二次創作小説(紙ほか)

29話 バタイジム終戦・敗北 ( No.123 )
日時: 2013/12/21 09:51
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「くそっ、もう残り一体か……頼んだ、テールナー!」
 レストはテールナーを繰り出す。これが最後のポケモンなので、後はない。
「テールナー、ニトロチャージだ!」
「ヒポポタス、穴を掘る!」
 テールナーは炎を纏い、その炎を推進力として特攻。しかしヒポポタスは素早く穴に潜ってしまい、攻撃は当たらない。
 その直後、テールナーの真下の地面が揺れる。
「来るぞテールナー! 下だ! サイケ光線!」
 テールナーは尻尾から木の枝を抜くと、真下に突きつけ、念力の光線を発射。今まさに地面から這い出て来たヒポポタスに直撃する。
「いいぞ、そのままグロウパンチだ!」
 さらに細腕から繰り出される拳でヒポポタスの胴体を殴りつける。比較的防御の高いヒポポタスには、大きなダメージは与えられないが、
「もう一発! グロウパンチ!」
 続けてもう片方の腕からも拳を繰り出し、殴りつけた。今度はヒポポタスの体勢もぐらつき、
「もう一発!」
 三発目が飛ぶ。一撃当てるたびに攻撃力の上がるのがグロウパンチ、その三度目の攻撃の威力は初撃の二倍以上だ。その一撃で、ヒポポタスは横転してしまう。
「ちっ、ヒポポタス、起きやがれ!」
 しかし体重の重く短足なヒポポタスは、四本の足をばたつかせるだけでなかなか起き上がることができない。
「今だ! テールナー、炎の渦!」
 その隙に、テールナーは枝の先端に灯された炎を増幅させ、渦状にして放つ。
「グロウパンチ!」
 炎の渦に閉じ込められたヒポポタスは、ますます身動きが取れない。そんなヒポポタスに、テールナーは四度目の拳を突き出す。
「このまま攻撃力を最大まで上げるぞ! テールナー、連続でグロウパンチ!」
 レストのポケモンは残りテールナー一体。対するネロは、ヒポポタスも合わせて三体いる。
 普通に考えればここから逆転するのは絶望的。だが、ここでテールナーの能力を上げるだけ上げておけば、次のポケモンとのバトルで有利になれる。これはレストが意図したのではなく結果論だが、テールナーを最後に出したためヒポポタスの吠えるにも妨害されない。
 テールナーの成長する拳によるラッシュを喰らい、遂にヒポポタスは吹っ飛ばされた。大量に砂を巻き上げて地面に落下したヒポポタスは完全目を回しており、戦闘不能だ。
「よっしゃ、よくやったぞテールナー!」
 まだ一体しか倒せていないが、テールナーの攻撃力は最大。立ち回りを工夫すれば、相性が悪くとも、残り二体のポケモンとも渡り合えるはずだ。
「……ふん、戻れヒポポタス」
 ネロはヒポポタスをボールに戻す。負けたヒポポタスに怒っているように見えるが、元から目つきが悪いためそう見えるのかもしれない。
「思ったより時間がかかったが、まだ砂嵐は継続中。加えて奴は、攻撃力最大のテールナー一体。あれだけ打ち込まれりゃぁ、今更ちっとばかし攻撃力を下げても無駄か」
 思案するように呟いて、ネロは次のボールを手に取る。
「こいつでてめぇは終わりだ。行って来い、サンドパン!」
 ネロの二番手は、砂色の体、背中には岩のようなごつごつしている棘がびっしりと並んでいる。
 ネズミポケモン、サンドパン。
「サンドパン……こいつも地面タイプだけか。だったら炎は通るな。テールナー、炎の渦!」
 テールナーは枝を振るい、渦状の炎を放つ。ヒポポタスよりも身軽そうなので、動きを止めてから攻撃するつもりだったが、
「サンドパン、穴を掘る!」
 サンドパンは一瞬のうちに地中へと潜ってしまった。
 そして、
「!? テールナー!」
 次の瞬間にはテールナーの背後から飛び出し、鋭い爪の一撃を叩き込む。
「速い……!」
 穴を掘る時間がヒポポタスより短いのは分かる。しかしそれにしたって、地中に潜ってから飛び出すまでの時間が短すぎる。感覚的には、一秒あるかないかというレベルだ。
「休んでる暇はねぇぞ! サンドパン、岩雪崩!」
「っ、くぅ、躱してサイケ光線!」
 サンドパンは虚空から雪崩の如き勢いで次々と岩石を降らせる。テールナーはバックステップで襲い掛かる岩石を躱していき、すべての岩を避けきると、枝をサンドパンへと向ける。
 ただし、サンドパンはテールナーの目と鼻の先にいた。
「辻斬り!」
 直後、テールナーの毛が宙を舞う。サンドパンはテールナーの背後におり、どうやら通り間際に切り裂かれたようだ。
「ぐっ、グロウパンチ!」
「遅ぇっての! 辻斬りだ!」
 テールナーは振り返って拳を振りかざすが、その時には既に、サンドパンの爪がテールナーを切り裂いていた。
「くっそ、何だよ、何なんだよ……いくらなんでも速すぎる……!」
 こちらが攻撃しようとした時には、既に相手の攻撃が終わっている。こちらの攻撃がまるで届かない。
「テールナー、ニトロチャージ!」
「サンドパン、穴を掘る!」
 炎を纏って突っ込むテールナー。しかし一瞬で地中へと逃げたサンドパンは、次の一瞬で地上へと飛び出し、テールナーを切り裂く。
 いくら攻撃力を上げても、当たらなければ意味がない。そしてサンドパンのスピードについて行けないテールナーでは、サンドパンに攻撃を当てることはできない。
「とりあえず動きを止めろ! テールナー、炎の渦!」
「んなもん当たるか! サンドパン、辻斬り!」
 テールナーが木の枝を構えた瞬間、サンドパンの一閃がテールナーを切り裂く。
「いつまでもドンパチやってるつもりはねぇ、このまま決めろ! サンドパン、辻斬り!」
 さらに次の瞬間、方向転換したサンドパンがまたテールナーを切り裂き、そのまた次の瞬間にもテールナーは切り裂かれた。
「っ、これは……!」
 もはやサンドパンの動きを目で追うことすら難しい。サンドパンは超高速でテールナーの周囲を動き回り、通り間際に何度もテールナーを切り裂いている。
 これではテールナーは、攻撃するどころか身動きすらできない。動こうとしても、その瞬間にはサンドパンの一閃が放たれ、その動きを封じられてしまう。
 体感では、かなり長い時間だった。しばらくしてサンドパンの動きが止まる。同時に、テールナーは砂地のフィールドへと倒れ込んだ。
「テールナー……!」
 テールナーはぐったりとしており、誰がどう見ても、戦闘不能だった。
「……ちっ、つまんねぇ。その程度で挑まれるなんざ、俺も随分と舐められたもんだ」
 サンドパンをボールに戻すネロ。それと同時に、砂嵐も吹き止んだ。
「おら、いつまでそこで突っ立てるつもりだ」
「え……?」
「ロクに自分のポケモンの力も引き出せないような雑魚なんざお呼びじゃねぇんだよ。負けんたならとっとと出てけ、三下」
 レストに深々と突き刺さる辛辣な言葉の数々。普段のレストなら反抗したであろうが、目の前で倒れているテールナーを見れば、そんな気も起らない。
 レストは顔を伏せ、テールナーをボールに戻す。
「……ありがとう、ございました」
 そして小さくそう言うと、逃げるようにしてジムから出て行ってしまった。

 この日この時。レスト初めて、本当の敗北というものを知ったのかもしれない。



「……相変わらずきっついなー、ネロさん」
「うるせぇ。つーかてめぇ、いつまでそこにいるつもりだ。さっさと出てけよ、野次馬」
 観客席から降りてきたリコリスに対しても、ネロは厳しい語調で言う。それに少し怯えながらも、リコリスは口を開いた。
「何で、あんなに挑戦者に厳しくするんですか……?」
「あぁ?」
 そんなリコリスに問いに、凄むネロ。しかしリコリスは退かない、真摯な瞳で、ジッとネロを見据えている。
「……その方が、面白ぇだろ」
「面白い?」
 その眼差しを受けてなのか、ネロはゆっくりと語り始めた。
「俺は軟弱な奴が嫌いだ。それは技術の上でも、精神の上でもだ。このジムに挑戦する奴の多くは、俺にビビッてガタガタ震えながら、何度もミスを犯しやがる。そのくせ弱い。んな奴、相手にするだけ無駄だ、引っこんでろ」
 だがな、とネロは続ける。
「そんな奴らでも、またここに戻ってくる根性があるのなら、そしてその上で、俺を上回る力をつけたのなら、その時はそいつの力を認めざるを得ねぇ。なにも時の流れに身を任せるのが成長や進化じゃねぇ。俺が見てぇのは、そういう強さだ」
「…………」
「分かったらてめぇもとっとと行けよ。俺だって暇じゃねぇんだ、まだ整理の終わってねぇ資料もあるしな」
 と言い残すと、ネロはリコリスに背を向けてジムの奥へと行ってしまった。
「……あの人も、あの人なりに考えてるんだ」
 新たな発見をした。リコリスはくすりと笑うと、レストの後を追い、ジムから出て行く。



久更新、そしてバタイジム終結です。レストは敗北、ネロに言うだけ言われてジムから出て行ってしまいます。とはいえ、ネロもネロでいろいろ考えてるんですけどね。どこぞの現代っ子と違って、性格が悪いだけじゃないんですよ。この辺は前々作のザキに通じるところがありますね。では次回、特訓回、かな? まあ似たような感じだと思います。お楽しみに。