二次創作小説(紙ほか)
- 32話 リベンジバトル・バタイジム再戦 ( No.126 )
- 日時: 2013/12/24 00:17
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「……またここに来たってことは、それなりに腕を磨いて来たってことで、いいのか?」
「はい」
レストは、フィールドを挟んだ向かい側にいるネロに向かって、真正面から答える。
ネロに負けてから一週間、リコリスの力も借りて特訓してきた。それでもリコリスは五分五分だと言うが、レストは負ける気が全くなかった。
いや、負ける気がしなかった。
「……まぁ、てめぇがどれほど強くなったのかはすぐに分かることだ。頼むから、俺がブチ切れる程度であってくれるなよ」
「当然です。今回は、秘密兵器も連れて来てますからね」
「秘密兵器だぁ?」
引っかかる言葉を言い放つレスト。訝しげにネロは復唱するが、レストはそれ以上は言わない。
「ふん、まぁいい。その秘密兵器とやらも、期待外れでないことを祈るぜ。ルールは前回と同じ三対三だ、交代はお前のみ可能だ」
とっとと始めっぞ、と言って、ネロは素早くボールを投げる。
「まずはてめぇからだ! ヒポポタス!」
やはりネロの一番手はヒポポタス。特性、砂起こしで天候が砂嵐状態となる。
「やっぱこう来るよなぁ……」
レストに課せられた問題、それは砂嵐によるスリップダメージと、サンドパンの超高速機動をなんとかすることだ。
前者はバトルが長引くほどこちらが不利になり、後者は一気に攻め切られてしまう。しかも砂嵐のダメージを無視して速攻で決めにかかろうとすれば、砂かきで超高速となったサンドパンが襲い掛かり、逆に砂かきを発動させまいと砂嵐が切れるまでバトルを長引かせれば、その頃にはもうこちらのポケモンはボロボロ。
このように、砂嵐とサンドパンはそれぞれの長所を生かし、短所を補う関係となってリンクしている。これは非常に厄介だ。
しかしそれは、砂嵐が発動し続ける前提で成り立つ戦術。つまり、砂嵐の発生を止めることができれば、スリップダメージと砂かき、両方の戦術を一気に突き崩すことができるのだ。
「つーわけで、頼んだ、ハネッコ!」
レストが繰り出すのは、ピンク色の体、頭部に一対のギザギザした葉っぱの生えたポケモンだ。
綿草ポケモン、ハネッコ。
「草と飛行タイプのハネッコ、か。確かに地面タイプには有利だが……」
それだけではないだろうと、ネロは考える。そして実際、その通りだった。
「ハネッコ、日本晴れ!」
ハネッコは眩い光の球を上空へと打ち上げる。球体は砂嵐を押し退け、光を放ち続ける疑似太陽となった。
「天候技か……それで俺の砂嵐戦法を崩そうってわけだな」
「その通りです。俺のポケモンで天候を変えられる技を覚えてたのはこのハネッコだけだったんで、こいつを選出したんですけど、上手くはまりました」
砂嵐さえなくなれば、ネロの力は半減するはず。それだけで勝てる相手とも思っていないが、これだけでも戦いやすさはかなり違ってくるはずだ。
「行くぞハネッコ、タネマシンガン!」
「ヒポポタス、岩石封じ!」
ハネッコは連続で種子を飛ばすが、ヒポポタスは地面を隆起させ、岩石の壁を作り出してその攻撃を防御する。
「妖精の風だ!」
だが、そんな単発の防御ではハネッコの攻撃を防いだとは言えない。ハネッコは妖精の力を込めた風を巻き起こし、ヒポポタスを攻撃。さらに、
「毒の粉!」
その風に、毒素を含む粉末を乗せる。粉末は妖精の風と共にヒポポタスへと降りかかり、ヒポポタスを毒状態にした。
「毒か……」
ヒポポタスは比較的耐久の高いポケモンだ。攻撃を通すのも一苦労するだろうが、このように毒状態にしてしまえばダメージが継続し、蓄積する。耐久力が高くとも、間接的にその耐久を落とすことができる。
「しかも普通に撃たず、妖精の風に乗せて射程範囲を伸ばした……なんだよ、しっかし成長してやがるじゃねぇか」
舌打ちしながらも、どこか嬉しそうなネロの表情。バトルに集中しているレストは気付かなかったが、リコリスはその表情を見逃さない。
(ネロさんが笑ってる……? あの人、あんな顔もできるんだ……)
また新しい発見をし、小さく驚くリコリス。
「ヒポポタス、突進!」
「ハネッコ、タネマシンガン!」
ヒポポタスは全身に力を込めて突進するも、風に乗ってつかみどころなく動くハネッコには当たらず、種子による連続攻撃を喰らってしまう。
「妖精の風だ!」
「岩石封じ!」
続けてハネッコは妖精の風を放つ。ヒポポタスも岩石封じで全身を覆いつくし、襲い掛かる風をシャットアウト。
「……吠えるは、使わないんですね」
「はんっ、たりめーだ。ポケモンを三体に絞るなりなんだり、どうせそっちの対策もしてんだろ。だったらわざわざその対策にはまるのも、披露させるのも癪だ。いちいち言わせんな」
勿論、レストは吠えるの対策もしてきている。しかしネロは吠えるをするつもりはないようだ。
(まあ、ポケモンを絞るっていっても、レスト君はポケモン四体連れて来てるんだよね……)
しかしその四体目は、どうやら出番がなさそうだ。
「んなことはどうでもいい。さっさと続きだ! ヒポポタス、岩石封じ!」
「ハネッコ、躱してタネマシンガン!」
隆起する岩石を躱し、種子による連続攻撃を打ち込むハネッコ。火力の低いハネッコだが、その分毒のダメージでヒポポタスの体力は削れている。
「ちっ、ちょかまと鬱陶しい……葉緑素か」
ネロの言う通り、ハネッコの特性は葉緑素。砂かきの晴天バージョンとでも言うべき特性だ。その効果は、晴天時に素早さが跳ね上がるというもの。
元から身軽なハネッコだが、葉緑素の特性も合わさり、鈍足なヒポポタスでは捉えられない素早さとなっている。
「面倒くせぇ……なら、ヒポポタス、岩石封じ!」
「当たりませんよ! ハネッコ、回避だ!」
ヒポポタスは地面を隆起させるが、ハネッコも上昇してその攻撃を躱す。しかし、ネロの狙いは攻撃を当てることではなかった。
「っ!?」
岩石はその隆起を止めず、どんどん盛り上がっていく。しかも一か所だけでなく、何ヶ所からも隆起するため、ハネッコの逃げ道がどんどん塞がれていく。
「まずい……ハネッコ、早く抜け出せ!」
「させねぇよ」
ハネッコは抜け道を探そうと、一度下降する。だが次の瞬間、ハネッコの真下の地面から、ヒポポタスが飛び出す。
「突進!」
飛び出したヒポポタスの突進を真正面から喰らい、ハネッコは隆起を続ける岩石に激突。これだけでもかなりのダメージだろうが、ヒポポタスの攻撃は止まらない。
「岩石封じだ!」
隆起した岩石に他の岩石を重ね、ハネッコは無数の岩石の下敷きとなってしまった。耐久力が低いハネッコに効果抜群の一撃。もはやハネッコは戦闘不能寸前だろう。
「くっ、まだだ! ハネッコ、妖精の風!」
「んな攻撃が通用すると思ってんなよ! ヒポポタス、突進!」
最後の力を振り絞って、ハネッコは妖精の風を吹き付けるが、火力がなさすぎる。ヒポポタスの突進に軽く突っ切られてしまい、ハネッコはヒポポタスに撥ね飛ばされた。
「ハネッコ!」
思い切り吹っ飛び、ジムの壁に激突したハネッコは完全に目を回しており、戦闘不能だった。
「っ……よくやった。お前の頑張りは無駄にはしねえ」
ハネッコを労いながら、レストはボールに戻す。
実際、ハネッコはかなりの仕事をこなしている。天候を上書きし、その上ヒポポタスを毒状態にしている。ハネッコの攻撃と突進の反動ダメージもあり、ヒポポタスの体力もそう多くないだろう。
レストは次のボールを構える。
「次、行くぞ! 出て来いテールナー!」
レストの二番手はテールナーだ。晴天状態で炎技の威力が上がっているので、通常よりも火力が高くなっている。
「テールナー、ニトロチャージ!」
「当たるかよ! 穴を掘る!」
テールナーが炎を纏って突貫するのを、ヒポポタスは地面に潜って回避。そしてその後、地面からヒポポタスが這い出てくる。
「そのパターンは読めてる! テールナー、躱してグロウパンチ!」
真下の地面が揺れるのを感じ取ったテールナーはすぐさま後退。直後にヒポポタスが地面から飛び出すが、そこにはテールナーはいない。
テールナーはすぐに前進し、細腕を振るってヒポポタスを殴りつける。
「まだまだ! 炎の渦!」
続けて尻尾から木の枝を抜き、発火した先端から炎の渦を放つ。
ハネッコとのバトルでは、飛行タイプゆえに使用しなかったが、ヒポポタスが厄介なのは穴を掘るだ。こちらの攻撃を躱された直後に攻撃を喰らってしまう。
パターンさえ読めてしまえば避けるのは簡単だが、動きを止めるに越したことはない。
「テールナー、ニトロチャージ!」
炎の渦に束縛されたヒポポタスに、テールナーは炎の推進力を得て突撃。ヒポポタスを吹っ飛ばした。
「……ちっ」
舌打ちするネロ。その視線の先には、戦闘不能となったヒポポタスが倒れていた。
というわけで、バタイジム再戦です。日本晴れでネロの砂嵐戦術を潰し、続くテールナーを天候でサポートしつつヒポポタスを下したレストですが、ネロもやられっぱなしではありません。次回、ネロの二番手登場です。お楽しみに。