二次創作小説(紙ほか)
- 35話 リベンジ2・レストvsトイロ ( No.129 )
- 日時: 2013/12/26 18:27
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
バタイジムでの再戦も終わり、レストとリコリスはジムから出る。
そこでレストは、懐かしい顔を見た。
「っ」
「あ……」
ちょうどジムを出たところにいたのは、一人の少女。
「トイロ……!」
「レスト君。ひさし、ぶり?」
相変わらずの疑問形で小首を傾げるのは、リョフシティ直前で別れたトイロだった。
「お前も、ジム戦か?」
「うん、そう、かな?」
「バッジは?」
「二つだよ」
胸中でガッツポーズを取るレスト。まだ一つの差だが、バッジの数ではあのトイロを追い越していたようだ。
「ねえレスト君、この子は?」
レストの服の裾を引っ張りるリコリス。そう言えば、リコリスはトイロとは初対面だった。
「こいつはトイロ、俺と同じ日にポケモン貰って、旅に出た奴なんだ」
「へぇー、そうなんだ。あたしはリコリス、よろしくねトイロちゃん」
「うん、よろしく」
テンション高めなリコリスと、淡々としているトイロ。そういう点では対照的な二人だ。
「……そうだ。トイロ、ジム戦前にいいか?」
「?」
レストはこの機会に、あることを申し出る。いや、申し込むと言うべきか。
それは、
「俺とバトルしてくれ」
以前、レストはトイロに負けている。それはトイロが強かったというのもあるが、それ以上に自分が未熟すぎた。レストは、自分が今バッジを三つも持っているのは、その時の悔しさが糧となっていると思っている。
(あの時は負けたが、俺だって強くなってるはず。ネロさんへのリベンジの後だ、トイロにもリベンジを果たしてやる)
そんな思いを胸に、レストはトイロに勝負を挑む。
ジム戦の直前にこの申し出、普通の神経を持ったトレーナーなら断るところだろうが、トイロは二つ返事で承諾した。
「お前、今ポケモン何体持ってるんだ?」
「三体、だよ」
「そうか。じゃあ、三対三のバトルだ。リコリス、審判頼む」
「あ、うん。分かったよ」
人が少ない適当な広い場所を見つけ、レストとトイロは距離を取って向かい合う。
(トイロはケロマツがエースだろうな。ラクライとチュリネなら弱点を突けるから、初っ端からテールナーを出してもいいが……とりあえず、こっちもエースは温存しておくか)
しばらく思案し、レストはボールを取り出す。
意気込むレストと、ぼんやり虚空を見つめるトイロ。こちらもこちらで対照的な二人は、共にボールを構えた。
「行くぞ! 出て来い、チュリネ!」
「でてきて、ポリゴン」
レストの先発はチュリネ。対するトイロのポケモンは、薄い赤と青の体色、角ばった積み木を組み合わせたような姿をしている。
バーチャルポケモン、ポリゴン。
「へぇ、ポリゴンかぁ……珍しいポケモン持ってるね」
審判役のリコリスが呟く。審判と言っても公式戦ではなく、不正をするような二人ではないので、ほとんど突っ立っているだけだ。
「先攻は貰うぜ。チュリネ、マジカルリーフ!」
チュリネは先手を取って念力を帯びた葉っぱを撃ち出す。葉っぱは一直線にポリゴンへと向かっていくが、
「ポリゴン、電撃波」
ポリゴンも波状の電撃を放ち、相殺を試みる。
しかしタイプ一致のマジカルリーフの方が強かったようで、ポリゴンは電撃を突き破られて切り刻まれる。
「サイケ光線」
とは言え威力は減衰されたので、ポリゴンはのけ反らずにそのまま念力の光線を発射して反撃に出る。
「躱して成長だ!」
ただ、一直線の単調な攻撃は、ネロのサンドパンとやりあったチュリネには当たらない。サッと横に逸れると、体を成長させ、決定力を高める。
「マジカルリーフ!」
「電撃波」
再びチュリネの葉っぱとポリゴンの電撃がぶつかり合うが、成長で威力の高まったマジカルリーフだ、容易く電撃を突破し、ポリゴンを攻撃。しかも今度はすぐに反撃できない。
「自然の力!」
続けてチュリネは自然の力を借りて攻撃を仕掛ける。ここは岩場、チュリネの周囲に地中から飛び出した煌めく宝石が浮かび上がり、ポリゴンへと飛ばされる。
「パワージェム……ポリゴン、電撃波」
岩場で使用する自然の力は、岩技のパワージェムとなる。襲い掛かる宝石に、ポリゴンは波状の電撃をぶつけるが、これも相殺しきれずに攻撃を喰らってしまう。
「チュリネ、もう一度自然の力!」
再び自然の力を借り、パワージェムを放つチュリネ。しかし、いつまでも攻撃を喰らい続けるトイロではなかった。
「ポリゴン、高速移動」
刹那、ポリゴンは目で追うことが難しくなるほどのスピードで動き回り、次々と宝石の乱打を回避していく。
「躱された……!」
しかもただ躱されたのではなく、素早さまで上げられてしまった。
「だが、いくら素早くてもチュリネなら問題ない。マジカルリーフ!」
そうだ、いくらトイロのポケモンが速くとも、必中技の前には無意味。
と、思われたが、
「高速移動」
ポリゴンは再び超高速で動き回り、大きく迂回するようにマジカルリーフを躱す。背後からはそのマジカルリーフが追ってくるが、
「ポリゴン、サイケ光線」
チュリネに接近していたポリゴンは、念力の光線を発射する。
「っ! 躱せ!」
咄嗟にバックステップで後ろへと逃げ、なんとか光線を躱すチュリネ。
「電撃波」
しかしそこに、二撃目が放たれる。波状の電撃がチュリネを襲ったのだ。
とは言え、直後にはポリゴンも追いついてきたマジカルリーフに切り裂かれた。しかも電気技はチュリネには効果いまひとつ。ダメージではまだまだチュリネが圧倒的に有利だ。
「じゃあ、これかな? ポリゴン、テクスチャー」
そんなトイロは、手を打ってくる。
トイロの指示を受け、ポリゴンはその体色をピコピコと目まぐるしく変えていく。最後に黄色に染まった、かと思いきや、またすぐに同じ色に戻ってしまった。
「何だ、あの技……? まあいいか。チュリネ、自然の力!」
「ポリゴン、電撃波」
自然の力でパワージェムを放つチュリネ。ポリゴンは波状の電撃を放って対抗する。
対抗する、と言っても、ポリゴンの火力ではタイプ不一致のパワージェムですら相殺しきれない。と、思われたが、
ポリゴンの電撃は、パワージェムをすべて撃ち落とした。
「!?」
その光景に驚きを隠せないレスト。加減したつもりはない、いつも通りの威力が出ていたはずだ。だが、完全に相殺されてしまっていた。
「もう一度、電撃波」
驚愕するレストをよそに、ポリゴンは連続で電撃波を放つ。必中技ゆえにチュリネはこの攻撃を避けられず、直撃を喰らってしまう。効果いまひとつなのは変わらないが、ダメージ量が最初より多くなっているように感じられた。
「な、なんだ……ポリゴンの火力が上がっている? さっきの技は、火力を上げる技なのか?」
「違うよ?」
見たことのない技を考察するレスト。そんなレストの考えを、トイロは否定する。
「テクスチャーはね、自分のポケモンのタイプを、そのポケモンが覚えている技のタイプにランダムで変更する技、なの。だからポリゴンの、今のタイプは電気タイプ。電気技が、タイプ一致で撃てるよ」
トイロにしては長く饒舌に語ったが、それよりもレストは、トイロのテクスチャーの使い方に感心していた。
テクスチャー、変わった効果の技だが、その使い方は、基本的には相手の攻撃を半減するためだろう。ノーマルタイプは攻撃を受ける時、半減するタイプがないのが欠点だが、テクスチャーはそれを補える。様々なタイプの技を覚えられるポリゴンなら、その機会も多いだろう。
しかしトイロのポリゴンでは、覚えている技からチュリネの技を半減することはできない。
そこでトイロが取ったのが、防御ではなく攻撃に転用したテクスチャーだ。自分の覚えている技のタイプに変わるということは、攻撃技のタイプに変われば、その技をタイプ一致で撃てるということになる。ポケモンは、自分のタイプと同じタイプの技を繰り出せば威力が上がる。つまりトイロは、ポリゴンの火力を上げるためにテクスチャーを使った。
「流石だな、俺にはその発想はなかった……」
トイロらしい、柔軟な発想だ。バッジの数こそレストの方が上だが、恐らく知識の経験も、トイロが上回っている。
しかし、
「……つっても、それだけだろ」
「?」
レストは気付いていた。トイロの発想力は確かに評価できるが、それでも自分の活路が消えていないことに。
「そんなんじゃ、俺のチュリネは倒せない。見てろよトイロ、今度は俺が、きっちり勝ってやる!」
雪辱を誓ったあの日のことを思い返しながらレストは、声高にそう、宣言するのだった。
ジム戦が終わり、また再戦です。今度の相手はトイロ、最後に登場したのはリョフシティ直前ですね。そう考えると、凄く久しぶりな気がします。バトルについてですが……最近、少しスランプ気味というか、自分の満足できる文章が書けないんですよね。どうも長いだけで盛り上がりに欠ける文章になっているような……白黒は作品を書くごとに定期的にスランプに陥りますが、今作でもなりましたね、やっぱり。まあスランプは自力でなんとかするので、お気になさらず。それより次回ですが、言うまでもないです。トイロ戦その二です。お楽しみに。