二次創作小説(紙ほか)

第四話:ピカピカ争奪戦 ( No.21 )
日時: 2013/11/10 20:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

 というわけで、唐突にも始まってしまったカルムの旅。しかし、1人ではない。ポケモンがいるのだから-------------------

「いやいやいやいや!!唐突すぎるだろォー!!」
「もう、カルムったら。それじゃあ、このカロス地方のタウンマップを渡しておくわ。それと、貴方のコーヒーメーカーも入れてるわよ。くれぐれも、森や洞窟の中で眠らないようにね。」
「わかったよ。それじゃあ、僕はもう行くね。」

 玄関の前に立つカルム。サイホーンが近寄ってくる。カルムが旅立つのを惜しむように、「ぐぉ〜」と鳴いた。

「ありがとう、サイホーン。帰ってきたら旅の話をたくさん聞かせてやるからさ。」

 それを聞いて、サイホーンは再び「ぐぉ〜」と鳴いた。今度は、カルムを送り出すように。

「行ってらっしゃい!チャレンジャー!」
「うん!行ってくるよ!」

 輝かしい朝日を浴びながら、カルムは駆け出した。2つのモンスターボールを持って。




 メイスイタウンを駆け抜けたところに、鬱蒼とした森があった。そこには、サナとトロバ、そしてティエルノにセレナの4人が立っている。

「あー!来た来た、おーい!」
「あれ?君たちずっと待っていたの?」
「ええ、そうよ。」
 
 セレナがそう答えた。すると、トロバが

「僕はこの森をじっくり探索することにします。みなさんもどうですか?この森には、珍しいポケモンのピカチュウが生息しているとのことですよ。」
「さーんせーい!サナは行くよ!」

 成る程、珍しいポケモンか。ならば、賛成だった。しかし、カルムは別の地方から来たためか、そのポケモンについては知らなかった。

「賛成。僕も、付き合うよ。ところで、そのピカチュウって、どんなポケモンなんだ?」
「黄色のネズミのようなポケモンですよ。背中には縞模様がついていて、ギザギザした尻尾が付いています。ただ、生息地は少なくて、純粋な野生種はカントー地方とカロス地方にしかいないんです。」

 ならば、尚更ゲットしたくなるのがトレーナーというものだ。すると、セレナはため息をつく。

「あたしはパス。とっとと、ハクダンのポケモンジムに挑戦させてもらうわ。」
「ポケモンジム?」

 セレナは驚いたように、カルムを見る。

「あなた知らないの!?ポケモンジムってのはね、この地方に8つ存在して、そこにいるジムリーダーを倒せばバッジが貰えるの。そして、それを全て集めたトレーナーだけがポケモントレーナーの最高峰、ポケモンリーグに参加できるのよ!」
「ポケモンリーグ?ああ、それなら知ってる。四天王とチャンピオンがいるんだろ?」

 それを知ってて、なぜポケモンジムを知らなかったのか。

「じゃあ、私はとっとと行くわね。」

 そう言って、セレナは去っていった。サナは頬を膨らませていった。

「本当にセレナは釣れないんだから!」
「まぁ、いいじゃんか。ピカチュウ探しなら、僕もやろうかな。」

 ティエルノもそう言った。が、それを聞いたセレナは去り際につぶやく。

「・・・・・・そうやって、皆に釣られてやるのが一番嫌い。」

 そして、セレナの姿は見えなくなった。




「さーてと、どうする。どこをどう探しても、ピカチュウなんざ見つからないよ。」

 鬱蒼とした森の中で、ピカチュウを探して早30分。だが、出てくるのはジグザグマやコフキムシに、ホルビーぐらいだ。しかも、気付けば周りを見回すと、そこには何匹もの野生ポケモン。

「バトルは好きじゃありませんが、身を守るためならば仕方がありません。行け、フラベベ!」

 一輪ポケモン、フラベベ。本体は小さな妖精で、自分が気に入った花と一生を共にするらしい。トロバは、それを相棒にしていたようだ。

「じゃあ、僕も。行け、ヘイガニ!」

 ティエルノはザリガニのような、ポケモンを繰り出した。ごろつきポケモン、ヘイガニ。外国からやってきたポケモンで、どんな場所にでも適応してしまう生命力の持ち主。そして、ほかのポケモンを追い出してしまうなど、ごろつきと呼ばれるのはこうした所以があるからだ。もっとも、ティエルノのヘイガニは本人に似たのか、陽気で温厚な性格だった。

「フォッコ!頼むよ!」

 サナはフォッコ、そして

「行け、ニャスパー!」

 カルムはニャスパーを繰り出した。

「ニャスパー、サイコショック!!」

 カルムは、キャタピーやコフキムシなどのむしポケモンを相手に戦っている。ニャスパーは、念力の玉を一気に複数のポケモンへぶつけた。それによって、小さな爆音が響いて、ポケモンは逃げ出す。

「ヘイガニ、クラブハンマー!」

 ティエルノはバオップを相手にしていた。相手の攻撃を避けまくり、一気に渾身の一撃を叩き込む。バオップは目を回して倒れた。
 そして、トロバはジグザグマを相手にしていた。素早い動きでかく乱させられそうになったが、

「フラベベ、妖精の風!」

 見事、ジグザグマへ妖精の風が炸裂。そのまま、ジグザグマは吹っ飛ばされる。
 そして、サナはヤナップを相手にしていた。こちらも、ひょいひょいとした動きでなかなか攻撃を当てられなかったが、

「フォッコ、火の粉!」

 火の粉がヤナップの頭に燃え移り、そのままヤナップは頭を押さえて逃げ出した。




「ふぅ、何とか片付けたな。」

 帽子をとって額の汗を拭い取り、カルムは呟いた。数が多い。いつの間にか、野生ポケモンのテリトリーに入り込んだか。そう言いながら、カルムはどこで調達したのか、缶コーヒーをぐびぐび飲む。

「しっかし、出てきませんねピカチュウ。」

 トロバは、はぁとため息をついた。ふと右を向いた途端だった。一匹の黄色いポケモンが、すやすやと寝息を立てて寝ている。黄色い体毛、茶色の縞模様、ギザギザとした尻尾・・・・・・まさしく、カルム達が探しているそれだった。

「サナが捕まえるー!」
「ああ!待ってください!僕が捕まえるんですから!なんなら、バトルで決めましょう!」

 2人は向き合い、今にもモンスターボールを投げ出さんとの雰囲気、

「バッキャロォー!」

 カルムが2人に向かって怒鳴った。2人は立ち止まって振り返る。

「君たち、傍から見てみろ!浅ましいったらありゃしないよ!遊び半分で、ポケモン取り合ってんじゃねーよ!ピカチュウだって、アメタマだって、ドガースだって皆生きてるんだよ!」

 いつになく熱く語るカルム。そして-------------------

「つーわけで、二度とこんなことが起こらないように-------------------------------僕が責任もって捕まえるぜ、ヒャッホー!!」
「「結局、お前も捕まえに行くんかい!!」」

 2人の隙をついて、ダッシュ。間を通り抜けられる。しまった。しっかりとカルムの手にはボールが握られている。しかも、ピカチュウは寝ている。今がチャンスだ。

「ヒャッハー!ピカチュウはゲット確定だぜ!寝ているから、尚更だ!ほら、行けモンスターボ----------------」
「させませんよ!」

 トロバがカルムの足を掴む。カルムは盛大にずっこけた。

「あぁ、こいつ!!人の感動のシーンを邪魔するな!」

「ラッキー!サナがゲットしちゃお!」

 今度はサナが駆け出した。しかし、

「させっかよ!ニャスパー、念力でサナを止めろ!」

 カルムのニャスパーの目が光る。直後、サナの手足が動かなくなった。その場でにらみ合う3人。

 直後--------------------------- 一匹のポケモンが飛び出した。それは、芋虫のような茶色い体に、つぶらな瞳。そして大きな頭の針を持つけむしポケモン、ビードルだった。そう、虫嫌いの人間以外はパッと見て可愛いポケモンの部類に、ぎりぎり入る・・・・・・かもしれない。

「きゃー!あの子可愛い、捕まえちゃお!」

 そう叫んで、駆け出そうとするサナ。今だとばかりに、カルムはニャスパーに念力解除の指示を出す。と、同時にサナはビードルに向かって一目散に駆け出した。

「よし、トロバ。この際だ。どっちが、ピカチュウを捕まえるか、勝負だ!」
「勝ったほうが、ピカチュウを手に入れる権利を持つわけですね。良いでしょう。ポケモンずかんを完成させるのは、僕の夢。故に、そのためならば何だってやります!」

 両者、眠っているピカチュウを起こさないように10メートル程離れ、向き合った。

「行け!ニャスパー!僕たちの力、見せてやろうぜ!」
「フラべべ、前の戦闘で疲れているのは互いに同じ条件です。ならば、勝つ確率はイーブン、対等です!」

 こうして、2人のバトルが始まった。


後書き:はい、今回はハクダンの森回でした。後半、少しギャグを入れました。人を諭しておきながら、自分だけ甘い汁を吸おうとするパターンですね。あとは、ゲームでトロバとバトルするのは、結構先なのですが、今作ではここで初めて戦うことになります。ピカチュウを賭けて。さて、どうなるかはお楽しみに。