二次創作小説(紙ほか)
- 第五話:それぞれの行方 ( No.22 )
- 日時: 2014/08/25 11:32
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
「フラベベ、妖精の風!」
旋風が吹いた。ニャスパーは、危うく飛ばされそうになる。妖精の風は、フェアリータイプの技では下級クラスだが、それでもまだレベルがあまり高くない、カルムのニャスパーにとっては、脅威そのもの。さらに、
「続けて、つるのムチ!」
今度は、フラベベの掴んでいる花から、つるが飛び出した。足を取られて転ぶニャスパー。しかし、近接戦をニャスパーに挑んだことは、間違いだった。
「ニャスパー、念力でつるをほどけ!!」
そう、ニャスパーには自慢のエスパー技があるのである。
「フラベベのつるをほどいた!?」
「よし、ここからだ!」
「しかし、レベル以上の技を使うポケモンがいるとは、驚きでした。」
「レベル以上?わりーな、僕のニャスパーは最初っからこれを覚えていたよ!」
最初から?ならばこのニャスパーの潜在能力は自分が思っているよりも、遥かに超えているということか。
まぁ、もっともまだ断定したわけではありませんけど。と、トロバは頭の中で付け加える。しかし、勉強の一環で多くのポケモンを見てきたトロバにとって、やはりニャスパーの動きはなかなかのものだった。それを今、自分は現実で目の当たりにしている。だが---------------------------今は、”倒すべき相手”だ。
「フラべべ、妖精の風!」
再び、風を巻き起こす。ニャスパーは、地面に張り付いて必死に耐えるが、敢え無く吹っ飛ばされた。
(僕が言えた話じゃありませんが、やはりトレーナーの腕は未熟。やはり、勝率はイーブンですね。)
ところが。
「ニャスパー、サイコショック!!」
ニャスパーの周りに念じ玉が現れた。同時に、フラベベへ襲いかかる。フラベベは、モロにそれを食らってしまった。
「くっ、やはり強い・・・・・・!」
トロバは唸った。向こうの地方では、友人との間でバトルを繰り返してきたカルムだ。そう簡単にはやられない。
(面白い……!やっぱりこうじゃなきゃな!)
一方のカルムも焦りを隠せなかった。そろそろ、決めなくてはまずいか。しかし、決定打をなかなか与えることはできない。再び図鑑を見るカルム。
「一輪ポケモン、フラベベ。タイプはフェアリーか。だけど、これだけじゃあ、決定打がない。ん、待てよ。」
カルムは、図鑑のフラベベの欄の一文を見る。
”きにいった はなを みつけると いっしょう その はなと くらす。 かぜに のって きままに ただよう”
「よし、勝機は掴めたぜ!」
それを見ると、自信たっぷりにそう、呟いた。
***
「皆〜!どこに行ったんだよぉ〜!」
ティエルノはその頃、皆とはぐれており、どうにか合流しようとあたりをうろついていた。
そもそもの原因は、あのあとにピカチュウ・・・・・・のようなものを見つけ、追ったところ、それはピカチュウではなく、毒蜂ポケモンのスピアーだった。スピアーは、両手の針をふるってくるも、すぐに逃げたため、無事ですんだ。しかし、この辺にスピアーの巣がないとも限らない。非常に危険だ。と、思ったその時だった。
「キャァー!助けて!」
少女の声。それも、妙に甲高いのは--------------------------------サナだ。声の方へ向かうティエルノ。見れば、サナがスピアーの群れに囲まれているのが見えた。
「ヘイガニ、バブル光線!!」
連れ歩いていたヘイガニに指示を出す。ヘイガニは、ハサミを振り上げて、泡を吹き出した。カルムのケロマツが出すような、やわな泡ではない。勢いよく、それは一体、二体と倒していく。
「ティ、ティエルン!?」
サナがいつものあだ名で、自分を呼ぶ。
「サナ、今のうちに逃げるんだ!」
「う、うん!!」
そうこうしている間に、スピアーは軍勢を立て直してきたが、何とか一目散に駆け抜けたことで、無事に終わった。
***
「へっ、トロバ!このバトル、僕の勝ちだ!ニャスパー、念力で木を力いっぱいに動かせ!」
頷いたニャスパーは、目を光らせてフラベベの背後にある木を、うちわのように動かした。空気のエネルギーが巻き起こり、そして旋風ができる。
「ま、まさか……!」
恐れていた事態が。今日の天気からは考えていなかった事態がトロバの頭をよぎった。
「フラべべ自体の大きさは小さく、それに比例して体重も非常に軽い。そして、図鑑にはフラベベが風に任せて漂うって書いてあった。これが、何を表すか、わかるかな?」
カルムの言葉で、トロバは我に返った。そうだ、つまり、ここから考えられる1つの結論。それは--------
「フラベベは、吹き飛ばされる……!!」
だった。フラベベの身長は、わずか0.1m。そして体重も0.1g。いつもは見方につくはずの風が、逆に追い風となってフラベベを上空へ吹き飛ばした。つまり、もう身動きは取れず、フラベベは風によって束縛された。
「今だ、ニャスパー!!サイコショック!!」
念じ玉が、一気にフラベベへ襲いかかる。そして------爆発した。
***
「くっ、戻れフラベベ。・・・・・・僕の負けです。」
「楽しかったよ、トロバ。君はバトルに興味がないって、言ってたけど強いじゃん。」
「……これを機に、1つ考えたいと思います。」
「ん?」
トロバは続けた。フラベベのモンスターボールを握って。
「カルム君が、極めたいバトルは、相手を倒すためのバトル。要は、普通のトレーナーとしてのバトル、ですよね。」
確かに。普通のトレーナー同士のバトルとは、相手のポケモンを結果的には倒すためにだ。
「でも、それだけじゃないと思うんです。」
「そうなのか?」
「僕は、ポケモン図鑑を全て埋めることが目的。相手を倒すためのバトルは得意じゃないけど、”ポケモンを捕まえるためのバトル”なら極められそうな気がするんです。」
”捕まえるためのバトル”、か。
「やっぱり、向いていませんからね。ただ、逃げてるだけなのかもしれませんけど。」
自身なさげに、そう呟いた。だけど、カルムは言った。
「良いんじゃないの?」
「へ?」
カルムは、ニッと笑うと付け加えた。
「人が何極めようかって、それは違うと思うぜ。だからさ、僕とお前の目指したいものが違ったって、それは不思議じゃない。僕は僕、お前はお前、だろ?」
そう言うと、カルムはグッと親指を突き出した。トロバは、頭の中で繰り返す。”自分は自分”か。
「今度、図鑑の数で僕と勝負してくれませんか?僕なりの、ポケモンバトルです。」
「良いよ!相手になる!」
そう言って、カルムは拳を突き出した。トロバも、コツン、と拳を合わせる。
「「次は、勝つ!」」
そう、言って。
***
「さーて、ピカチュウ捕まえるか」
見れば、運のいいことに、まだピカチュウは寝ている。カルムは、トロバの見守る中、ボールを構えた。緊張の一瞬。
「行け、モンスターボール!!」
カルムは勢いよくボールを投げた。そう、勢いよく。
「あ、あれ!?」
ボールはあさっての方向に飛んでいき、気の中へ入った。それだけならば良かったのだが。中から、羽音が聞こえる。
ブーン……。
嫌な予感がした。それは、次の瞬間に見事に当たる。現れたのは、黄色いポケモンだった。それも、羽を持ったむしポケモン。そう、スピアーだ。
「ス、ス、ス、スピアー!?」
カルムは、スピアーに追われながら、一目散に駆け出した。そして、見えなくなった。
「……これ、僕がゲットしても良いんですかぁー。」
トロバは、逃げていくカルムに向かって叫ぶ。すると、「勝手にしろぉー!! いってえええ刺されたぁー!!」と声だけ帰ってきた。
「じゃ、お言葉に甘えて」
ピカチュウの額に、こつんとボールを当てた。ピカチュウは、寝たままボールに入り、カチッと音がしたあと、トロバの手持ちになったことを表した。
「ピ、ピカチュウゲット……です」
まさか、手に入らないと思っていたものが手に入ったのだから、トロバの反応は意外そうなものだった。
***
---------------------ちなみに、カルムは刺された痕を、合流したサナとティエルノに治療してもらい、その後、トロバも加わった。そして、出口前でハリマロンを野生ポケモンと戦わせていたセレナも加わって、全員が合流したのである。
「い、いてぇ……。」
まだ、カルムは刺された痕が痛む。
後書き:はい、というわけでゲーム通り、ピカチュウはトロバの手持ちとなりました。いよいよ、次回、ハクダンシティに到着です。お楽しみに。ていうか、結局カルムは何もゲットできませんでしたね。ま、それは置いておいて。そろそろ、オリキャラ募集始めようと思っています。まあ、ハクダンシティ編が終わったあとくらいですかね。
それでは、また。