二次創作小説(紙ほか)

第十四話:群れバトル ( No.52 )
日時: 2014/08/25 11:45
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「さて、メガシンカのことを君たちにも話しておかないとね。と言いたいところだけど、トロバ君がいないからね。ちょっと、連れ戻してきてくれないかな?」

 ということだった。恐らく、トロバはコウジンタウンに向かったと思われる。そのためには、5番道路を必然的に経由する必要があるため、ポケモンを回復した後、早速カルムとティエルノ、サナとセレナの2人で手分けして探すことになった。

 ***

 5番道路、ベルサン通り。ローラースケート場がたくさんあり、多くのスケーター達で連日賑わっている。が、カルムとティエルノはそれどころではなかった。2人は、草むらにポケモンずかんを埋める目的でトロバが立ち寄っていないか、探していた。

「どこに行ったんだ?」

 そう言っているうちに、カルムは頭に違和感を感じた。自分がいつもかぶっているはずのものがない。そして、ティエルノも気づいたように言った。

「カルム君、帽子がないよ?」
「……え」

 次の瞬間、見据えれば赤い耳と手足をした、ネズミのようなポケモンが走っていく。図鑑で確認したところ、「応援ポケモンのプラスル」、と出た。そして、そのプラスルが見覚えの有りまくる物を手に持っていた。

「僕の帽子ぃー!!」

 間違いない。こいつが、自分の帽子をスった犯人だろう。青筋が再び立つカルム。相手が可愛いからといって、自分に害を与えるものには、結局容赦をしないのが彼の性格である。ただ、ここで取り乱さずにポケモンを使って追いかければよかったのだが、自分で走って追いかけようとした。まさに、”親譲りの無鉄砲さで、損ばかりをしている。”だ。
(夏目漱石作、「ぼっちゃん」から抜粋。)

「待ちやがれぇー!!」

 とカルムが叫んで、追いかけっこが始まった。

「待ちやがれこらぁー!!」

 普通ならこれで止まるはずがない。しかし、プラスルは立ち止まった。そして、草を結んだ。直後、走っていたカルムは足を引っ掛けて転ぶ。まさに、必殺のナチュラル・トラップ。

「いや、止まれとは言ったけども!!草結びするなぁー!!」

 そのあとも、懲りずに散々追い掛け回したが、結局1人と1匹はへばって地面に手を付いた。

「うん・・・・・・ちょっと、休憩・・・・・・しようか。うん。」

 プラスルも頷く。本当は、この1人と1匹に着いてきた、ティエルノが大変なのだが。そして直後。カルムは、自分の目的を忘れていることに気づき、そして自分の目的を思い出した。そして、目前の目標めがけて、両手を伸ばす。

「つーかまえたっ!!」
 
 思いっきり、プラスルの体を掴んだ。直後、電撃が自分の体を走るのを感じた。髪が逆立ち、目から星が出る。

「ぎゃあああ!!しーびーれーるぅー!!」

 プラスルは、ペロッと舌を出して、悪戯っ子のように無邪気な顔で、ぐったりしたカルムに帽子をかぶせると、どこかへ行ってしまった。

「タチがわりぃ……くそっ、これだからネズミは嫌いなんだァー!!」

 そう言って、カルムは意識を手放した。

 ***

「あー、ひどい目にあったぜ!」

 カルムは怒り心頭だった。電撃を食らった上に、元々を言えばトロバがいなかったせいで、メガシンカのことを聞けなかったのだから、仕方がないだろう。ティエルノはそんなときも、にこにことしていた。

「まあまあ、カルやん落ち着いて。」
「誰がそのあだ名で呼べって言った?まあいいや。好きに呼んでよ。」
「この辺にも面白いムーブの技を持ってるポケモン、いないかな?」

 ティエルノは技----------------特に、ポケモンの動きに注目しているらしい。

「ポケモンバトルは、互いの自慢のポケモン同士で魅せ合うものだと思うんだ。あ、もちろん勝ち負けも大事かもしれないけど、それ以上にどれだけ相手を魅了するかも大事だと思うんだ。」
「相手は観客-------------------ってワケか。」
「だって、バトルの主役はポケモンじゃないか。」

 成る程、そういう考え方もできるのか。ポケモンバトルのこのような点に着目できる人間もいるのだろう。
 さて、ずんずんと2人は道を突き進んでいく。その時だった。

「---------------------------!!」

 刹那、カルムは悪寒を感じた。殺気。それも、複数だ。

「おいおい……! ティエルノ。どうやら僕たちは、知らない間に野生ポケモン共の領域(テリトリー)に入ってしまったらしい。」
「え?でも、ポケモンの姿は見えないけど。」
「姿はな。だけど、結構広い範囲で囲まれてる。これは、ざっと20mか?だいぶ遠いところから、目ェ付けられた。」

「う、うわぁー!!」

 次の瞬間、悲鳴が響き渡った。トロバの声だ。

「トロバっち!」
「待て、ティエルノ!不用意に動くな!!」

 カルムの止める声も聞かず、ティエルノは先に行ってしまった。

「友達思いなのと、無茶なのは違うだろ、待てッ!!」

 ***

 駆けつければ、案の定。トロバはそこにいた。が、二つの首を持ち、この世界に生息するポケモン以外の生命体で言うダチョウのような姿をした双子鳥ポケモン、ドードーたちに囲まれている。

「大丈夫かーい!トロバくーん!」
「助けてくださーい!!」
「くそっ、待て!」

 カルムも追いかけてくる。が、カルムの思ったとおりだった。既に、ほかの方向からスタンバイしていたのか、別の方向からドードーが走ってくる。

「まずは、トロバ君の周りにいるドードーを倒さないと!ヘイガニ!」
 
 ティエルノはボールを投げた。中からは、ヘイガニが現れる。

「クラブハンマーで追い払え!!」

 ヘイガニはハサミを振り上げて、ドードーたちを薙ぎ払った。驚いたドードーたちは、次々に逃げていった。しかし、見ればトロバは足から血を流している。

「怪我してるじゃないか!!」
「すみません、コハクを庇って……」

 トロバは申し訳なさそうに言った。カルムは慌てて彼に駆け寄り、傷薬を取り出した。が、ほかの方向から追尾してきたドードー達に、完全に包囲されてしまったのである。

「ハハハ、洒落にならないね。どーすりゃいいんだこれは……!」

 カルムは眉間にシワを寄せた。相手の数は5匹。少々、手強いか。

「ティエルノ。トロバの応急処置をしててくれ。こいつら全員、僕が引き受ける!」
「ちょっと! 無茶だよ!」
「本当ですよ! こんなの、早く逃げないと!」
「ダメだ! どの道、追いつかれるが関の山。だから、無茶には、しどきってもんがあんのさ!! 行け、ケロマツ!こいつら全員、片付けろ!」

 カルムはケロマツを繰り出して、応戦態勢に入った。

「ケロマツ、電光石火!!」

 ケロマツは目にも止まらぬスピードで、ドードー1体の首を蹴飛ばす。怯んだのを見計らって、ケロマツはそのまま突っ込んだ。ドードーはその場に崩れ落ちる。

「なーんだ、弱いじゃん!」

 しかし、安心もつかの間。同時にドードー4匹が鳴き声を上げた。その名の通り、”鳴き声”攻撃だ。しかし、効果を知らないカルムはとにかく突っ込んでいく。

「ケロマツ、もう一回電光石火!!」

 機敏な動きで、今度はもう1体のドードーの両首を掴み、頭と頭をぶつけさせた。普通なら、これで倒れてもおかしくないのだが、全く平気そうにしている。

「えっ!?」
「カルム君!鳴き声の効果は、対象の攻撃力を下げてしまうことなんです!!」

 トロバが切羽詰まった様子で言った。つまり、ケロマツの物理攻撃は、ほとんど通用しなくなってしまったことになってしまう。今度は4匹が全員が突っ込んだ。そして、ケロマツを4×2の嘴で突き始める。1匹1匹がそうそう強くないのが、せめての幸い。しかし、ケロマツはボロボロになってしまう。

「くそっ!なら今度は、特殊技だ!ケロマツ、水の波動ッ!」

 ケロマツは水流を手に収めて、さっき攻撃したドードーへとどめの一撃を上げる。悲鳴を上げたあと、ドードーは動かなくなる。

「2匹目ッ……!!あと3匹!」

 しかし、カルムに余裕など無くなっている。持ちこたえられるのも、時間の問題か-----。


後書き:今回は、群バトル回でした。実際に書いてみると、戦う側が不利そうなのが、よくわかります。ゲームでは、通常のポケモンよりレベルが低いから、まだいいですが。さて、今回出てきたプラスル。まあ、これがどう転ぶかは、お楽しみしか言いようがないですね。ここまで言えば勘のいい方はお気づきかもしれませんが。ついでにゲーム本編では群れでドードーは出てきません。これは描写上の都合ってことで目を瞑ってください。それでは、また。