二次創作小説(紙ほか)
- 第十話:VSハクダンジム戦 パート2 ( No.45 )
- 日時: 2013/11/22 07:05
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
「私の2番手、華麗にシャッターを切るのよ、ビビヨン!」
ビオラは、振りかぶってボールを投げる。中からは、大きい羽根を持つ蝶のようなポケモンだった。鮮やかなカラーの羽根、白いドットが表示された目。そして、1対ずつの小さい腕に足。
ひらひらと羽根を羽ばたかせ、まるでGホイホイのようなネットがまき散らされた下に、さらにロープのネットで構成されたアリアドスフィールドをガン無視し、微笑んでいた。
「フィ、フィールド意味ねえええええ!!」
思わずそう突っ込んだ。そもそも、カルムが飛行タイプのポケモンを連れていれば、こんなことにはなっていないのである。
「ってわけで、こっちから行くわよ!ビビヨン、まとわりつく!」
「へっ!?」
次の瞬間、ビビヨンはニャスパーの体を掴み、締め上げた。これにより、ニャスパーは身動きがとれない。直後、グギッと音がして、ニャスパーは超能力を発していないのに白目をむく。
「あら?超能力を出しているのかしら?でも、何にも起こらないわ。ビビヨン、もう一回、締め上げ・・・・・・じゃなかったまとわりつく!」
「ビオラさん、ギブギブギブ!!3,2,1、ニャスパー、ギブ!完全に気絶してるんでしょーが!!」
恐ろしいことに、一瞬違う言葉が聞こえたような気がしたが、気にせず続ける。
これで、プロレスのゴングが在れば、しゃれになったのだろうが、世の中そう都合良くできているわけでもなく、ただただ無念なボールにニャスパーを戻す際の光線音だけが響いたのであった。
「く、くそっ!骨を持って行かれたか!」
いや、ポケモンはそういう小説ではないので、ニャスパーの骨が持って行かれたわけではない。ましてや、どこかの筋肉ファイターのように戦うのではないので、割愛。
「最後はお前しかいねえ!行け、ケツマ・・・・・・じゃなくてケロマツ!!」
「ねえ、今間違えたわよね、間違えたわよね!!」
ビオラのつっこみと、ケロマツの冷たく白い視線をガン無視し、カルムは指示を出した。まずは、攻めなければ意味がない。
「まずは、一発!ケロマツ、機動戦だ!飛び上がって、水の波動!」
「シャッターを切らなきゃ、写真は撮れない!攻撃しなきゃ、相手は倒せない!アグレッシブに攻めるわよ、ビビヨン!風起こし!!」
ビオラの指示と共に、ビビヨンは大きな羽根を羽ばたかせ始める。風が巻き上がり、ケロマツは飛ばされそうになった。が、風こそ吹いているものの、間一髪耐えきりジャンプ。そして、水流が放たれる。
ビビヨンに見事、水流は直撃。ふらふらと、失墜しそうになるが、立て直す。まだ、風は巻き起こっている。さらに、
「ビビヨン、痺れ粉!」
直後、ビビヨンの羽根から無数の鱗粉が流れ出る。風に乗った鱗粉は、一気にケロマツに直撃。そして、ケロマツの体が痙攣し始める。
「な、何が・・・・・・そうか、麻痺状態!!」
「そうよ。攻撃重視のアメタマとは違って、私のビビヨンは状態異常を絡めた防御重視タイプ。その戦法は、相手を状態異常にして、その間に好き放題やってしまおうっていう戦法よ。」
自信たっぷりに言うビオラ。どうやら、戦法を相手に明かしても、なお、勝つ自身があるらしい。本から引っ張り出した知識を、フルに活用し、現在の状況を分析するカルム。このままでは、まずい。状態異常というハンディに加えて、フィールド面でも、こちらはハンディを被っているのである。不利、不利、不利。大事なことなので、3回言いました。
「く、くそっ!ケロマツ、立てるか?」
ケロマツは頷く。しかし、このままではまずいのは明確。
「どうするの?ギブアップかしら?」
「ネバーギブアップですよ!この一戦、負けるわけにはいかないんだ!」
そう言って、カルムは缶コーヒーを再び、ぐびっと飲み干した。そして、すっきりしたような顔で、ビビヨンを見据える。
「行くぞ、ケロマツ!お前はまだやれる!飛び上がって、掴み掛かれ!」
忍者の如き勢いで、飛び上がるケロマツ。しかし、ビビヨンは急上昇して避けてしまう。やはり、麻痺状態では分が悪い。
「もっとだ、もっと飛び上がれ!」
しかし、さらにジャンプを繰り返し、フィールドの壁から、さらに飛び上がる。
(なんて機動力・・・・・・!それだけなら、私が見てきた中では、麻痺状態を入れても最高クラス・・・・・・!さっき来た子も、すごかったけど、やっぱり最近の新人は強い!けど、こっちも簡単にバッジは渡さないんだから!)
すると、ビオラはさらに指示を出した。
「ビビヨン、急降下!そのまま、シャッターを切るのよ!シグナルビーム!」
光線は、ケロマツを吹っ飛ばす。しかし、ケロマツは何とか耐えきる。そして、電流が迸った。それは、ケロマツの体が痺れているということを、明確に表していた。接近しながら、さらに2度目の砲撃を至近距離で放とうとするビビヨン。この距離でシグナルビームをぶっ放されたのでは、もはやケロマツの負けは確定したと言っても過言ではない。
しかし、一方のカルムにも策があった。
(勝った!奴が接近してきた今、賭けるしかない!)
「ケロマツ、今だ!ビビヨンに掴まれ!」
次の瞬間、麻痺のしびれを表すかのようにケロマツの全身を迸っていた電流が、止まった。
「なっ・・・・・・!」
ビオラは声を上げた。つまり、ケロマツは自ら状態異を回復させたのである。
(これは・・・・・・ポケモンとトレーナーが信頼し在ってるからこそ、起こる現象!でも、あの子は実力からして、まだ旅だって間もないはず・・・・・・!)
何が起こっているのか、それはビオラにも分からなかった。おとぎ話では済まされない。
(まさか、あの子にポケモンを引き寄せる力があるって言うの!?)
「そのまま、ビビヨンをネットにくっつけろ!!」
しまった-----------------と思っても、もう遅い。ビビヨンは、ケロマツに掴みかかれたまま、地に落ちてもみ合った。そのうちに、羽根にねばねばネットがからみつく。まるで、アリアドスに捕らえられたかのように、ビビヨンの体は完全に束縛されてしまったのである。
「嘘・・・・・・!まさか、あれが仇になるなんて!」
もともと、ビビヨンが地面に落ちることを想定して作ったフィールドではない。そのため、もはや手の打ちようがなかった。
「いっけえ!ケロマツ、水の波動!」
水流が炸裂した。ビビヨンは動かなくなり、目を回している。
「・・・・・・カルム君、私の負けよ。戻って、ビビヨン。」
ビオラは、静かにそう告げた。
「貴方の見事な勝利よ、カルム君。」
ビオラは、ジムの玄関でカルムに言う。
「私を倒したトレーナーは多いけど、あんな方法で倒されるなんて思わなかったわ!また、バトルしましょ!」
「はいっ!」
カルムも、ピンチの中楽しんでいた。良い、バトルと言えたであろう。ビオラが、小さな箱を取り出した。
「これは、私に勝って、ハクダンジムを制覇した証である、リーグ公認のジムバッジよ!」
中からは、カブトムシをイメージしたような、輝くバッジが現れる。
「バグバッジよ!受け取って!」
「あ、ありがとうございます!!」
こうして、カルムは見事ハクダンジムを制覇し、ジムバッジを手にしたのであった。
「ねえ、カルム君。これね、テイル君からよ。」
ジムを出た後、ポケモンセンターでパンジーが話しかけてきた。ポケモン2匹を回復させたカルムは、興味ありげに近づく。
「ポケモン勝負の極意を、あいつが感じ取ったって思うなら渡してくれって言われてるの。ほら、ポケモン図鑑!」
それは、テイルから取り上げられていたポケモン図鑑だった。
「テイル君が、”いきなりこんなマネをしてすまなかった。”って。」
「そんな・・・・・・最後に逃げた僕の方がよっぽど悪いのに・・・・・・。」
「まぁ、その辺は気にしないで良いんじゃないの?そうそう!貴方、次はどうするか決めてる?」
確かに。ここからは、どこに行けばいいのか分からない。
「ここからは、ミアレシティが一番近いわよ。」
「ミアレシティ・・・・・・か。カロス1の大都市ですよね。観光雑誌で見たことがあります。」
「じゃあ、決定ね。あそこのジムリーダーのシトロン君は、電気タイプの使い手!数々の発明を作り出し、若き天才とも呼ばれているの!」
若き天才・・・・・・相手にするなら、相当手強い相手になりそうだ。そして、行き先は決まった。
今日は、ひとまず泊まろう。明日から、大都市ミアレシティに向けて、出発だ。