二次創作小説(紙ほか)
- 30話 特訓・レストvsリコリス ( No.124 )
- 日時: 2013/12/22 17:49
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
バタイシティは山脈にある街なのだが、その山のほぼすべては岩山だ。
リコリスはごつごつした岩肌が剥き出しになっている山を、ひょこひこと登っていき、崖のようになった頂上へと辿り着く。
そこには、レストがいた。危なっかしく崖の縁に立っている。
「こんなとこにいたんだ。探すの大変だったよ、っていうか危ないよ」
背中を向けているレストに、半ば注意するようなことを言うリコリス。
「……ホーラ地方に来る前」
レストはリコリスの注意を受けず、そのまま語り始めた。
「俺がまだガキの頃だ。その頃は、ラルカとしょっちゅう喧嘩してたんだが、大体ラルカが馬鹿なことしてたから、悪いのはラルカってことになる方が多かった」
レストの語りに、リコリスは黙っていた。
「でも、あいつはそんな物分かりのいい奴じゃないから、そういう時はよく山に登って拗ねてたな」
「……それで?」
「少しだけ、あいつの気持ちが分かった気がする」
そこで初めて、レストはリコリスの方を向いた。その顔は、いつものレストのそれだ。
「……落ち込んでると思ったけど、そうでもないみたいだね。よかった、安心したよ。で、どうする?」
「何がだ?」
「ジム戦だよ。別にホーラ地方には八つしかジムがないわけじゃないし、ネロさんに勝たなくてもジムバッジは揃えられる。だから別のジムを探す方法もあるってことだよ」
要するに、ネロを避けてリーグ制覇を目指すかどうか、ということだ。気遣うようにリコリスは言うが、答えなんて決まっている。
「ありえない。こんなことで尻尾巻いて逃げてたら、誰にも勝てねえよ。それに、あんだけ言われて引き下がれるか。リベンジするに決まってる」
強い語調で、そして確固たる意志を持って、そう返した。
「……だよね。レスト君ならそう言うと思ったよ。じゃあ、早くやろうか」
「は? 何をだよ」
「決まってんじゃん」
何を言ってるの? とでも言いたげに微笑み、リコリスはボールを一つ取り出す。
「特訓だよ。あたしが直々に、レスト君のウィークポイントをチェックしてあげる」
レストはこの山に来る前に、一度ポケモンセンターで回復を済ませていたため、この場でバトルは始まる。
「使用ポケモンは一体。どんなポケモンを出してもいいよ」
言いながらリコリスは、手にしたボールを宙へと放る。
「そんでもって、あたしのポケモンはこの子ね、ププリン!」
リコリスが繰り出すのは、ピンク色をした球状のポケモン、ププリンだ。
「リコリスとバトル、か」
今までレストは、野生のポケモンを含めてリコリスがバトルしているところをほとんど見たことがない。あるにしても、カンウ森林でカオスの下っ端の奇襲を防いだ時くらいだ。
(あいつの実力は未知数。でも、バトルの経験は俺の方が長いはずだし、俺より強いことはない……はずだ。あのププリンとかいうポケモンも、そんなに強そうには見えないしな)
リコリスがレストとほぼ同時期に旅立っているという前提で考えるレストだったが、それでも油断はできないと気を引き締める。
そして、ボールを構えた。
「よし、じゃあ俺はこいつだ。出て来い、ラクライ!」
「あれ? テールナーじゃないの? ネロさんに勝つための特訓なんだから、テールナーの方がよくない?」
「違うな。あのバトル、ラクライを連れてきたのは俺のミスかもしれない。だがそれでも、ラクライにもっと上手い立ち回りをさせてやれば、善戦できたかもしれないんだ。だからこのバトルは、俺自身の腕を磨くためのバトルだ」
真っ直ぐにリコリスを見据えて、レストは強く言い放つ。
「へぇ……」
なんだ、ちゃんと分かってんじゃん。とリコリスは小さく呟いた。
「……ま、いいや。そんじゃー行くよ! ププリン、エコーボイス!」
ププリンは大きく息を吸い込むと、周りの岩肌に反響するような声を発する。
「音の攻撃か、避けづらくて厄介だな……だが、威力は大したことないな」
「どうかな。続けてエコーボイス!」
ププリンは発声を止めず、そのままエコーボイスを放ち続ける。
「躱すのは難しいが、だったら突っ切るまでだ! ラクライ、電光石火!」
ラクライは反響する音波を受けながらも、高速で駆けププリンへと突っ込み、吹っ飛ばす。
「よしっ、続けて噛み——って、あぁ!?」
吹っ飛ばす。その現象は今まで何度も発生しており、レストも幾度となく目撃しているし、受けている。だがしかし、今回怒ったその現象は、今までのそれとはスケールが違った。
ジャンプして避けようとしたのか、しかし避けきれなかったププリンは、空高く吹っ飛んで行ったのだ。
「っておい! 吹っ飛びすぎだろ!」
「しょーがないじゃん、ププリンは軽いんだから。風船ポケモンっていうだけあって、体重は1kgしかないんだよ?」
噛みつくで追撃しようと思っていたレストだが、ラクライとププリンの距離は軽く5mは超える。しかも空中でとなれば、追撃できない。
「さらに、エコーボイス!」
ププリンは空中でエコーボイスを放つ。反響する音波が、ラクライへと襲い掛かる。
「くそっ、さっさと降りて来やがれ!」
「いやだから、体重が軽いからすぐには落ちないんだって」
リコリスの言う通り、ププリンは非常に軽い。そのため、落下速度も普通のポケモンより遅いのだ。
「まだまだ行くよ、エコーボイス!」
何度目となるのか、ププリンは反響する音を発し、ラクライを攻撃。
そしてさっきのププリンではないが、後方へと吹っ飛ばされた。
「っ!? ラクライ!」
そう、吹っ飛ばされたのだ。エコーボイスは威力が低いと思っていたレスト。しかし今のエコーボイスの威力は、ラクライを吹っ飛ばすほどの威力があった。
「エコーボイス!」
「! 来るぞラクライ! 電光石火で突っ切れ!」
やっとラクライの攻撃射程圏内まで落下してきたププリンは、またしてもエコーボイスを発する。対するラクライは、それを突き破ってププリンへと特攻するが、
「っ、ラクライ!」
反響する音波を突っ切ることができず、ラクライは押し返されてしまう。
「やっぱり分かってないんだね。エコーボイスは攻撃を続ける限り、威力が上がっていく技なの。今までほとんど攻撃を中断されなかったから、かなり威力が上がってるはずだよ」
ププリンは今までエコーボイスを四回ほど使用している。そろそろ威力も最大になるはずだ。
「ちっ、だったら無理やりにでもとめてやる! ラクライ、電撃波!」
ラクライは波状の電撃を放つ。決して避けることのできないこの電撃なら、ププリンを止められるはずだが、
「打ち消せば問題ないね! エコーボイス!」
もはやハイパーボイスを超える威力となったエコーボイスが、電撃波を相殺してしまう。必中技の電撃波だが、打ち消されてしまってはどうしようもない。
ププリンはただエコーボイスを連発しているだけ。にもかかわらずかなり追い詰められているレスト。その胸中には、焦燥感が渦巻き始める。
(やばい、早くなんとかしないと……くっ、まさかリコリスがここまで強いとは……!)
完全に予想外だ。レストは、リコリスを甘く見すぎていた。
「ププリン、エコーボイスだよ!」
何度もエコーボイスを放つププリン。反響する音波は多角的にラクライへと襲い掛かるため、避けるのが難しい。
反響によって音波は分散されるが、しかし総合的ダメージは確実に増えているため、威力の上昇に気づくのが遅れたのも、劣勢の原因だろう。
「連続切りなんかと違って、エコーボイスは攻撃が当たらなくても、使っていれば威力は上がる。この子のボイスはこれでマックス、そのラクライで止められるかな? エコーボイス!」
「くそっ、回り込んで電光石火!」
またもエコーボイスを発するププリン。ラクライは大きく迂回してププリンに突っ込むが、音が反響するため躱し切れず、軌道をずらされてしまう。
「まだまだ! エコーボイス!」
「電撃波だ!」
ププリンのエコーボイスとラクライの電撃波がぶつかり合うが、電撃波は消滅し、残る音波がラクライに襲い掛かる。
「これでフィニッシュ! ププリン、エコーボイス!」
最後にププリンは大きく息を吸い込み、一際強いエコーボイスを放つ。
「ラクライ!」
真正面からエコーボイスの直撃を喰らって吹っ飛ばされたラクライは、岩肌に叩きつけられる。
ラクライの目は完全に回っており、戦闘不能となっていた。
予告通りの特訓回です。レスト対リコリス、リコリスのまともなバトルはこれが初めてですね。エコーボイス連発でラクライを圧倒します。というかこのププリン、エコーボイスしか使ってませんね……ゴリ押しもいいところですよ。さて次回ですが、特訓回はまだ続きます。と言っても、次回からはちょっと変化をつけていきますがね。対ネロ対策の秘密兵器、とでも言ったところですか。では、次回もお楽しみに。