二次創作小説(紙ほか)
- 20話 幼馴染・ラルカ ( No.107 )
- 日時: 2013/12/09 22:46
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「ラルカ、お前……何でここにいるんだよ!?」
やっと言葉を発することのできたレストが最初に口にした疑問はそれだった。彼女は本来ならレストの故郷にいるはずで、こんなところで出会うはずないのだ。
「あんたを追って来たに決まってるでしょ。というか、それはこっちの台詞よ」
非常に不満げに、ともすれば怒りすら感じる声で、ラルカはレストに詰め寄る。
「あんたこそ何でこんなとこにいるのよ、どういうつもりよ?」
「っ……仕方ねえだろ、親の都合だ。俺がどうこうできることじゃない」
「じゃあ何で私に一言も言わなかったのよ」
「それは、急に決まったからで……」
ラルカの剣幕に押され気味のレスト。対照的にラルカはどんどんヒートアップしていく。
「ねえ、どういうことなのよ! 言ってみなさいよ!」
「いや、それは……」
「急に何にも言わずにどっか行っちゃうんなんて信じられない! どういうつもり!?」
さらに押してくるラルカを、レストはぷつんと何かが切れたように押し返す。
「ああ、うるせえよ! どうだっていいだろうがんなこと!」
「どうでもよくない! 教えなさいよ!」
「誰がお前なんかに言うか!」
「むぅ……私はそれを聞くまでは帰らないわよ! そっちに言う気がないなら、その気になるまで付きまとってやるんだから!」
「はぁ!?」
納得できないというように声を荒げるレスト。
「何言ってんだてめえ! つーかお前のことだから、勢いに任せてロクに準備もせず来たんだろ。そんな奴は旅には向いてねえんだよ。とっとと帰れ!」
「嫌よ! あんたが何も言わずに町から出てったわけを聞くまで帰らない!」
そろそろ会話が支離滅裂になってきた二人。ラルカの主張は、レストが何も言わずに故郷を去った理由を聞き出すまでは帰らないということ。しかしレストはそれを言うつもりはなく、そのままラルカを帰らせたいと思っている。
双方の意見がぶつかり合うが、どちらも意地っ張りなところがあり、口論では決着がつかない。そもそも論争と言うよりはただの口喧嘩レベルで、終わりなど存在していない。
レストは次第にそれを理解する。なので、
「……おい。お前ここに来るまではどうした? ポケモンは?」
「ポケモンは……あんたが引っ越したっていう街の博士から貰ったわ」
どうやらシャロットはラルカにポケモンを渡したようだ。余計なことをしてくれたとは思うが、その点を非難する気はない。この場合重要なのは、ラルカがポケモンを所持しているということだ。
「つーことはお前も、一人のトレーナーなんだな。トレーナー同士の意見が対立したんなら、やることは一つだろ」
「……何よ」
疑念を含め、レストを睨むラルカ。対するレストは、モンスターボールを突きつけた。そして、
「ポケモンバトル。これで負けた方が、相手の要求を受け入れるってのはどうだ?」
負けたら相手の要求を受け入れるという条件のバトルを、ラルカは受けた。元々好戦的なところがあるので、そんな提案をすれば乗ってくるだろうことはレストには分かっていた。
分かっていたから、勝算があったから、そんな提案をしたのだ。
レストは一旦ジムに戻り、シナモンにポケモンを回復させる機械を借りてポケモンの体力を回復させる。シナモンはさっきの怒鳴り声が聞こえていたようで、何事かと尋ねられたが、答えなかった。
そして迎えた、ラルカとのバトル。
「言っとくが、俺はジムバッジを二つ持ってる。こっちに来たばっかでピーピーのお前とは違うぜ」
「そんなのやってみなくちゃ分からないじゃない。私だって何度もバトルは経験してるし、あんたなんかに負けないわよ」
「どうだか。俺の方こそ、お前みてえな馬鹿野郎に負けるつもりはない」
「誰が馬鹿ですって!?」
どんどんヒートアップするラルカに対し、レストは徐々に冷静さを取り戻していた。
長い付き合いだからこそレストは知っている。ラルカは熱くなりやすい。ならば、そこには確実に付け入る隙がある。
「お前、ポケモンは何体持ってる?」
「一体よ。あんたを探す途中で、ポケモンを捕まえてる余裕はなかったから」
ならば一対一のバトルになる。
「さっさと始めるわよ。出て来なさい、ハリマロン!」
ラルカが繰り出したのは、直立したハリネズミのようなポケモンで、頭からは緑色のいがのような棘が飛び出している。
毬栗ポケモン、ハリマロン。
「ハリマロン、草タイプか。だったらこいつだな」
レストはさっき回復したばかりのポケモンを繰り出す。
「出て来い、テールナー!」
レストはテールナーだ。炎タイプなので、草タイプには有利に戦える。
この時点でラルカはレストの策略に嵌っていた。頭に血が上っているラルカは勢いのあまり最初にポケモンを繰り出したが、複数体ポケモンを所持しているレストに対してその行為は愚行だ。一対一のバトルなのだから、最初にポケモンを繰り出した方が不利なのは自明の理である。
(相変わらず単純な奴だ。この勝負、勝ったも同然だな)
無論、タイプ相性だけではバトルは決まらないのだが、レストを探す一心で突っ走っていたラルカと、ジムリーダーたちと戦ってきたレストでは、期間は短いながらも潜った修羅場が違う。
レストはこの時点で既に、自分の勝利を確信していた。
「テールナー、炎の渦!」
先攻を取ったのはテールナーだ。テールナーは尻尾に差していた枝を抜くと、体毛に擦りつけて発火させ、そのまま渦巻く炎を放つ。
「ハリマロン、かわしてっ!」
だが、ハリマロンはその炎をサッと躱し、
「ミサイル針!」
頭部から無数の針をミサイルの如く飛ばす。
「ちっ、テールナー! 炎を戻せ!」
テールナーは枝を引っ張るような動作で、放った炎の渦を引き戻し、それを盾にしてミサイル針を防ぐ。進化して強化されたのは火力だけでなく、このように炎をより自在に操れるようになったのだ。
「ハリマロン、転がる!」
続いてハリマロンは体を丸め、ゴロゴロと地面を転がりテールナーへと突っ込んでくる。
「来るぞ、グロウパンチ!」
テールナーは転がってくるハリマロンに対し、細い腕を突き込んで迎え撃つ。岩技に格闘技のグロウパンチは効果的だが、テールナーの細腕では弾き返すには至らず、互いに後ずさった。
「くぅ、もう一度! 転がる!」
「こっちもグロウパンチだ!」
ハリマロンが再び転がって来るのを、テールナーも先ほどと同じように細腕から繰り出される拳で迎撃する。
たださっきと違ったのは、今度はテールナーの拳がハリマロンを弾き飛ばしたことだ。
「なっ……ハリマロン!」
吹っ飛ばされるハリマロン。しかしダメージは少ない。
「な、なんで、転がるは攻撃するたび威力が上がるのに……!」
「違う、転がるは攻撃を中断されると威力が上がらないんだよ」
でもな、とレストは続け、
「グロウパンチは成長する拳、殴れば筋肉が活性化し、拳が硬くなる。要するに、攻撃するたびに攻撃力が上がっていく技だ」
つまり、ハリマロンはテールナーの攻撃で転がるを中断されたため技の威力は変わらず、テールナーは一撃目のグロウパンチでで攻撃力が上がったため、次の転がるを弾くことができたというわけだ。
「どんどん行くぞ、サイケ光線!」
「っ、かわしてマッドショット!」
テールナーは念力の光線を発射するも、ハリマロンの素早い横跳びで躱されてしまい、カウンターに何発かの泥の塊が投げつけられる。
「炎の渦だ!」
テールナーは向かってくる泥を渦状の炎で防ぎ、そのままハリマロンに攻撃を仕掛けるが、これも躱される。
「くそっ、ちょこまかと動き回りやがる……炎の渦!」
「かわしてミサイル針!」
テールナーは再び炎の渦を放つが、これもハリマロンに躱され、すぐさま引き戻して放たれるミサイル針を防ぐ。
「あの木の枝が厄介ね……だったらハリマロン、蔓の鞭!」
ここでハリマロンは、腕から長い蔓を伸ばす。ぐんぐん伸長していく蔓はテールナーの手元を鋭く狙い、打ち据えた。
「っ!」
効果いまひとつなのでダメージは少ない。しかし今の一撃で、テールナーは武器である木の枝を手放してしまった。
「そこ! ハリマロン、ミサイル針!」
ハリマロンは間髪入れずに大量の針を射出し、雨の如くテールナーに降り注ぎ、
「マッドショット!」
続けて泥を放ち、テールナーを攻撃。効果抜群なので、ダメージはそれなりに大きい。
「くっ、先手を取られたか……」
最初は舐めていたが、思ったよりもラルカは強かった。
しかし、
「だが……この程度、アカシアさんのスピアーや、シナモンさんのユキメノコに比べれば、どうってことねえ」
レストはまだ余裕の笑みを浮かべ、ラルカとハリマロンを見据えていた。
そんなわけでラルカ戦です。ラルカの手持ちはレストとトイロに選ばれなかったハリマロン、相性の悪いテールナーに善戦しています。しかし書いていて思いましたが、なんだかレストの台詞が悪役っぽいというか、負けそうなフラグをビシバシ立ててますね。次回はラルカ戦、決着です。勝負に行方は、次回のお楽しみに。