二次創作小説(紙ほか)
- 第八十七話:電脳世界に巣食う魔物 ( No.185 )
- 日時: 2015/02/07 22:47
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「---------------!!」
ミアレシティ、プリズムタワー管制室。臨時電源のみで動いていた部屋だが、いきなり主要電源に切り替わったのを見て、金髪碧眼の少年は腰を抜かした。
「停電が、収まった!?」
先ほどまでウンとも言わなかった主要電源がいきなり生き返ったので、驚きを隠せないのだ。
思わず、立ち上がり「いやったぁぁぁーっ!!」と歓声を上げるが、突然視界がぐらりと揺れる。そのまま彼はバランスを崩して椅子ごと床に倒れこんでしまった。
傍で丸くなっていたルクシオが、その音で目を覚まし主人の下に駆け寄った。
「ルク、ルク」
「……ああ、ごめんルクシオ。君にはいっつも心配かけてばっかりだね、あははは」
ルクシオは呆れたような、心配するようなそんな表情で彼の顔を覗き込む。
見るからに眠たそうだった。
「ふぁあ〜あ、最近完徹ばっかしてたからなぁ、おやすみ……」
うとうと、と視界が歪んでくる。床に寝転がったまま、
少年はそのまま意識がまどろみ、ネバーランドに旅立って-----------
「シトロン兄ちゃん、3日前から部屋から出てないけど大丈-----------ちょっとお兄ちゃん! 何で真昼間から、こんなところで寝てんのよ!!」
---------しまうということはなかった。突然響いてきた少女、それも妹の声によって。
彼女もまた金髪碧眼だが、少年よりも遥かに幼い。まだ6,7歳ほどだろうか。
シトロン兄ちゃんと呼ばれた少年は目をこすり、妹の姿を目に留めると、情けない声で言った。
「うええ、ちょっとは寝かせてよ……」
「せめて仮眠室で寝てよ、もーう!! お兄ちゃんはいっつもいっつもだらしないんだからっ!」
「だらしなっ……そ、そんなぁ、もうふらふらなのにぃ」
「ルクシオ、放電」
バリバリッ、と電撃が迸った。彼は「ぎゃひぃぃぃっ!!」と悲鳴を上げて起き上がった。
「ユリーカぁぁぁーっ! 何てことするんだよぉぉぉ! それにルクシオも!! 何で僕に電気を浴びせるのさぁぁぁ!」
「ルク」
ぷいっ、とルクシオはそっぽを向いてしまった。
ユリーカ、と呼ばれた妹は怒ったように言った。
「ルクシオだって、お兄ちゃんに遊んで貰ってないから怒ってるんだよね、あたしもだよ」
「ルク、ルク」
「そ、そんなぁ、僕だってやることはいっぱいあるのにぃ」
「ほら、そんなに眠いなら仮眠室に!」
そのまま言い返すこともままならず、仮眠室までシトロンはユリーカとルクシオに引っ張られていったのだった。
「うあああー、痛いー、引きずらないでぇぇぇ」
ぴーぴぴぴぴぴぴぴ
ぽしゅうん
データヲスベテシュトクシマシタ
ヒキツヅキホウコクヲ
***
「え? 変な音がする? コンピュータからですか?」
「ああ、そうなんだよ」
プリズムタワーのメインコンピューターを操作していた1人の従業員が言った。
シトロンとユリーカはコンピューターの方へ向かう。
「お兄ちゃん、いけそう?」
「何、僕に出来ないことはないんだ。心配しなくて良いよ」
「本当ー?」
どーれ見せてくださいー、と2時間程仮眠をとり、目の輝きが戻ったシトロンは、どこか楽しげにコンピューターを操作していたが、だんだん表情が曇ってきた。
「あ、あれぇ……? おかしいな。何でユーザーページに入れないんだろう」
「お兄ちゃん、出来ないことはないんじゃなかったの」
「い、いや、それが----------」
決まりが悪そうに返した彼は、「おかしーな」と何度もアクセスを試みた。
要するに管理をするページのことであるが、何度入ろうとしても弾かれてしまうのである。
と、次の瞬間だった。
「ピー、ビビビ、ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ」
画面が一転する。激しいフラッシュとノイズ音と共に、コンピューターには訳の分からない文字の列が並んでいた。最初はフラッシュをまともに浴びた反動か、視界がぼんやりとしていたが、だんだんそれが数列だと分かる。0と1のそのままでは意味を成さない、いや意味が理解できない二進法の数列だ。
「う、うるさぁぁぁぁい! おにーちゃん、何とかしてぇぇぇ!」
「そんなこと言われてもぉぉぉ!!」
いや、それだけではない。
数字と数字の間に、
「こ、これは」
”何か”がいる。
「そ、そんな! このタワーが急激に電気を吸収してしまっているぞ!!」
「こ、”このタワー”が!?」
いったい、何が起こっている、というのだ。
「そうだ! 何とかしてこいつを炙り出しましょう! そのためには……」
うーむ、うーむ、としばらく考え込んでいた彼だったが、すぐに
「ビリっときたあああああ!!」
と叫び、いきなり工具を取り出して部品をかき集め、すぐその場で”何か”を作り出した。
10分、20分、30分。しばらくしたろうか、彼が「完成です!」と叫ぶ。
「サイエンスが未来を切り開くとき、シトロニックギア・オンッ!!」
きらり、と彼の眼鏡が心なしか光で反射したように見えた。
その機械は大きな箱のようだったが、モニターがついている。USBケーブルをコンピュータに接続してシトロンは得意げに言う。
「名づけて、”コンピューターウイルス全駆逐マシーン”!!」
「お兄ちゃん、ネーミングセンス0だね」
ずばり、と言った。
「……とにかく、これでコンピュータに進入した何かを炙り出せます! ウイルスだろうが、なんだろうが、これを接続すればすぐに割り出せますよ! さらに、そのウイルスを解析して、即駆逐することも可能です! さあ、ウイルスめ駆逐してやりますよ!!」
「シトロン君、いつになくテンション高くない?」
「お兄ちゃんがああなのは、いつものことじゃない?」
特に、この手のコンピュータウイルスには情報のある場所に食らいついていく習性がある。
このマシン、というかプログラムはそれらが好みそうな偽の情報を流し、ウイルス等色々釣り出すことが出来るのであるが、
「あれ、何か機械から変な音が-------------------」
***
プリズムタワーは輝いていた。
ただし、めっちゃ点灯を繰り返しており、見るだけで目が痛くなる、というものだったが。
カルムは目を擦った。何だこれ、と。
「ちょっと、おかしくないか、これ」
「明らかに……だってプリズムタワーって全ての照明がいつも点いているのよ」
「あ、カルタロー! セレナー!」
明朗な声が聞こえる。見れば、サナの姿がそこにあった。先に別のルートでミアレに点いていたのだろうか。
「さっき、プリズムタワーが点灯したと思ったら、ずっとこんな調子で」
「おかしいよな、やっぱりそう思うよな!?」
うーん、とサナは考え込んだ後、続けた。
「そうだ、サナの友達にシトロン君って人がいるんだけど」
「シトロン?」
「うん! 機械やインターネットとかに詳しくて、しかもこの街のジムリ-------------」
ズドォォォン
会話を遮るように突如轟音が轟いた。
……は? と3人がその方向、即ちプリズムタワーの最上階付近だが、そこから白い煙がもくもくと伸び、窓ガラスが割れたのが見える。
すぐに、何が起こったか理解が出来た。
「ば、ば、ば、ば、爆発したぁぁぁーっ!?」