二次創作小説(紙ほか)
- 4話 出会い・リコリス ( No.11 )
- 日時: 2013/11/30 12:42
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
リョフシティはホーラ地方の中でもそれなりに都会で、人や物の流通もわりと盛んな街だった。大都会というわけでもないのでいまいち特徴をつかみ難いのだが、しかし人通りが多すぎないという点では評価できる。
とりあえずレストは、トレーナー御用達、無料でポケモンの回復などを行ってくれる施設、ポケモンセンターへと向かった。目的は勿論、フォッコを回復させることだ。
ポケモンセンターはポケモンの回復だけでなく、手持ちでは持ちきれないポケモンが転送されるポケモン預かりシステムが搭載されたパソコンが置いてあったり、トレーナー同士の交流の場が設けられていたりと、街によって程度差はあるが、充実した施設だ。
「よっし、フォッコも回復したし。ジム戦に行くか」
フォッコの回復が終わるや否や、レストは一目散にジムを目指す。トイロに追いつくという目標を自分の中で掲げたレストは、速足でジムがあるという街の中心部まで歩いて行く。
ちなみに、レストの手持ちは六体フルにいる。一番の戦力は勿論フォッコだが、この街に来る道中、見つけた野生のポケモンを片っ端から捕まえていったからだ。そのせいでボールはゼロ。後で買い足す必要がある。
「えーっと、ジムはこの先を右に曲がるんだったか……あそこに見える建物か? だったらすぐだな」
一人で呟きながら曲がり角を右折し、ポケモンジムと思われる建物を発見。ポケモンリーグ公認のシンボルが掲げられているので、間違いないだろう。
初めてのジム戦、これがトレーナーとして第一歩を踏み出すことになる。そう思いながら建物に近づいていくレストだが、その途中でジムの前に誰かいるのに気づく。
「? 誰だ、別の挑戦者か……?」
それは小柄な少女だ。明るいピンク色の髪をサイドテールにしており、顔立ちは幼いながらも整っている。赤と黒のチェックのプリーツスカートに白いブラウス、胸元には細い桃色のリボンが結ばれている。顔立ちや髪色のわり服装は大人しいが、全体的に華やかな雰囲気の少女だ。
少女はレストが今まさに背負っているような旅鞄を携えており、ジッとポケモンジムを見上げ、見つめていた。
「トレーナー……みたい、だな」
ジムを見上げたまま微動だにしない少女に近づくレスト。近づいてみると、思いのほか小柄だった。レスト自身そこそこ身長はある方だが、それを差し引いても低い。視線を下げないと姿が確認できないほどだ。
レストが接近しても気づかない様子の少女。なのでレストは声をかけた。
「——なあ、あんたもジムに挑戦するのか?」
「ふぁっ!?」
すると、奇声を上げられた。少女はその時初めてレストの存在に気付いたようで、恐怖と驚愕と焦燥を混じらせながらレストに視線を遣る。
「と、と、トレーナー……? チャレンジャー……?」
「そうだけど、あんたは違うのかよ。ジムに挑戦しに来たんじゃないのか?」
「え? あ、あたしは……」
まだ状況の整理がついていないのか、口ごもる少女。同時に少し表情が暗くなった。
そこで、レストはピンと来る。
「もしかして、ジムで負けた、とか?」
「……へ?」
少女は、今度は呆けた表情を見せる。さっきからコロコロと表情が変わり、なかなかな七面相だった。
「違うのか? そんな沈んだ顔してるから、そうなのかと思ったが……まあ負けてもそんなに気に病むなよ。俺も、一緒に旅に出た知り合いに惨敗したしな」
そう言って笑うレスト。旅に出たばかりの奴が何を語るか、と言いたくなるような発言だったが、それで少女も落ち着いたのか、彼女も笑みを見せた。
「……君は、ジムに挑戦しに来たの?」
「ああ、そうだ。これが初めてのジムだな。どんなジムだったんだ?」
先に戦っているのならジムリーダーがどんなポケモンを使っているのか分かるはず。さり気なく情報を手に入れようとするが、少女はまたしても口ごもる。
「あー、いや、えーっとね、ここのジムは……そう!」
視線をぐるぐるとあちこちに向けた後、少女は声を張り上げるようにして言った。
「実はこのジム、閉まってるみたいなんだ」
「は? はぁ!? 閉まってる!? ジムが?」
「う、うん。ジムリーダー不在で、しばらく開かないみたい」
「マジかよ、幸先悪い……!」
壁に手を突き、ガックリと項垂れるレスト。
「ってことは、あんたもジム戦できなかったわけか。お互い、残念だったな」
「え、う、うん……そだね」
「しっかし、どうすっかな。いきなりジム戦がふいになっちまったし……次の街に行くしかないのか? ここから一番近いジムのある街ってどこだよ……」
弱ったような表情でレストは一人ごちる。その時、少女はパッと顔を上げた。
「! それなら、カンウシティがここから一番近いよ!」
「そこには、ポケモンジムはあるのか?」
「うん。初心者も多く挑戦するジムだから、駆け出しのトレーナーにはぴったりだよ!」
聞くところによると、カンウシティはこの街を出たところにある林道を過ぎればすぐだそうだ。
「そうか……よし、じゃあとりあえずそのカンウシティを目指すか。いろいろとありがとうな。じゃあな」
次の目的地も決まり、レストは少女に背を向け駆け出そうとするが、
「あ、待って!」
少女に呼び止められた。
「あの、さ。せっかくだし、カンウシティまで一緒に行かない? 私もそこに向かう予定だし……どうかな?」
「んー……」
レストはしばし考える。旅というと、完全に一人旅を想像していたが、しかし一人より二人の方がなにかと便利かもしれない。
「まあ、いいか。一緒に行っても構わない」
「本当? ありがとう!」
そんなに嬉しかったのか、少女は屈託のない純粋な笑みを見せる。
「あ、そういえばまだ自己紹介してなかったね。あたしはリコリス、君は?」
「俺はレストだ。こっちの地方に引っ越してきたばっかりだから、まだホーラ地方のことはあんま知らないんだ」
「え……そっか、そうなんだ。てことは、この地方のアイ——芸能人とかも知らないの?」
「なにゆえチョイスが芸能人なんだ……? まあ、知らないな。元々興味ないし」
素っ気ないレストの返答に、リコリスは複雑な表情で、そっかぁ、と呟く。
「ま、いいか。じゃあさ、レスト君はどこの地方から来たの? カントー? ジョウト? それともイッシュ?」
「ん? ああ、俺の出身はな——」
そんな雑談に興じながら、二人は歩を進めていく。
こうしてレストとリコリスは、カンウシティまでの旅路を、ともに行くこととなった。
そういえば、今作では各話のタイトルをつけていないことに気が付きました。まだ四話程度なので、後で編集しておきます。今作はどんな法則で行こうかな……? それはさておき、今回も新キャラ、リコリスの登場です。そして次の街までの間ですが、共に旅をします。白黒の一作目でも、主人公ともう一人が共に旅をする展開でしたが、彼女の存在がアニメ要素を引っ張ってきています。さて、というわけで次回、カンウシティに到着です。まあだからと言って、二人がすぐに別れるわけじゃないですが。ではでは、次回もお楽しみに。