広い場所に移すしかないだろう。
 と、ジムの扉を開けた瞬間だった。

「エモンガ、放電だ!」

 電撃が放たれた。
 危うく当たるところだったが、間一髪で避ける。
 そしてミツハニー目掛けて飛ばされたと思われるそれは、ジムへ侵入してきたそれら全部に当たり、後には黒焦げになったミツハニーの姿が。
 見れば、浮いているエモンガが後ろに居ると思われるトレーナーにピースサインを出してそのままリターンし、肩に止まった。

「てっ、テイルさん!?」

 そこには高い身長に癖のある茶髪の青年、テイルの姿があった。

「すまんすまん、ミツハニーの群れがジムに突っ込んだのが見えたからな。そしたらジムは閉まっている。するとすぐに開いてみれば、まだミツハニーの群れがいるからさっさと撃墜したわけよ、驚かせたな」
「いや、それは良いんすけど」

 困ったことに、とテイルは続けた。

「停電の影響でミアレを囲む全てのゲートが封鎖されちまってな。実は俺の知り合いの電気ポケモン使いもヒヨクシティが襲撃されていると聞いて応援に行こうとしたらしいが、その所為で来られなくなった」
「知り合いの電気ポケモン使い?」
「ああ」

 少しだけ、テイルの顔が曇った気がした。

「あいつはミアレジム・ジムリーダー。又の名を電気ポケモンの天才児」

 その名前に聞き覚えがあった。

「それって……」
「お前もこの旅の間に聞いたことがあるかもしれない。その名はシトロン」

 彼は続けた。

「下手したら俺の実力も上回るかもしれない程のポテンシャルを持つガキだ。それも、お前とは年はそんなに変わらん。ジムリーダーをやっていてもおかしくはないほど、な」

 だとすれば、何という少年だろうか。
 自分と同じくらいの年齢で既にジムリーダーをやっているなんて。

「さあ、行くぞ。13番道路、ミアレ荒野に。フクジさんは待機して街の方の安全を確保してください」
「ああ、すまないね、テイル君」

 テイルは駆け出した。カルムも後を追う。

「そういえば、マロンさんは?」
「此処に残るように指示しておいた! いくぞ!」

 ***

 13番道路、そして現在地はカロス発電所周辺。荒地の地下にはポケモンが生息しているらしく、ボコボコと地面が盛り上がった後があった。
 地面は意外にも平坦だが、砂嵐が常に吹いている。

「おい、カルム」

 テイルの声がして振り返ったカルムは、慌てて飛んできた”何か”を受け取った。
 それは、テレビでも宣伝していたローラースケートの入ったパッケージだった。

「こないだのお詫びがまだだったからな。パーティの件。あれは元々俺が誘ったものだ。あんなことに巻き込んでしまったのは、俺の責任だ」
「え、でも--------」
「どの道、これがあったら移動も楽になるだろ」

 すると、テイルも靴底を少し弄ると、すいーっと地面を滑るように走っていく。
 どうやら、底に車輪が付いているタイプの靴らしかった。
 カルムも急いでパッケージからローラースケートを取り出す。
 包装を破って、ゴミをパッケージにぶち込み、折りたたんでバッグの中に入れた。

「早くしねえと置いていくぞテメェ」
「ちょっと、待ってくださいよ!」
「おーら、とっととしろー」

 ローラースケートで滑るのは初めてだった。最初は転びそうになったが、すぐに慣れてテイルに追いつく。
 見れば、鉄パイプが道のようになっているエリアがあった。その先に建物が見える。
 とても細い鉄パイプに向かってテイルが跳ねた。

「この先が近道なんだ!」

 すいーっと、線路を走る電車のようにテイルは鉄パイプの上に飛び乗った。
 カルムも後に続く。
 はっきり言って、初めてでここまで出来るとはカルム自身も驚きだった。
 そしてパイプは坂道のように途中で急な傾斜になっていた。急にスピードが付いて戸惑っていたが、何とか滑り終えることができた。

 ***

 カロス発電所に続く地下通路。その入り口になる建物はたくさんある。しかし、今は大量のミツハニーに囲まれていた。
 
「ミツハニー、か」

 七炎魔将、中級。工作、参謀のセルリアンを思い出した。
 すると、侵入者が目に入ったからか、いざ排除とばかりにブンブン羽根を鳴らしてやってくる。

「エモンガ、放電!」

 テイルのエモンガが電撃を一気に放ち、ミツハニーを感電させる。バタバタバタ、と黒焦げになったミツハニーは地面に落ちていった。
 さて、扉に歩み寄ると電子ロックが付いているのが分かった。

「しかし、これだけの数のミツハニーをどうやって操作しているんだ?」
「確かに、そうですね」

 これだけが気がかりだった。普通、これだけの量のポケモンをこんなにも沢山動かすことは出来るのだろうか。
 と、そのときだった。

「あっれー、やっべぇーなー、発電所の鍵落としちまったなー」

 男の声が聞こえる。
 振り向けば、赤スーツを着てださいグラサン掛けた男だった。

「ふふ、だがスマートな俺はスマートに推理するのさ。鍵はここから歩いた大きな岩の前に---------」

 ガツンッ

 テイルとカルムのダブルパンチが脳天に炸裂した。
 明らかにフレア団の団員と思われるその男は、ばったりと倒れてしまった。

「あ、ありましたよ、カードキーです、テイルさん」
「とっとと入ろうぜ」

 ま、待てェェェ……。

 呪詛音のような声が聞こえる。見れば、さっきノックアウトしたはずのフレア団員が起き上がっていた。

「逃がすか、てめぇらぁぁぁ!! ゴルバット、アーボック! やっちまいな!」

 蝙蝠ポケモンのゴルバット、そしてコブラポケモンのアーボックが団員の投げたボールから現われて先回りされた。
 どうやら、倒さないと先に進めなさそうだ。

「おい、足引っ張るなよ、カルム」
「そんなこと、しませんよ」

 向き直った2人もまた、モンスターボールを手に掛ける。
 と、そのときだった。


「ランクルス、サイコキネシス」

 静かな声と共に、突如、アーボックとゴルバットの体が浮き上がった。