二次創作小説(紙ほか)

第八十六話:奪還 ( No.184 )
日時: 2015/01/24 14:29
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 フーディンの背中はばっさりと3本のラインに切り裂かれており、鮮血が吹き出た。

「じ、自己再生!!」

 クロームが指示を出す。ふらふらのフーディンはギリギリのところで持ちこたえ、そのまま自身の体を再生させ、傷を一瞬で治してしまう。

「そのまま、サイコ爆弾(ボム)!!」

 切羽詰った様子で叫んだ彼女だったが、そのときだった。今度は奈落のそこから「うおおおおあああああ、俺を舐めんなぁぁぁぁぁ!!!」という咆哮と共に大の字の炎が迫る。


 ------------それは、フライゴンのナックに乗ったブラックだった。


 今度は大の字の炎がフーディンの体を焼き尽くす。
 一撃だった。
 力尽き果て、ぐらり、と今まで空中でとっていた座禅のポーズが崩れる。
 そのまま力なく、ぐったりと金網のフロアへ落下していき、ごしゃあっ、と凄い音を立てて倒れたのが分かった。

「あ、が……」

 その時。フーディンが倒れたのとほぼ同時にクロームの様子が急変する。
 ふらふら、と揺れるように動いた彼女はばったり、と音を立てて文字通り倒れてしまった。
 ローブが脱げて、緑色の髪が露になる。
 
「お、おーほっほっほっ!」

 次の瞬間、セルリアンの高笑いが聞こえた。側頭部から血が溢れてはいたが、ふらふらと何とか立ち上がっていた。
 
「この発電所をフレア団のものにすることには失敗しましたわ。ですが----------”アレ”を動かすだけの電気は送り込めましたわ。作戦は一応は成功ですわ!!」

 総員、撤収! という声と共に、下っ端たちが一斉にボールを投げた。
 そこから現れたのは蝙蝠ポケモンのゴルバット。そこから、一気に発電所のドーム状になっている天井付近にあるエリアへ飛んでいく。
 セルリアン自身もボールを投げて、中から現れたポケモンの脚に掴まる。
 オニトンボポケモン、メガヤンマ。
 赤いレンズのような複眼を持ち、凶悪な外見をしたトンボの虫ポケモンだった。
 去り際に空気の刃、エアスラッシュを放つと、そこから衝撃波が巻き起こり、怯んだカルム達は追跡することもままならなかった。
 また、空中にいたジュペッタとブラックが乗ったフライゴンが行方を阻むが、今度はゴルバット軍団の怪しい光が炸裂。
 混乱してぐらぐらと空中を彷徨うナックはそのまま、カルム達がいるフロアへブラックの「うおおおああああ」という今度は恐怖の咆哮と共に墜落。
 まあ、あの奈落にもう一回落ちなかっただけまだマシだったが。
 そしてジュペッタの方も混乱して動きがままならなくなったが、こっちはクリスティがすぐに引っ込めたので無事だった。

 ***

「だから言っただろう、カルム。こいつは今まで何度も修羅場を潜り抜けてきたんだ、撃たれても火の中から蘇ってくるぞ」
「無茶言うな」

 改めて、この2人の実力の高さをカルムは思い知った。
 ブラックとクリスティ。
 彼らはただのトレーナーではない。特に、ブラックは先ほどの状況から自分が木っ端微塵になる前にフライゴンを出し、上昇してきたのだろう。
 それも、クリスティがフーディンを追い詰めるあの瞬間まで待っていたというのだ。

「さーて、全く懲りねえなお前らも。カルムにセレナに、テイル。お前ら3人はフレア団から相当マークされてるんだぜ?」
「い、いやそうだけども」
「一応、連中も計画があるみたいでな、それが忙しくてお前らを直接襲いには来ない。今のところは、な」

 クリスティが溜息混じりに言った。心労だろうか。

「でも冷や冷やしましたよ! ブラックさん、あそこで落ちちゃうから!」

 ようやく顔色の戻ったセレナも言う。

「さて」

 とテイルがぶっ倒れて未だ目を覚ます様子の無いクロームを担いで言った。

「こいつをどうするか、だな」
「いよいよ犯罪者に見えてきましたけど」
「黙れバカルム。仮にも七炎魔将6位だ。どっかに放り込んでおくのが一番だろう」
「いや、普通に警察に引き渡せよ」

 彼女のボールでフーディンをボールに戻し、テイルは続けた。

「ちなみに俺は今、やましいことは何一つ考えていねぇからな?」
「まだ何も言ってませんけど」
「監禁・緊縛プレイとかそういう趣味は持ち合わせていねぇからな?」
「自分から誤解される方向に進んでないか、アンタ」
「ともかく、メインコンピュータのロックとかをこれで解除っ、と」

 冷や汗たらたらのテイルが自分のノートパソコンを繋げてフレア団のシステムを全て解除し、発電所のぶっとい芯に電気が再び流れ出る。流石、技術者の卵と言ったところか。
 ついでに変体の疑惑がかかったのも言うまでも無い。
 彼の名誉のために言うと、疑惑は間違いなく誤解だ。多分。
 ともかく、これで、再びカロス中に電気が行き届く。
 こうして、発電所の騒動は無事、収まったのだった----------------

 
 ***

「次は何にせよ、ミアレシティだな」

 駆けつけた警察にクロームの身柄を引き渡した後、発電所の前でテイルは言った。
 セレナが「そういえば」と挟んだ。

「ミアレの停電が無くなったってことは、プリズムタワーにも行けるようになったってことですよね!」
「そうだ。ジムにも行けるようになったのか」

 カルムが相槌をうつ。丁度いい。そこで5つ目のジムに挑めるというものだ。

「じゃあ、早速ジムに挑みに行ってきますね!」
「おいおい、もう行く気かよ……」
「ま、道中気をつけろよー、とりま俺も後で行くからよー」

 テイルが後ろから呼びかけた。
 セレナの背を追い、カルムもまたミアレシティへと駆けていく。
 砂漠の荒野の中、彼はふと呟いた。

「そういえば、ブラックさん達いつの間にか居なくなってるけど」
「ま、またどっかで会えるんじゃないか? フレア団の脅威が消えた訳じゃないけど、まずはミアレシティに行こう」

 そう、言葉を交わしながら、2人はローラースケートで荒野を走り抜ける。
 しばらくしただろうか。目の前にミアレシティに続くと思われるゲートが見えた。



「ポケモン……花のポケモン……永遠の命を与えられた、花のポケモン------------」


 カルムは突然、自分の周りの時が止まったようだった。
 振り返れば、身の丈は3メートルもあろうかという大男とすれ違ったのが分かった。
 ------------永遠の、命? 花の、ポケモン?
 そう思考する前に、彼の姿は視界から砂で隠れてしまう。

「うっそ!? 何でいきなり風向きが変わるのよ! 服が砂だらけ!」

 セレナの声など意にも介さず、カルムは消える人影を振り向きながら見つめるだけだった--------------



後書き:やばいよ。合作もあんのに、自分の作品の方が筆が進むってどゆこと。とりあえず、後で向こうのほうにも顔を出したいのですが、ぶっちゃけ持つか分かりません。体力が。でもこの作品も下げ続けているのもアレだと思ったんです、すいませんでした。そんなこんなでカロス発電所編、というかヒヨクシティ編終了です。やっと一段落ついたってところです。ストーリー的にはまだ半分も行っていない予感。
次回からはまたミアレシティ編……ですが、問題は章の名前どうするって話なんですね。だってもう、ミアレシティ編やってるし。被るし。どうしよう。
というわけで、のろのろ更新ですが、アニメよりも展開を早くしていきたいところです。当初はアニメに追いつく、が目標でしたからね。
合作のほうも顔見せないとな……。
それでは、また。