二次創作小説(紙ほか)

第二十五話:再戦・VSサナ  ( No.79 )
日時: 2013/12/21 12:32
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「行け、プラスル!!」

 カルムはプラスルを繰り出した。回復マシンで試合ごとに回復していても、ゲコガシラの疲労は相当たまっている。ここは、トレーナー戦でこそ初めてだが、それでも強力な力を内に秘めたプラスルを繰り出したわけだ。

「行っくよー、ゴー!フォッコ!!」

 一方、サナはフォッコを繰り出した。フォッコは、闘志を表すように小さな炎を吹き出すと、甲高く鳴いた。

「じゃあ、先攻は貰ったよ!フォッコ、ニトロチャージ!」

 -------------やっぱりニトロチャージで攻めてきたか!!
 ニトロチャージは、攻撃と同時に素早さを上げる技。何も考えなくても、ただポコポコ打ってるだけで勝手に素早さのアドバンテージが取られてしまうのだ。
 だが、下手にプラスルへ接近したフォッコは迂闊だったといえよう。

「プラスル、チャージビーム!!」

 フォッコは、網の中に入ってくるケンタロスと同じだった。闇雲に突っ込んできたと思ったら、プラスルの新技チャージビームの電撃を喰らってその場に座り込んでしまう。チャージビームは、使う度にポケモンの特殊攻撃力を上げる技だ。残った電気が蓄積して、エネルギーとなるのである。

 が、

「フォッコ、炎の渦!!」

 -------------しまった!!
 と思ったがもう遅い。炎の渦はプラスルの周りを旋回し始めて、閉じこめてしまった。

「ニトロチャージ!!」
「チクショッ、電光石火で避けろ!!」

 すんでの所で避けたプラスル、しかし心なしかフォッコに追いつかれそうだ。

『プラスル、ニトロチャージで能力の上がっていくプラスルに対して、後れを取ってきたぞ!!』

「るっせぇ、こっから巻き返してやらぁ!!プラスル、ほっぺすりすり!!」

 プラスルは、自分の頬をこすり始めて、バチバチと電気音を鳴らして見せた。それをフォッコに押しつけようとする。

 -----------が、虚しくも避けられてしまった。

「う〜ん、やっぱり追いつけなくなったか。」

 物理技で押すのは無理だろう。麻痺状態にしようと思っても、奴さんは素早さが上がってほっぺすりすりさえ受け付けなくなってしまった。

「何なら、チャージビーム!!」

 再び両手から光線を放つプラスル。しかし、フォッコの避けるスピードの速いこと速いこと。全く当たらない。

「くそったれが!!ぜんっぜん当たらん!!」

「そろそろかな?」

 サナは呟いた。見れば、フォッコの体が心なしか少しずつ輝いてくる。

「お、おい・・・・・・まさか・・・・・・。」

 カルムは顔を引きつらせる。まさしく、自分のポケモンにさっき起こったばかりの”現象”だった。眩い光にフォッコは包み込まれ、直後。大きな炎に変わった。そして------------------------炎が消えた直後、そこにいたのはフォッコじゃなかった。


『進化だァー!!フォッコ、土壇場でまさかの進化!!テールナーへと姿を変えた!!』


 -----------------キツネポケモン、テールナー。四足歩行だったフォッコとは異なり、人に近いような容姿になった。ワンピーススカートのような体毛やツインテールのような耳の毛、どこか女性的である。

「いっくよぉー、テールナー!まずは、グロウパンチ!!」
「プラスルッ!?」

 テールナーの腕が一瞬膨張し、プラスルへと躍りかかった。一発、プラスルを上空へ吹っ飛ばした。グロウパンチは、使う度に腕の筋肉へエネルギーを溜めて、攻撃力を底上げする技だ。

「さらに、サイケ光線!!」

 さらに、吹っ飛ばされたプラスルは動けないまとも同然。サイケ光線によって打ち落とされる。

(くそ、負けるのか!?)

 どしゃっと音がして、プラスルが地面にたたきつけられた。まだ、動ける。プラスルの様子からはそう感じられた。負けたくない。自分の意地がそう言っている。しかし、ゲコガシラとケロマツの能力差が一目瞭然だったように、フォッコからテールナーへ進化した際の能力変化も、激しいモノだった。明らかにパワーアップしており、簡単に手の付けられる代物ではない。
 そもそも、進化と同時に習得した新たな技によって、さらに攻撃の多様性が増してしまっている。
 が、理屈なんてどうだって良かった。ただ、勝てばいいのだから。カルムは、次のテールナーの技に、全てをゆだねることになる。

「テールナー、グロウパンチ!!」

 -----------グロウパンチ、物理技だ!!

「来たぞプラスル・・・・・・まだいけるよな!!」

 拳が迫る。3秒前、2秒前、1秒前・・・・・・。テールナーの拳とプラスルの体が運命的な出会いを果たす、直前だった。

「プラスル、カウンター!!」

 次の瞬間、テールナーの拳が掴まれる。プラスルの小さな手に。そして、テールナーの体が傾いた。その力を利用して、一気に後ろへ投げ飛ばした。

 カウンター------------受けた物理技の威力を倍返しにしてダメージを相手に負わせる大技。

 つまりカルムは、賭けに勝ったのだ。次に来た技が特殊技ならば、カルムは負けていただろう。何とか体勢を立て直すテールナー。しかし、追撃が迫ってくる。

「プラスル、とどめの電撃波!!」

 電気の波が一気にテールナーへ押し寄せてきた。同時にテールナーは身構える。しかし、全て無駄だった。テールナーは電気を全て喰らってその場に崩れ落ちる。

「電撃波は威力こそ低いが必ず相手に命中する。トドメにふさわしい技だ。」
「う、うぅ・・・・・・。よく頑張ったね、ゆっくり休んでテールナー。」

 サナは半べそをかいて、テールナーをボールに戻した。

『決まったぁぁぁぁぁぁぁ!!ウィナー、カルム選手!!対戦中の相手の進化に屈せず、見事勝利!この素晴らしい勝負を繰り広げてくれた2人にどうか、拍手を!!』

 拍手喝采。歓声が上がる。サナも後悔していないような顔をしていた。互いに全力でぶつかり合えたからだろう。

「今度こそは絶対勝つからね!!」
「楽しみにしてるぜ。」

 そう言って、拳を優しく交わしたのだった。




『パルファム宮殿・バトル大会!決勝戦!!激突するのはこの2人!!』

 実況の長々しい前置きを頭の中で全てすっ飛ばし、カルムは武者震いが止まらなかった。一方の相手-----------ヴァンは至極落ち着いていた。

「君。試合、見てたよ。なかなか面白いね。」
「だから何なんだよ。」

 ヴァンはクスクスと笑うと、続けた。

「この世界を一緒に変えないか?」
「?」

 カルムは質問の意図が読めなかった。実況が、声を上げる。

『それでは、試合開始!!』



後書き:今回、VSサナでしたが、結局1話で終わってしまいました。まあ、テールナーに進化したも、プラスルが新技で押しきったといった感じですね。それでは次回、VSヴァンです。お楽しみに。