二次創作小説(紙ほか)

第七話:ポケモン勝負の極意 ( No.40 )
日時: 2013/11/16 22:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

 突如、始まったテイルとカルムのバトル。カルムは、ニャスパーを繰り出す。一方のテイルは、デデンネを繰り出した。非常に小柄で丸っこく、体長は20㎝ほどしかない。ニャスパーは二倍の40㎝で、結構な差だ。

「先手必勝!デデンネ、体当たり!」

 何だ、体当たりか。その技なら、ハクダンの森で見かけた。あまり、強い技ではない。

「ニャスパー、回避!三時方--------------------------------」

 と言いかけた途端、目を疑う出来事が起こる。目の前で、デデンネが消えたのだ。視界から、デデンネを見失ったカルムとニャスパーは、きょろきょろと辺りを見回そうとした------------------が、次の瞬間。ニャスパーは吹っ飛ばされた。直後、消えていたデデンネの体が再び現れる。

「なっ!?」
「デデンネは最初から、直進していたんだ。どこにも行ってねーよ。ただ、余りにも、コイツのスピードが速すぎて、お前の目に追い切れないだけ。ってこと。」

 ま、速すぎて俺の目にも追えない訳なんだけどね。と続けるテイル。デデンネの素早さが、どれほど異常なのかが分かる。ニャスパーは、吹っ飛ばされはしたものの、何とか立っていた。しかし、あれほどの速さで突っ込まれれば、それ相応のダメージは受ける。

「何も小細工してるわけじゃねえ。ただ、言えるのは1つ。これが、ポケモンにおける、レベルの違いって奴よ。」
「小細工・・・・・・なし!?」

 攻撃力、素早さ、防御力。全ての面で、テイルのデデンネはカルムのニャスパーを上回っていた。

(セレナは・・・・・・!こんな人が使うポケモンを、倒していったのか!!)

「そーいや、さっきバッジケース渡したセレナって奴も、ニャスパーを使っていたな。まだレベルが低いとはいえ、俺の”もう一体の”エモンガ倒してしまったしな。」
「も、もう一体!?」

 ということは、今テイルの肩に止まっているエモンガと、さっきセレナが戦ったエモンガは、別個体ということになる。つまり、テイルはエモンガを二匹所持していることになる。

「いっとくけど、今俺の肩に乗っかっているのは、俺の相棒で、超強い。お前らのポケモンじゃ太刀打ちできないほどのな。俺は、別の地方に住んでいる同じ種類のポケモンで、能力に差がでるのか?というのをテーマに研究してるんだ。セレナのニャスパーと戦わせたのは、カロスで捕まえたばかりの個体。とはいえ、”ああも簡単に”やられるとは、思ってなかったぜ。」

 自信たっぷりに言うテイル。それを聞いていたカルムは、武者震いすら感じる。この人は、相当な強者だ。今使っているポケモンのレベルこそ低いが、この人が本気のメンバーでぶつかってきたら、今の自分たちでは勝負にならない。
 しかも、ポケモンの強さとは、ポケモンの経験のみで決まる者ではない。トレーナーの実力も問われるのである。今戦っているデデンネも、決してニャスパーと強さは離れていないはず。にも関わらず、苦戦を強いられているのは、彼のトレーナーとしての実力が高いからだ。
 そう、推測したカルムは速攻で決めに行く。

「やるんだ!ニャスパー、サイコショック!」
「無駄だ。デデンネ、パラボラチャージ!!」 

 直後、紫電一閃。電撃が迸る。念じ玉をすり抜けて、一筋の光がニャスパーを貫いた。同時に、念じ玉がデデンネに炸裂。しかし直後、デデンネの体が光った。一方のニャスパーは、膝をついてしまう。

「い、一体今のは・・・・・・!」
「パラボラチャージ。電気を一気にためて、放出する技だ。しかも、余った電気で体力の回復もできる優れた技だぜ。」

 つまり、今のダメージはチャラということになってしまう。

「そ、そんな・・・・・・!強すぎる・・・・・・!」
「ポケモンはお前の都合で動いちゃくれない。お前、それ分かってんの?とどめだ、体当たり!!」

 次の瞬間、ニャスパーの腹へデデンネの体が突っ込んだ。そして----------------ニャスパーはその場に崩れ落ちた。






「俺の勝ちだ。一応、バッジケースはくれてやるけど、お前がポケモン勝負の極意が分かるまで、お前の図鑑は・・・・・・」

 ひょいっと図鑑をカルムの手から取り上げて続けた。

「俺が持っておく。」
「・・・・・・!!」

 カルムは、何も言わずにニャスパーを抱えてその場を駆け抜ける。

「おいっ!バッジケースは!」

 その言葉も聞こえなかったのか、カルムの姿は居なくなっていた。

「ったく・・・・・・。」

 呆れたように、テイルが呟くと女性の声がした。

「あら?テイル君じゃないの?」

 それを聞くと、テイルは振り向く。そこには、シャツにレギンスという動きやすい服装の女性。肩には、エリマキトカゲのような容姿の発電ポケモン、エリキテルが止まっていた。

「パンジーさん。」

 テイルは、見覚えのあるその女性の名を呼ぶ。女性は、微笑むとテイルに訪ねた。

「さっきの子は?」
「あ?新人トレーナーっすよ。ちょっと負けたくらいで、逃げ出して・・・・・・。バッジケースも渡し損ねちまったんすよ。俺、この後急用で、本当なら他の3人にも渡しときたいんですけど、何せ時間がない。」
「それなら、私が4人の新人トレーナーに、残りのバッジケースを渡せばいいのね?」

 それを聞くと、テイルは慌てたように

「だ、ダメっすよ!アンタにそんな手を煩わせちゃ・・・・・・。」
「良いのよ。どうせ、この後妹のジムに取材しに行かないといけないから。」

 仕方なく、テイルはバッジケース4枚を彼女に渡した。

「ほんと、すみませんっす!一応、これが新人トレーナー達の顔写真です!あと、これも・・・・・・あいつに届けてくれませんか。」
「分かったわ。前の取材で協力してくれたお礼がしたかったのよ。困ったときは、お互い様だから。」

 そう言って、パンジーは手を振ってテイルと別れた。




 ポケモンセンターでニャスパーを治療して貰った後、センターの中でカルムは1人、ぼんやりしていた。

「僕、ほんとにバカだよな・・・・・・。」

 勝負に負けて逃げ出した。トレーナーとして、ここまで情けないことがある者か。

「ポケモン勝負の極意・・・・・・か。」

 カルムはふと呟いた。そして、ニャスパーのボールを見つめた。

「俺・・・・・・トレーナー失格だよ・・・・・・。」

「あれ?」

 聞き覚えのある、凛とした声。セレナだった。

「セレナ。」
「私、たった今ハクダンジムのジムリーダーに勝ってきた所よ!」

 ああ、そうなのか。自分はまだ、こんなところでクヨクヨしているのか。そう思うと余計に情けなくなってくる。

「なぁ、セレナ・・・・・・・。」
「ん?どーしたのよ。元気ないよ?」
「ポケモンバトルの極意って・・・・・・分かるか?」

 挙げ句の果てには、自分で探そうともせずに答えを直接他人に求めてしまった。ダメなトレーナーだ。そう感じて、ため息さえ出る。

「う〜ん・・・・・・よく分からないわ。」


 でも、と続ける。


「それは、バトルの中でお隣さん自身が見つければ良いんじゃない?」


「へ?」

 カルムは彼女の言葉を頭の中でリピートした。

(そうだ、僕はトレーナーなんだ。情けなくたって、ダメダメだったって、答えはバトルの中で見つけるしかないんだ!)

 カルムは立ち上がった。なら、早速ジムに挑戦しに行こう。そう思って、センターの自動ドアをくぐる。

「ちょ、どうしたのよ!」
「ありがとう、セレナ!僕、ジムに挑戦してくるよ!」

 答えはバトルの中で見つけるしかない。それは、自分が今ココにポケモンと共に在り、ポケモントレーナーだからだ。ポケモンセンターを出ると、そこには1人の女性が居た。

「カルム君ね。」

 自分の名前を唐突に呼ばれ、内心驚くカルム。しかし、手渡されたバッジケースを見て、彼女が何故ココにいるのか悟った。

「私はパンジー。ジャーナリストをやっているの。テイル君が急用でバッジケースを渡せなくなったから、私が代わりに届けに来たのよ。」

 しまった。カルムはそう感じた。自分があの場で逃げた所為で、こんな人にも迷惑を掛けてしまったのだと。

「す、すみません!!僕が・・・・・・僕が逃げた所為で・・・・・・!」

 それを聞いて、パンジーは目の前にいる彼が、さっきテイルと戦っていた少年と確信した。

「別に良いのよ。負けて、逃げたくなるのは誰だって同じ。そうだ、私、これから仕事でハクダンジムに取材しに行くの。君、ジムに挑戦しに行くんでしょ?ついでに案内しようか?」
「え!?そんな!」

 だが、よくよく考えてみればカルムはジムの場所を知らなかった。

「じゃ、じゃあ・・・・・・。」

 お言葉に甘えることにした。


後書き:今回、初めてカルムが負けます。そして、セレナの言葉でジムに向かおうとします。そして今回登場した新キャラ、ジャーナリストのパンジーですね。そして、この先どうなっていくのかお楽しみに。