二次創作小説(紙ほか)
- 第十七話:フラダリとカルネ ( No.57 )
- 日時: 2013/12/05 20:38
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
--------------------カフェ・ソレイユはおしゃれな感じのカフェだった。クラシック調の音楽が心を落ち着かせ、派手ではないデザインの店内は、落ち着いてコーヒーが飲める雰囲気だった。しかし、カルムがここに来たのは、決してコーヒーを飲みに来るためではなく・・・・・・いや、それもあっただろうが。何より、一番の要因はセレナに呼ばれたことだった。
「一体、何の用なんだ?」
苛立ちつつ、扉を開けるカルム。すると、そこにはセレナが立っていた。が、さらに奥の方には2人の人物が話をしていた。一方は、男性だった。赤い髪と大きな髭を持つ若い青年だった。もう一方は女性だった。綺麗なドレスを着た女性だった。
「いつまでも、若い役を演じたいとは思いませんか?カルネさん。」
男は、女性------------------カルネに向かってそう言った。女性は、きっぱりという。
「おかしな質問ね。人が年をとるのは当たり前。おばあちゃんになったら、その時はその時で、また違う役を演じることを楽しみたいわ。」
「成る程・・・・・・ですが、いつまでも若々しく、そして美しく演じ続けるのが、大女優として選ばれた貴方の指名じゃないですか?私だったら、世界を破壊してでも、その美しい姿を原型に留めておきたい。世界が醜く変わっていくのを見るのは、耐えられません。」
カルムには、さっぱり見覚えのない2人だった。セレナが言う。
「あっ、来たわねお隣さん!あの人・・・・・・ホロキャスターの開発者であり、プラターヌ博士の友人である、フラダリさんと、カロス地方の大ッ、大ッ、大ッ、大女優の、カルネさんよ!!」
「ホロキャスターの開発者と大女優、か。」
ホロキャスターは、カルムも持っている、”それ”だった。ホログラム投影機が実装されており、まるで相手がその場にいるかのように会話ができるのだ。
というか、さっきからセレナの様子がおかしい。カルネの話をするときだけ、興奮している。恐らく、こいつ大ファンだな、と思ったのは誰にでも明確だった。
「でも、どういう組み合わせかしら。」
「知らないよ。」
カルムはため息をついた。すると、話が終わったのか、カルネとフラダリがこちらへやって来た。
「おや?トレーナーさんかしら?」
「カ、カ、カ、カ、カルネさん!!」
セレナは、すごく緊張しきった様子で固まっている。
「まあ、楽にして。そちらの君は、お友達かしら?」
「「いえ、ただの隣人です。」」
セレナとカルムの波長が、珍しく会っていた気がする。すると、フラダリはカルムに話しかけてきた。
「博士から話は聞いています。初めまして。私は、フラダリ。プラターヌ博士のところで、色々と学ばせてもらっています。」
「は、はぁ。こちらこそ、初めまして。」
「先日は大変だったようですね。」
”先日”とは、昨日のフレア団襲撃のことだろう。
「まぁ、大丈夫ですよ。それより、一体何を話されていたのですか?」
「カルネさんと一緒に、”美しさ”について意見交換をしていたのですよ。」
「ええ。この地方の最大のテーマは、”美しさ”。そうよね、フラダリさん。」
どうやら、聞いた話によると、このフラダリという男は交友関係が多い人物らしい。そして、親しみ易く、話しやすい人物だった。この、カルネという女性も、そうだった。
「きゃぁ〜!!カルネさんから、サイン貰っちゃったぁ〜!!」
「はしゃぎすぎ。」
カルムは、セレナを窘めた。にしても、なかなかすごい人物に会ってしまったものだ。引っ越して早々、これは幸先がいい。と、勝手に回想するカルムだった。
「で、結局僕に何の用だった訳?」
「ああ---------------------昨日、ありがとう。」
「は?」
突然お礼を言われて、困惑するカルム。セレナの顔が少し赤くなる。
「・・・・・・もぅ。昨日さ、私は友達よりメガストーンを守ることに必死で、ついつい本当に大事なものを忘れてたような気がするの。」
「それでね。」と続けるセレナ。
「迷わずメガストーンを渡した貴方の行動で、それを思い出せたの。」
「当たり前だよ。」
カルムは言葉を遮った。
「当たり前。結局大事なのは友達の命じゃないか。」
そう、言って。
「・・・・・・すごいわね。いつでも、方向を見失わないで前を向いてるんだもの。」
彼女の表情は、どこか気丈ないつもの物とは違った。そう、カルムは感じた。
「さっきは、ただの隣人だなんて言っちゃったけど、私は貴方のこと、ライバルだと思ってるんだよ?じゃあね、カルム君!5番道路で13時!落ち合いましょ!」
そう言って、セレナは駆けていった。すると、カルムは1つのことに気づいた。
「あれ?最後、僕の名前呼んだよね?」
そして、彼女の言葉を繰り返した。
---------------------ライバル・・・・・・か。
「ふぇえ〜。ているせんぱい、ダメですよ。まだ、動いちゃいけないって言われてるじゃないですかぁ〜。」
「うるせぇ!!」
腹に巻いた包帯を引き剥がし、いつものシャツと服を羽織るテイル。腹に激痛を感じたが、何も感じなかったふりをして、立ち上がる。
「あの女、バーミリオンって言ったな!!」
「は、はいっ!そうです!」
「へへへ・・・・・・久しぶりに、バチバチしてきやがった・・・・・・!!」
バチバチ。それは、テイルが自分の気分が相当燃え上がっている時に、使う言葉である。つまり、バーミリオンとポケモン勝負にすらならなかった弱い自分への激しい怒りを表しているのである。
「俺は行くぞ!!絶対、あの女をぶっ潰す!!」
「・・・・・・。」
マロンは、唇を噛み締めた。自分では、彼を止めることはできないのだと。ならば------------------
「あたしも・・・・・・あたしも連れて行ってください!!」
「なっ、マロン!お前・・・・・・ダメだ。危険すぎる!!」
「実はまだ、のこってためがすとーんが1個あるです。」
そう言って、1つの石を取り出した。
「・・・・・・”デンリュウナイト”・・・・・・!!」
「せんぱいっ!!せんぱいがいくなら、あたしも着いて行きます!!せんぱいとなら、火の中水の中ッ!!溶岩の中にだって着いて行きます!!」
「・・・・・・へっ、マロンからそんなアプローチを受けるなんてな。」
それを聞いたマロンは、顔を真っ赤にする。耳まで、赤くなってしまった。
「ち、ち、ちがうんです!!へ、へんなこと言わないで下さいです!」
「馬鹿、じょーだんだ。そこまで言う奴を置いていく理由もねえ。勝手について来い。」
恥ずかしそうな彼女を見て、テイルはクスクス笑った。少し、可愛いと思ったのは、多分気のせいかも知れない。と、頭の中で勝手に打ち消した。
今、2人の少年と少女の物語が、交錯しようとしていた。
後書き:今回は、前回に比べれば少ないですね。同時に、テイルも旅に出ます。次回は・・・・・・まぁ、順当に行けばティエルノ戦ですね。お楽しみに。