二次創作小説(紙ほか)

第二十二話:パルファム宮殿・バトル大会 ( No.71 )
日時: 2013/12/14 10:22
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: wJNgr93.)

「ケロマツ、電光石火ッ!!」

 カルムが指示を出した途端、ケロマツは地面を蹴って走り込み、相手のウサギのようなポケモン------------------ホルビーの懐に潜り込んで一気に手刀を食らわせた。呻き声をあげたホルビーは、その場に倒れこむ。

『第一回戦、カルム選手の勝利ッ!!』

 実況者が舌を巻くほどの快勝だった。

『ちなみに今回、実況はこの私、”Mr・実況”の異名を持つ宮殿の主、コバルトでお送りさせていただいております!解説は、ハクダンジムジムリーダー、ビオラさんを特別に呼んでおります!』
『はい、どうも!シャッターチャンスを狙うように解説をしていきたいと思います!』

 見た顔だと思ったが、まさかビオラが解説者としてこの大会にいたとは思わなかった。

『先程のカルム選手のバトルですが、いかがでしたでしょうか?』
『ええ、彼とは一度ジム戦で戦ったことがありますが、やはり成長していますね。それ以上に、”ポケモンの動きのキレ”が半端ではないように感じられます!』

 ブラッシングや手入れはやはり効果があった。今回パワーアップしたわけでもなく、今まで100%の力が出しきれていなかっただけだったのだ。

 余談だが、今回のルールは1対1のシングルバトル。試合ごとにポケモンを変えることができる。
 しかし、第二回戦、三回戦とポケモンをなるべく変えずに相手を倒していくカルム。ケロマツのみで、次々と相手を倒していく。一方のサナも、同じだった。あまり、手の内は明かしたくないからだろう。ほかのポケモンは、決勝、準決勝で使うつもりか。




「次は、準々決勝かぁ・・・・・・。」

 意外と相手が弱かったり、相手のミスによるラッキー勝ちだったりなど、割とここまで苦戦する相手はさほどいなかった。

「次の相手は・・・・・・。」

 と、モニターを見た時だった。

「おいおい、またガキが相手か・・・・・・?」

 と声がした。振り向けば、そこには黒いTシャツに青いズボンを履いており、サングラスをかけた男。20代程か。初見でいうなれば、”不良”だった。

「あんた、一体何なんだ!!」

 いきなりの相手の失礼な態度にムッときたカルムは、食ってかかった。相手の男は、苛立つように口元を歪める。

「何だぁ?勢いは随分と良いじゃねえか。勢いだけは。だが、俺はこの大会で優勝し、笛を売っぱらって、この自宅警備員(ルーム・セキュリティー)という職種から成り上がるんだよ!!警備する家もないわけだけど。」 

 要するに、この男は”自称”、自宅警備員だが、警備する家もないホームレスということだ。呆れた。世の中にこんなだらしのない男がいるとは、と自分も寝てばかりで堕落しているカルムが言える話ではなかったのだった。

「とにかく、ガキ。覚えておけ。この俺、ナツトキは今日限りでホームレスと自宅警備員を卒業してやる!良いか!」
「僕に言われても困るんですけど!?てか、あの笛ってそんな代物なの!?」

 その後、問答が続いたが、結局時間が来たので有耶無耶となってしまった。




『このパルファム宮殿バトル大会も大詰めになってきました!まず、準決勝第一回戦!ハクダンジム・ジムリーダー、ビオラさんをかつてない方法で破った期待の一番星、カルム選手!』
「大袈裟な・・・・・・一体、どっからそんな情報が・・・・・・。あ、パンジーさんが広めたなら納得できる。」

 周りの歓声に反し、自分でも引くくらいカルムは落ち着いていた。

『一方、ギャンブル好きな現代のパチスロニート!でも、バトルの腕は一級品!自宅のない自宅警備員!ジムバッジ未所持なだけに、その実力は未知数、のナツトキ選手!』
「一言余計だっつの!!」

 さっきの男-----------ナツトキは、実況者に突っ込んだ。

『それでは、試合開始!!』

 審判の声とともに、両者ボールを投げる。

「いけ、ケロマツ!!」
「やれっ、バケッチャ!!」

 ナツトキのボールから、見たことのないポケモンが現れたため、図鑑で確認をとるカルム。それは、丸っこいカボチャのような部分から、霊体が伸びたようなポケモンだった。

「かぼちゃポケモン、バケッチャ。見たところ、草タイプでこっちは不利・・・・・・。だけど、ここで負けるわけにはいかない!」
「先にポケモンを繰り出したのがアダになったな!お前のケロマツは、俺のバケッチャには、勝てないな!!」

 しかし、カルムは決してポケモンバトルが相性のみによって、勝敗が裏付けされるものではないことを知っていた。

「そうだとしても・・・・・・バトルは、最後まで諦めない!」
「ほーう、なんならいいぜ。こっちから行くぞ!バケッチャ、宿り木の種!!」

 バケッチャは、頭の先から種を吹き出す。そこから、蔓が無数に伸びでてケロマツに絡みついた。

「なっ、これは!?」

『カルム選手のケロマツゥー!!”宿り木の種”を食らって身動きが取れなーい!!』
『宿り木の種は、寄生したポケモンの体力を奪い続ける厄介な技!しかも、動きにくくなります!』

 ケロマツは、必死に取ろうとするが、取れない。

「まだまだぁ!!バケッチャ、シャドーボール!!」

 影の玉が、一気に収束して放たれた。ケロマツは動けないまま、シャドーボールを食らって、仰け反る。

『おーっと、今のは痛かったぞ!!大丈夫か!?』
『ナツトキ選手は、補助技で相手を止めたり、自分を優勢にしてから攻撃しに行くタイプのようですね。堅実な点で、ギャンブラーとは思えません!』

「くそっ、ケロマツ!まだ立てるかよ!?」

 ケロマツは、煙の中起き上がる。まだまだ行けるということを表した。

(とはいえ・・・・・・こっちの状況は、ちーときついぜ・・・・・・!)

 汗を拭うカルム。しかし、すぐに笑みを浮かべると、

「ケロマツ、水の誓い!!」

 指示を出した。間欠泉が吹き出し、バケッチャを上空へ飛ばす。しかし、元から浮遊しているバケッチャにはあまり関係ない話。そのまま、さらに上空へ浮かんで、シャドーボールを撃った。

「よけろ!三時方向!!」
「バケッチャ、大ギャンブルだ!!連続でシャドーボール!!」

 ケロマツの後を追うように、バトルフィールドに弾幕が走らされた。

「避けろ避けろ!そのまま、電光石火で飛び上がれ!!」


 ケロマツは指示されたとおり、上空へ飛び上がる。しかし、

「バケッチャ、怪しい光ッ!!」

 突如、奇妙な光がケロマツへ襲いかかった。そして、くるくると周回したかと思うと、ケロマツはふらふらとよろめき始めてしまう。

『おーっと、これはぁー!!ケロマツ、混乱状態になってしまったァー!!』

「こ、混乱だと!?」

 カルムは思わず声を上げた。相性が悪い上に、状態異常。以前もこんな状況に直面したことがあるが、今まで食らってきた「麻痺」とは違って今回は、「混乱」という状態異常だった。

「一体・・・・・・!?」

 トレーナーまで混乱し始める。カルムに勝機はあるのか、それは誰にもわからなかったのだった。


後書き:今回、プツ男さんのオリキャラ、ナツトキを登場させました。投稿された順だと、どうしてもストーリーが難しくなるところがあるため、結構バラつくと思います。とりあえず次回は、カルム対ナツトキ戦、決着です。お楽しみに。