二次創作小説(紙ほか)

第九話:VSハクダンジム戦 パート1 ( No.42 )
日時: 2013/11/17 11:56
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「さっきも言ったように、手持ちは2対2。手持ちの交代は、チャレンジャーにのみ認められるわ。さっきも言ったように、バトルはここ、通称”アリアドスフィールド”で行うわ。それじゃあ、いくわよ!」

 ビオラは、闘争心をこめたまなざしで言った。

(ポケモンバトルの極意・・・・・・!それは、僕が戦う中で発見しまければいけないんだ!)

 相手は、初めて見る形状の虫ポケモンだった。今まで戦ってきた虫ポケモンは、いずれも芋虫のようなものか、蛹のようなポケモン、そして蝶や蜂のような形状だった。しかし、今回見たものは、今まで見たもののどれにも当てはまらない。

「先攻はもらいましたよ!ケロマツ、大ジャンプして水の波動!」

 ケロマツは、ロープを大きくしならせ、ジャンプした。このジムは天井が高いので、頭をぶつけることはなく、ケロマツは大きく飛び上がる。そして、両手を合わせ、波動の力を全神経に集中させた。が、

「でも、ジャンプしている間は身動きとれないわよ!アメタマ、フォーカス合わせて、ねばねばネット!!」
「なっ!?」

 直後、アメタマは空中でとどまっている途中のケロマツに、狙いを定めてねばねばとしたネットを飛ばす。そして、ケロマツは技を放つ前に、アリアドスの巣に掛かったバタフリーの如く、この蜘蛛の巣のようなバトルフィールドの一端に括り付けられてしまうのだった。

「ケ、ケロマツ!!振り解くんだ!」

 しかし、Gホイホイのネバネバのようにべとつく為、なかなか脱出ができない。それどころか、もがけどもがけど、どんどん脱出が困難になってくる。
 一方のアメタマは、元々水面上を自由にすべることができる体のため、スケートの要領でスイーッとケロマツに近づいていく。

「アメタマ、ベストショットよ!電光石火!」

 アメタマは、体当たりとは比べ物にならないスピードで、突っ込んでくる。ケロマツは、避けようと思っても、避けられない。

(くそっ・・・・・・!こっちは、虫ポケモンに有利な飛行ポケモンや、炎タイプのポケモンがいるわけじゃないから、相性上不利だったとしても)

 すると、テイルの言葉がよみがえる。

『ポケモンはお前の都合で動いちゃくれない。』

 次の瞬間、閃く。

「ケロマツ、戻れ!」

 咄嗟の機転で、ケロマツをボールに戻した。そして、-------------------

「行け、ニャスパー!」

 相棒を繰り出すことにする。こうやって、ネットに捕まってもボールに戻せば、問題ない。こうすれば、実質ケロマツはネットから脱出したことになる。

「あーあ、逃げられちゃったか。せっかくの、シャッターチャンスが・・・・・・。でも、エスパータイプは虫タイプに不利。それは知ってるわよね?」
「知ってますよ。だけど、相性だけがバトルじゃない!」

 そういって、カルムは再び缶コーヒーを取り出して、一気に飲み干した。本当に、いつの間に買いだめしたのだろうか。

「ひゅー、すっきりしたぜ・・・・・・さぁ、行くよニャスパー!・・・・・・あれ?」

 カルムは、目を疑った。なぜなら、出したばかりのニャスパーの足元にネバネバした何かが纏わりついているからである。

「ネバネバネットの効果は、交代してもなお続くわよ。それは、相手のすばやさを下げること!」
「嘘だろ・・・・・・でも、遠隔攻撃で攻めれば!ニャスパー、サイコショック!」

 ニャスパーの目が光り、幾つもの念じ球が現れ、アメタマめがけて飛んでいく。しかし、アメタマは素早いスピードで滑りまくり、どれも避けてしまう。

「なら、ニャスパー!自分に念力をかけろ!!」
「へっ!?」

 次の瞬間、ニャスパーは自身に念力をかける。そして、一気に浮遊した。同時に、足に纏わりついていたネバネバから脱出。

「念力で自分を浮かせて、ネバネバから脱出するなんてね。いい発想よ。でも、これならどう!?アメタマ、連続でネバネバネット!!」

 アメタマは、そう指示されると、大量の蜘蛛の巣のようなネットを噴出した。フィールドには、Gホイホイの如き罠が張り巡らされる。

「動いたら、お終いかよ!!」
「アメタマ、電光石火!」

 一方のアメタマは、ネバネバネットの上でも、華麗に滑りまくる。

「い、一体どうなってるんだ!」
「アメタマが、水上などでも移動できる理由、それは足に油が分泌されて、水を弾いたりネットを弾いているからよ。だから、どんな場所でもすべるように移動ができるのよ!」

 そうだ。アメタマは、水上ですべることができるが、その理由は足から常に油を分泌しているためである。しかも、それが水やネバネバを弾くため、どんな環境でも動き回ることが可能なのだ。現に、アメタマは自らが張ったネットの上をもすいすい走っている。

「くそっ、ニャスパー!ひっかけ!」

 カルムに指示をされ、駆け出したニャスパー。しかし、ここは蜘蛛の巣型のアリアドスフィールド。フィールド自体がネバネバしているわけではないが、不用意に動けばボヨンボヨンと跳ねてしまい、最悪足元をすくわれる。

「なら、ジャンプしながら接近しろ!」

 今度はジャンプ。ビョーンと跳ねたニャスパーは、ネットの無いところへ着地。直後、再びジャンプしてアメタマの上空から襲い掛かる。当然、アメタマは滑って避けようとした。が、

「ニャスパー、念力でアメタマの動きを止めろ!」

 ニャスパーの念力で動きを止められてしまった。そして、直後。ニャスパーは馬乗りになって、連続でアメタマを引っ掻いた。悲鳴を上げるアメタマ。しかし、


「アメタマ、振り払って!フォーカスあわせて、シグナルビーム!!」
「なっ!!」



 アメタマは、ニャスパーを振りほどき、至近距離でビームを放った。吹っ飛ばされるニャスパー。やはり、相性が悪いことには変わりなかった。しかも、フィールドの面でもこちらはアメタマに引けを取ってしまう。ぼよんぼよんと、動きづらいフィールドでニャスパーは不利。得意の遠隔攻撃も、すべてエスパータイプ。虫タイプに効果が薄いのは分かりきっていた。
 一方のアメタマは余裕そうだった。相手に与えるダメージは大きい上に、こちらが受けるダメージは少ないからだ。

「勝負あったわね!」
「まだ、分からないじゃないですか!」

 とは言ったものの、フィールド上に仕掛けられた罠の数々は、Gホイホイ改め、ニャスパーホイホイとも言わんばかりに、ニャスパーが足を踏み外して引っかかるのを待っていた。

「ここで決めてやろうかしら!アメタマ、今度こそフォーカスあわせてシグナルビーム!」

 まずい。これを食らったら、お終いだろう。一巻の終わりだ。せめて、ここは勝利してポイントは稼いでおきたい。ここでニャスパーを勝たせるには・・・・・・。

(あれ?ここで戦ってるのって、ニャスパーだけか?)

 自分も、気づけばニャスパーと共に戦っていたのだ。曲がりなりにも、自分はポケモントレーナーだ。ならば、ニャスパーの事を第一に考えて、戦わなければならないのである。

 観戦していたパンジーは、彼の目の色が変わったことに気づいた。

(気づいたわね。ポケモンバトルの極意に!)

 
「ニャスパー、念力でさっきみたいに体を浮かせられるか?」

 カルムは問うた。ニャスパーは、こくりと頷く。ハクダンの森で、短い間だったが、曲がりなりにもニャスパーの念動力は強化されていた。自分をも動かせるほどに。

「ニャスパー、念力で自分の体を浮かせろ!」

 イチカバチカの賭け。ここでネットを踏まないようにするには、これしかない。ニャスパーは、超能力を発動させ、体を浮かせる。ニャスパー程度の超能力ならば、持って1分。だが、それで十分だった。

「何をしたいのか、分からないけど、アメタマ!シャッターチャンスよ!シグナルビーム!!」
「ニャスパー、避けろ!」

 次の瞬間、言葉通り、ニャスパーの体が動いた。ビームは見事に避けられ、消えていく。

「う、嘘でしょ!超能力で、自分の体を横に動かしたって言うの!?」

 自分に念力をかけるような戦い方をするポケモンなど、ビオラは見たことがなかった。だが、同時に面白くもなってくる。

「良いじゃない!良いじゃないの!アメタマ、シグナルビーム!」
「ニャスパー、チャームボイス!!」

 新しい技。ニャスパーは、一気に空気を吸い込み、大音量で大声を上げた。ビームは掻き消されて、アメタマは見事に吹っ飛ばされた。チャームボイスは、その名のとおり声で攻撃する、フェアリータイプの技。虫タイプには普通に通用する。

「とどめだ!ニャスパー、飛び上がってひっかく!!」

 最後に、自分に掛けていた念力を解除し、大きく飛び上がるニャスパー。そして、鋭い爪でアメタマを切り裂いた。アメタマは悲鳴を上げて、落下と同時に動かなくなる。

「言っておきますけど、僕はそれと同じやつを、毎朝食らってますよ。」

 カルムは、まるで決めゼリフのように言った。が、決まっていない。

「うぅ・・・・・・!戻って、アメタマ。」

 ビオラは、悔しそうに唇をかむ。しかし、こちらも手負い。相手がジムリーダーである以上、油断は禁物だった。


後書き:はい、今回はジム戦でした。非常にアクション性の強いフィールドとなっております。アメタマは、機動力でニャスパーを追い詰めましたが、最終的にはカルムの機転で倒されます。ちなみに、アメタマがゲームでは使用しない、ネバネバネットなどを使うのは、アニメからの流用です。それでは、次回でハクダンジム戦は、完結です。お楽しみに。