二次創作小説(紙ほか)

第八十話:同行者 ( No.174 )
日時: 2014/11/22 21:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

「失礼、横槍を入れさせてもらった」

 さっき降りた崖の方を見ると、時代に合わなさそうな茶色いコートに同色の帽子、そして口にはパイプを咥えた青年がいた。チッ、とライターの火を点してパイプの葉に火をつける。
 
「ランクルス、吹っ飛ばしてやれ」

 ランクルス、と呼ばれたポケモンの超能力で浮き上がった2匹のポケモンはそのまま自らの主のほうへ、文字通り”飛んで”いった。
 え、ちょ、おま---------ぎゃあああ、と断末魔が響き、下っ端の男が伸びているのが見えた。
 そして、男は自らもランクルスの超能力で浮かせてもらい、カルム達がいるエリアまで降りてきた。

「僕はクリスティ。簡単に言えば、君達の味方だ」

 クリスティは言った。
 その名前に聞き覚えがある。

「ブラック……さんの知り合いでしたっけ?」
「その通りだ。君たちの事は後日プラターヌ博士と会って知っている。そしてブラックとはフレア団を倒すという目的が合致しているため、協力している」

 テイルも頷いた。どうやら博士を通じて彼のことは少し知っていたらしい。
 彼はなかなか高身長だった。およそ190、と言ったところか。テイルより1回り高い。

「ありがてぇ、こんなところで助けを貰えるとは」
「どうも。あれから、こうも早く会うことになるとはな。さて、悪いが少々推理をさせていただきたい」

 推理? とカルムは首をかしげた。
 テイルは黙って聞いてろ、と言った。

「まず、何故これだけのミツハニーが群れを成してきたのか。発電所の入り口である建物を死守していたあたり、野生種ではなくフレア団のものと見て間違いないが------------」

 クリスティは言葉を連ねる。

「まず、先ほどミツハニーを何匹か倒したのだが、そのうちの1匹を少々調べてみた。しかし、やはりというべきかミツハニー達の聴覚器官の辺りに命令をするような音声装置が付いている訳ではなかった。どこを見ても普通のミツハニーだ。さて、これらのことから考えられることは3つ」

 1つ目は、とクリスティは続けた。

「フレア団員複数人の手持ちであること。しかし、発電所の外にフレア団員はさっきのアホしかいなかったので没」

 2つ目は、とクリスティは続けた。

「何らかの電波装置などでミツハニーの脳波を意図的に刺激していること。ミツハニーや他にアイアントなど、思考が単純で特に群れで行動するポケモンは、これらの影響を受けやすい。しかし、この方法だと1つの単調な命令しか下すことが出来ない。発電所のみならず、町を襲っているグループもいたので没。それぞれがそれぞれの任務をしていた。ここまで複雑な技術はフレア団と言えど作れまい」

 3つ目は----------

「指示の中継を、エスパーポケモンにやらせていること。その証拠に僕のランクルスがかなり強い念波が放たれていることに気づいた。それを追って此処まで来たのだ」
「なっ」
「僕の推理が正しければ、そのポケモンは発電所の中に居る。さあいくぞ」

 スタスタ、と歩いていくクリスティを見てカルムは呟いた。

「味方なのは良いとして、何か変わった人ですね」
「探偵なんだよ」
「探偵って本当はあんなんじゃないでしょ」

 胡散臭い感じはしたが、味方になってくれるなら尚心強い。

「しかし、ブラックさんと言いクリスティさんと言い、どうしてこうも素性の分からん連中ばかりなんだ? 俺らの味方ってのは」

 ***

「囲まれたな、こりゃ……」

 発電所に入ってすぐさま、赤スーツに囲まれることになるとは思わなかった。どうやら、自分たちは向こうにもかなりマークされているらしい、とテイルは苦く思った。
 かといって自分たちを倒すために力を注いでいる暇はないらしい。こっちから来たら即排除、といった感じか。

「お前たちは手を出さなくていい。今度はお前の出番だ、ジュペッタ」

 臨戦態勢に入るカルムとテイルを制止すると、ボールを投げるクリスティ。中からは人形ポケモンのジュペッタが現われる。黒い皮に口にはファスナーがついた不気味な姿だ。
 図鑑で見たら、やはりというべきかゴーストタイプ、と出た。

「おいおい、たったの3人でフレア団に挑もうだなんてたかが知れてるズラ。お前らはこの俺、『筋金入り(ハードコア)のダック』と頭の愉快なバックダンサー達がお仕置きしてやるズラ」
「おい、お前その語尾直せねえのか? 後お前、これ終わったら表に出ろや」

 『筋金入り(ハードコア)のダック』と名乗ったフレア団員の1人が笑った。もう1人が語尾に突っ込みを入れる。

「殺人トリックのように策を巡らせれば-----------たったの3人でも大きな組織を壊滅させることなど可能だ。イコール、数とは力を示さない」

 クリスティは続けた。

「まだ気づいていないのか? こうして僕が喋っている間にも、策は既に巡らせている」
「何を! ズルズキン、やっちまうズラ!」

 ダックが叫んで、ズルズキンが跳んだ。
 他の団員も自分のポケモンをけしかける。
 他にもマルノーム、ズルズキン、ニドリーノなど毒々しい見た目のポケモンが凶悪な形相で一気に襲い掛かった。
 しかし。
 敵のポケモン達の動きが止まる。それも、飛び掛った途端に空中で止まってしまったのだ。
 テイルは何かに気づいたようだった。

「これは……!」
「糸だ。ジュペッタの口のファスナーの隙間から体内の怨念が詰まった綿を糸にして吐き出させた。そうすることで糸のバリケードが完成した」

 糸は怨念そのもの。ワイヤー並みの硬度だと言う。今の間に蜘蛛の巣のように張り巡らされたと言う事だ。
 指を鳴らすと、クリスティは言い放つ。

「ジュペッタ、シャドークロー」

 ざくり、と音が響いた。ジュペッタは自分自身の糸に引っかかることはない。なぜならばそれは、元々ジュペッタの体だからだ。触れたとたんに吸収されていく。
 そして、影の爪を手から伸ばし、一気に4匹ものポケモンを抜き去った。
 バタバタバタ、と糸が消えると同時に4匹のポケモンは地面に落ちた。

「力とは知能・技術、そして純粋な腕力の3つ全てを総合したものだ。これにてQED、証明終了」

 クリスティが言った。そして次の瞬間に、糸がフレア団員達に絡みつき、即座に簀巻きにしてしまった。

「お、おいいい、放せぇーズラぁー!」

 しかし、シカトして彼は進んでいった。後にカルムとテイルも続く。
 が、カルムにフレア団員の1人が怒鳴った。

「おい、そこのガキ! ああいうガラの悪い大人ってお仕置きしてやらなきゃだめだと思うよな!? あと、この”ズラ”っていう語尾格好いいと思うズラ?」
「オーノーだズラ。お前達もうダメだズラ。逆にお仕置きされちゃったズラ。ついでにお前のその髪はズラかな?」
「つーかこいつどこの出身だよ」

 語尾を真似してやったカルムも、ダックに突っ込んだテイルもスタスタと歩いていったのだった。

「え?」

 きょとんとする団員達。
 そして、次の瞬間に、ぎゃあああ、と断末魔が響き渡った。
 糸から波紋ではなく怨念エネルギーが流れてフレア団員達に苦痛を与える。そしてばったり、とダック含める全員は倒れてしまったのだった。

「とまあ、これで力と数がイコールでは結ばれないことが証明されたわけだな」