二次創作小説(紙ほか)
- 第二十三話:進化 ( No.76 )
- 日時: 2013/12/15 12:57
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
『ケロマツ、混乱状態だァー!まともに動けない!!』
「くそっ、ケロマツ!!」
酔っ払った親父の如く、フラフラフラとバトルフィールドを動き回るケロマツ。
「ハハハハハハハ!やれっ!!シャドーボール!!」
シャドーボールが飛んでくる。咄嗟に叫ぶカルム。
「回避!!4時方向!!」
しかし、その言葉を聞き受ける様子は無く、ケロマツはシャドーボールを食らってしまった。それでも、まだフラフラと酔ったように舞っている。
「シャドーボール!!」
再び現れる弾幕の嵐。しかし、この弾幕の嵐には、所謂酔拳とかいうやつなのか、フラつきながらも避けてみせた。
『おーっと、これが所謂酔拳というやつか!?』
『あんまり、すごい技じゃなさそうですね・・・・・・。』
「舐めんなよ!!ジャッキー舐めんなよ!殺し屋チェイシンの喉を酔拳で潰したんだぞ!!」
と、思いきやケロマツは顔を振って、正気に戻ったようだった。しかし、宿り木によるダメージは、小さくはない。確かに一回一回のダメージは少ないのだが、これが蓄積するとまずいことになりかねない。
「ケロマツ、水の波動!」
この際、ダメージは少なくていい。単発でもダメージを与えなければ、負けてしまうだろう。
「バケッチャ、シャドーボール!!」
水の波動を喰らいつつも、弾幕を張っていくバケッチャ。やはり、迂闊に近づけない。
「バケッチャ、もう一回シャドーボール!!」
「ケロマツ、避けろ!!そのまま、水の誓い!!」
地面が割れて、間欠泉が吹き出す。バケッチャは、水圧でダメージを受けたものの、全くダメージを食らっていないようにさえ見える。
「ははは、宿り木の種から貰った体力のおかげで、こんなのダメージのうちに入らないぜ!そろそろ諦めたらどうだぁ?」
「くそっ、いい加減に喰らいやがれ!!水の波動!!」
ヒートアップしている所為もあって、口調もバトルも荒くなってくるカルム。彼は、いつもの口調こそ穏やかだが、決して性格自体が穏やかではないのだ。そして、それはケロマツも同じだった。
水流は真っ直ぐに飛んでいき、バケッチャへ突入した。
「はははは!!そんな攻撃、効かない・・・・・・ぜ!?」
ナツトキは、このバトルで初めて動揺を見せた。今まで、水技を食らってもビクともしなかったバケッチャが、バランスを崩し、尚且つ苦しそうな表情を浮かべたからだ。
「特性・・・・・・激流!!その効果は、ピンチの時に水タイプの技の威力が底上げされることだ!!」
そして、今までに無い程の速さで、再びバケッチャに突っ込むケロマツ。
「そのままっ、水の波動!!」
水流がバケッチャの顔面に直撃した。床に衝突するバケッチャ。煙が上がる。しかし、再び現れる弾幕の嵐。流石にこれは躱せそうになかった。
しかし、カルムは信じていた。ケロマツの可能性を。そして、ケロマツがとんでもない力を秘めており、尚且つ近いうちにそれを発揮することを。だからこそ、今回の大会はケロマツ単騎のみでなるべく戦わせていたのだった。
影の弾幕が、ケロマツを覆い尽くす。直後、爆散した。煙が上がって、最早これで勝負はあったように思われた。
「勝負あったな!!」
「・・・・・・あんたには聞こえないのか?」
カルムはナツトキに尋ねた。ナツトキは鼻で笑って返す。
「ハッタリだろ。」
「違うね!よく耳を澄ませてみろよ。」
静寂から聞こえる、心拍。それは、今までとは全く違うリズムでビートを刻んでいた。
「こ、これは・・・・・・!!」
煙から、大筋の光が何本も何本も漏れる。体が新たなる細胞に作り替えられ、全く新しい存在へと生まれ変わるのだ。
『ま、まさかこれは-----------------------”進化”か!?』
『何と言うことでしょう!!まさか、バトルの途中に!?』
ビオラでさえも、呆気にとられてその光景を見つめている。そして、ビートを刻む音の速さが高速になる。次の瞬間、弾けるような音とともに、煙が晴れた。しかし、そこには何もない。
「はっ、はは!!撃墜されて落ちたんだろ!!とんだハッタリだぜ!!何が進化だ!!」
しかし。ようやく、フィールドの全貌が明かされた時、ナツトキは驚きを隠せなかった。
「ちょっ・・・・・・待てよ・・・・・・どこにも何もいねえじゃねえか!!何が・・・・・・何が起こってるって言うんだよ!!」
次の瞬間、一陣の影がバケッチャへ降った。そして、バケッチャは地面へ叩きつけられる。
「ようやく目覚めたな。ケロマツ------------------------いや、ゲコガシラ!!」
そこにあったのは、ケロマツではなかった。それは、一回り大きくなった体に、威厳のある頭領のようなものを併せ持っていた。それは、ゲコガシラ。ケロマツの進化系のポケモンだった。
「はっ、お前今何発ダメージを食らったと思ってるんだ!!相当溜まってるんだろ?なぁ!!だったら、とっととこれで楽にしてやるぜ、バケッチャ!シャドーボ-------------------」
「ゲコガシラ、煙幕!!」
バケッチャがシャドーボールを放とうとする直前に、ゲコガシラは黒い煙のようなものをバケッチャへ投げつけた。バケッチャは、方向が完全に分からなくなる。視界が黒い煙で塞がれてしまったのである。
「んでもって--------------------飛び跳ねる!!」
煙幕が晴れた。バケッチャはすぐさまシャドーボールをはなとうとした。しかし、対象の姿はどこにもない。バケッチャは、目を凝らしたが、直後。あることに気づいた。上空から、ゲコガシラがものすごいスピードで降ってくるのだ!
「あ、ああ・・・・・・あああ!!」
言葉にならない声を上げるナツトキ。直後、鈍足なバケッチャは避ける暇もなく床へ叩きつけられた。そして、大きな音を立てて床にめり込む。
一撃必殺。あれほど耐久の高かったバケッチャは、今の一撃を食らって、そのまま動かなくなり、目を回してしまった。戦闘不能だ。つまり、この時点でカルムの勝ちが確定したのである。
『しょ・・・・・・勝者、カルム選手!!』
「っしゃぁー!!」
思わず、飛び上がるカルム。何より、相棒の進化が嬉しかったのだろう。そして、掴み取った勝利。その事実は揺るがない。そして、バトル中の進化という、珍しいものを見せつけられた観客は、歓声を上げていた。
「俺の負けだ。ギャンブルもバトルも時の運。全力で互いがやり合った後は、それだけだ。」
ナツトキは、しおらしい様子でそう言った。そして、手の平を差し出す。
「俺の分まで、頑張れよ。てか、優勝しないと許さねえからな!!」
「はいっ!!」
カルムも、大きい返事で答えてみせた。両者は、固い握手を交わし、それぞれの向かう場所へいったのだった。
「カルム・・・・・・かぁ。なかなか面白いトレーナーだねえ。」
他の出場者(負けたものも含む。)モニターを眺めている少年。彼は、不敵な笑みを浮かべると、肩に乗った自分のポケモンを撫でた。
「面白い・・・・・・。面白いことになりそうだよ!!」
後書き:今回、ナツトキ戦を完結させました。そして、ゲコガシラが進化します。進化する前とした後の違いはかなり極端だったと思います。ついでに言うと、飛跳ねるを覚えていたのは、ご愛嬌ということで。まあ、決め手になる技を覚えさせておきたかったのもありますね。今回登場したナツトキですが、プツ男さん、キャラ崩壊などがあればご申し付けください。というか、遅れてすみません。最後に現れた少年については、次回くらいに明かす予定です。それでは、次回もお楽しみに。できれば、今日中に更新したいですね。